【記事無料公開】セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」(1)

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 10月31日、若手行員による顧客情報漏洩の事実を発表した香川のトップバンク、百十四銀行。この"事件"を詳報した小誌「ZAITEN」2019年12月号の発売(11月1日)を次の日に控えた突然の"自白"劇だった。

 行員による情報漏洩は法人3件、個人14件の合計17件に及んだ上、そのうちの1件では、すでにカネを騙し取られる被害が発生していたという驚くべき内容。しかし、やはりというべきか、記者会見は百十四銀の企業体質を反映したものだった。

 これほどの不祥事案にもかかわらず、会見に臨んだのは、代表取締役たる綾田裕次郎頭取ではなく、香川亮平専務執行役員。しかも、情報漏洩による被害が発生していたのは今年7月で、百十四銀側がどの時点で漏洩と被害発生を確認したかは不明ながら、発表までに3カ月以上を要しているのだ。また、情報を漏洩した行員については10月28日に「懲戒解雇」で処分したとしているが、香川県警の事情聴取を受けたのは9月中旬。処分まで1カ月以上が経過しており、迅速な対応からは程遠い。

 そもそも小誌12月号の記事が出ていなかったら、時期も含めて、どのような形での発表になったの、大いに疑問である。そればかりではない。会見で最も問題なのは、この期に及んでも、百十四銀側が"隠蔽"ともいうべき、問題の矮小化を図ろうとしている点だ。

 百十四銀の10月31日会見では、若手行員が情報を漏洩していた先は「友人で、頻繁に食事する仲だった」との発表だったというが、小誌はもちろん、その後の各種報道でも明らかな通り、友人とは同期入行の元同僚、すなわち百十四銀の元行員だったのである。百十四銀は刑事告訴を検討しているとしているものの、果たして、一不良行員の個人的な"事件"だったのか――。

 そんな疑念を掻き立てる理由は、昨年11月1日に小誌18年12月号が報じた渡辺智樹会長(当時)の"セクハラ事件"に見られたような、百十四銀の度し難い隠蔽体質に他ならない。セクハラ当事者の渡辺氏は紆余曲折の末に百十四銀を追われたが、その結果、行内では「オーナー家」を僭称する似非創業家の綾田三代目の裕次郎頭取の専制支配が現出。ガバナンスは正常化するどころか、綾田家および裕次郎頭取との距離感で人事などが決まる一方、ハラスメント事案がいまなお相次いでいるという。

 そんな中、百十四銀は明日11月11日月曜日に情報漏洩事件発覚後初の頭取による決算発表会見を控えている。地元記者の追及がどこまで伸びるか、予断を許さないが、その一助となることを期して、昨年12月1日発売の19年1月号に掲載した特集記事《セクハラ百十四銀行「色情と暗黒の10年」》を以下に無料公開する。

114_ayata_cut.jpg"似非創業家"三代目の頭取、綾田裕次郎




 小誌先月号(2018年12月号)の「今すぐ出処進退について重大な決断をすべきだ」との指摘通り、香川の地方銀行、百十四銀行は10月29日、会長の渡辺智樹の辞任を発表した(会長辞任は31日付)。奇しくもこの日は、渡辺が絡んだセクハラ事件を報じた12月号が刷り上がった当日だった。

 それから1カ月。セクハラ会長が去った百十四は、再生を誓っているかと思いきや、高松の本店は再び弛緩した空気に覆われているという。それもそのはず。セクハラの汚辱に塗れた渡辺は相談役として残留。11月9日に開かれた綾田裕次郎による頭取記者会見も、地元記者の然したる追及を受けることなく遣り過ごせたのだから、渡辺とともに事件の隠蔽を図った百十四の現経営陣が安堵するのも無理からぬことと言える。

 しかし、その一方で、小誌編集部には、そんな百十四の前途を危ぶむ関係者からの情報提供が数多く寄せられている。加えて香川の取引先や預金者からは、同行の地元での傍若無人ぶりを糾弾する声が、これまた数多く届けられた。

 金融担当相を兼ねる財務相の麻生太郎にまで質問が及んだ、前代未聞の百十四銀行セクハラ事件。まずは、11月9日の会見で明らかにされた内容を基に、その概要を振り返ってみたい。

会長セクハラ事件の"真相"


 問題の会合があったのは、18年2月。出席者は、百十四側は会長の渡辺と執行役員、そして女性行員。女性行員の人数は明らかにしていない。また、行為に及んだ取引先の企業名や出席者の氏名などの一切も公表していない。ただ、女性行員は最初から参加していたものの、取引先とは無関係だった。なお、場所は百十四側が用意。当初は百十四側が費用を負担するつもりだったが、取引先が先に会計を済ませていた。

 5月の法令順守の行内アンケートで問題が発覚。6月の処分は、頭取の綾田を含めて7人の取締役の合議で、内容は渡辺と執行役員に対して報酬と賞与の減額処分。しかし、その後、問題を指摘する「投書等」があり、百十四側が社外取締役に連絡したのが10月19日。そこから1週間余りで会長辞任という結論が出たことになる。綾田を含む取締役7人は10月28日付で報酬を減額処分とした――以上が百十四側の公式発表だ。

 ちなみに、小誌が百十四に質問状を送ったのは10月4日。いずれにせよ、2月の会合から8カ月、6月の行内処分から4カ月の間、女性行員の人権に関わる重大な事案は放置されたままだった。

 一方、会見で百十四は「取引に関わる」「個人の特定に繋がる」などとして、最後まで情報開示を拒み続けた。弁護士が再調査するまでの経緯、そもそも女性行員を会合に呼んだのは取引先の要望なのか、渡辺の意向なのか。事件の核心は何も説明されていない。

 また、驚くべきことに、百十四はこの期に及んでも、セクハラ行為があったこと自体を認めず、あくまでも「不適切行為」で、渡辺は口頭で取引先を制止したと言い張っている。さらに、担当者でもない女性行員を会合に出席させた理由について、「場を和ませるため」と説明。女性行員をコンパニオンのようにしか見ていない極めて異常な行内風土が明らかになった。調査に当たった弁護士からも「現代社会で許されない行為」との厳しい批判が出たという。

 しかし、渡辺辞任後も取材を続けた小誌は新事実を含め、セクハラ事件の詳細を改めて把握した。今度は小誌取材で得られた事実を基に事件を見てみることにする。

 件の会合があったのは18年2月15日。場所は高松市内でも有名な高級日本料理店。出席者は、百十四側が渡辺と執行役員で本店営業部長の石川徳尚、20代の女子行員2人。取引先は合田工務店社長の森田紘一と、その甥っ子で同社課長の合計6人。

 百十四をメインバンクにする合田工務店は、高松に本社を置く未上場の地場ゼネコンで、売上規模は同業で四国最大手。東京周辺でもマンションの施工を手掛け、近年は好決算が続く。そして、セクハラ当事者の森田は1944年生まれ。慶応大商学部卒業後、岩谷産業を経て72年入社。86年、社長に就任。高松商工会議所副会頭や香川県建設業協会会長なども務め、14年には旭日中綬章を受章している地元の名士である。

 会食は百十四側が主催。会合の直接的な性格は、森田が同行の金融商品を購入したことに対する謝意の場だった。ただ、森田とともに課長が出席した理由は、独身である甥っ子の「婚活」の意味合いもあったという。つまり、複数の女性行員を呼ぶことは、初めから既定路線だったのだ。

 会食があった当日に「セクハラの範疇を超えた行為」があったのは、小誌前号で報じた通り。ここでも詳細は伏せるが、渡辺らもセクハラ行為に及んでいたのかという事実確認に対し、百十四は「回答を差し控える」として否定しなかったことだけは明記しておく。

 その後、5月に行内でセクハラ事件が判明、株主総会を控えた6月に事態は一気に動き出す。

 6月中旬、渡辺と石川が女子行員2人に対し直接謝罪するとともに、頭取の綾田に始末書を提出。そして、夏季賞与の減額処分で幕引きが図られた。ただ、この時点で執行役員の石川には賞与が支払われていたため、冬季賞与で減額が実施されることになった。

 これらの処分は頭取の綾田に一任されたが、その時、捻り出されたのが、「取引先による不適切行為を止められなかった」という屁理屈に他ならない。というのも、セクハラ行為自体の懲戒は内規にあるものの、第三者の行為を止めなかったことについては「記載がない」からだ。結果、綾田が決裁することになったという。

 詭弁以外の何物でもないが、百十四側の釈明はこのシナリオに依拠しているというわけだ。敢えて下品な表現をすれば、「一線は越えていない」――。事ここに及んでも、渡辺の抵抗はかくも凄まじいものだったと言える。

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渡辺の"美女軍団"支配


 さらに小誌が取材を進めると、百十四の異様な病巣がわかってきた。その異形を体現する人物こそ渡辺智樹、その人に他ならない。

 きっかけは09年、渡辺の頭取就任だった。前号でも少し触れたが、当時、百十四は大阪・九条支店を巡る不正融資事件で金融庁から業務改善命令を受け、体制の抜本的な立て直しを迫られていた。その不祥事を契機に表舞台に登場してきたのが、渡辺だった。

「決定的に行内の雰囲気が悪くなったのが、渡辺時代。渡辺頭取の下で極端にモラルハザードが進行した。それまでは"創業家"の綾田家が力を持っていると言われながらも、役員登用の基準は適正なもので、最終的に誰もが納得できるように人事は行われていた。しかし渡辺が頭取に就任すると、あっという間に自分のお気に入りばかりを取り巻きにした」

 百十四関係者はこう説明する。「創業家・綾田家」については後述するが、通常なら、組織を揺るがす不祥事が起きた直後にトップに就任した人物であれば、正常化に尽力するもの。ところが、渡辺にはそうした社会一般の常識はまったく通用しなかったらしい。

 事実、渡辺は頭取に就任すると人事を壟断。複数の関係者によれば、これまでの人事慣行を根本から破壊し、各部門の幹部級は自分の息のかかった人物に替えてしまった。当初は問題視する役員もいたものの、渡辺によって多くが粛清された。他方、一般行員は何が起きたのか呑み込めず、ただ呆気にとられるだけだったという。

 "悪行"はエスカレートする。その極め付きが、肝煎りセクション「金融業務部」(現在廃止)だ。

「支店長時代も含めて、自分好みの女性行員を手元に異動させていた渡辺は、頭取になると、役員室の近くに自分の"喜び組"みたいな女子行員だけの部署を作った。20代後半から30代前半くらいが中心で、特別に親密な既婚の行員を管理職に据える始末。彼女たちと一緒に昼食をとったり、夜も意見交換と称して懇親会を開いたりしていた」(前出関係者)

 これだけでも驚きだが、問題は金融業務部の"裏業務"にある。同部は表向き、金融商品などの販売業務を促進、各支店の営業担当者を指導・訓練するという名目で設置された特別部署。女性活躍推進などと持て囃されたようだが、実態は頭取直轄の組織で、その役割は支店長クラスの人事評価を渡辺に上げることだったという。

「同部の女子行員たちが教育担当の名目で各支店を巡回するが、実は、スパイみたいなことをさせていた。お気に入りの若い女子行員が支店長クラスを陰で評価して直接、渡辺に報告を上げる。食事会は、その情報を得る目的も兼ねていた。結果、女子行員が気に入らない支店長は即異動。人事部案を渡辺がことごとくひっくり返したこともあった」(別の関係者)

 渡辺直属の"くノ一軍団"というわけだが、金融業務部の女性行員が間諜であることは当時、行内では周知の事実だった。現場の支店長たちは、同部の女性行員が来ることに戦々恐々だったという。

「創業家2代目」の人事構想


 ところで、渡辺が頭取に就任する前の百十四はどうだったのか。渡辺の前任は40年生まれの竹崎克彦。竹崎は04年6月に頭取に就任し、09年6月に渡辺に頭取職を引き継いだ。3期5年目での途中交代だった。当時の事情について別の百十四関係者はこう語る。

「竹崎さんは頭取就任5年目で九条の事件が起き、実質、引責辞任した。事件がなければ、まだ頭取を続投したはず。竹崎さんは修作さんの愛弟子で、後継指名した時は、最低でも6~8年は頭取を務めてくれという思いがあった」

「修作さん」とは、現頭取の裕次郎の実父で第12代頭取(95~04年)、綾田修作のこと。百十四は、裕次郎の祖父に当たる第8代頭取(52~ 75年)の整治から、綾田一族3代が頭取を務める世襲銀行だ。整治は戦後復興期を担った「中興の祖」で、52年の頭取就任時は46歳と全国の銀行頭取の中で最年少だった。03年に98歳で死去するまで相談役を務めている。

 前出の関係者によれば、修作は公言こそしなかったものの、慶大卒業後の82年に入行していた次男の裕次郎を頭取にしたいという強い思いがあった。ところが、竹崎が頭取を辞めざるを得なくなった時、59年生まれの裕次郎が後を襲うにはまだ若過ぎた。修作は以前から、3代目に権力を移譲するまでは竹崎に可能な限り頭取職を続けてもらい、それでも時間が必要なら裕次郎の一歩手前で、52年生まれで京都大卒エリートの渡辺が中継ぎをすることも良しとする構想を描いていたという。いずれにせよ、不祥事を受けた渡辺の登板は"番狂わせ"だった。

「修作さんは凡庸だが、人柄は良く、悪く言う人を見たことがない。特に問題がなければ下から上がってきた人事案をそのまま承認するという感じ。逆に、最高裁判所長官を務めた博允氏を弟に持つ竹崎さんは厳格ながらも、経営は公正を旨としていた。九条支店の事件では相当ショックを受けたようだが、歴代頭取の中でも立派な人だったと思う」(百十四OB)

 要するに、百十四が築き上げてきた行風は渡辺の頭取就任を境に暗転していったと言える。そのキャラクターは、裕次郎に頭取職を譲る17年4月にも発揮された。百十四ではそれまで、頭取交代時には新頭取と専務2人が代表権を継ぐのが慣例で、会長は代表権を返上するものとされてきた。しかし渡辺は代表権に固執、今回の会長辞任でようやく返上した格好だ。

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眼前でセクハラを受ける女性部下を守れなかったと主張した元会長、渡辺智樹
(左から2人目、2016年11月)


渡辺「相談役」残留の深層

 セクハラ事件で会長を辞任した一方、臆面もなく相談役に就任した渡辺。ただ、相談役の居座りを巡っては、関係者の間で諸説あるようだ。まずは財界活動説。しかし、渡辺は11月16日付で高松商工会議所の会頭を辞任、四国電力の社外取締役も辞任するなど、対外活動を事実上放棄。そもそも、セクハラ事件に塗れた人物に顕職が担えるはずもない。

 一方、頭取の裕次郎の経験不足という行内事情を説く関係者も少なくない。今回、裕次郎は渡辺から顔に泥を塗られた格好。にもかかわらず、その対応は渡辺に同情的ですらある。それ故、綾田家3代目の未熟ぶりに理由を求めるわけだが、これにも無理がある。当の渡辺の経営能力が高いかと言えば、決してそうではないからだ。

 なるほど、渡辺が頭取に就任した09年からの業績推移を見ると、売上高に当たる経常収益は800億円前後、純利益は100億円前後でほぼ安定。むしろ、頭取後期は前期に比べて数字も良い。

「それは、現場の営業店の実働部隊の頑張り以外の何物でもない。渡辺時代、役員室は何をするにしても他行の物真似ばかり。修作・竹崎時代に築かれた堅実経営の遺産で渡辺は食い繋いだだけ」(前出の百十四銀関係者)

 事実、11月9日の会見で発表された百十四の18年9月中間決算は、売上高が前年同期比3・2%減、中間純利益も19・5%減と4年ぶりの減収減益。一方、第二地銀の香川銀行は増収増益と、明暗がはっきり分かれている。

 それでは、渡辺が相談役に居座る真の理由は何か――。そこにも百十四の宿痾が浮かび上がる。

 まずは同行の引退した元最高幹部に対する特別な処遇慣例だ。百十四の現役幹部はこう明かす。

「100%出資の関連会社に名前だけの役員として入れて、その会社から4年程度は退職金とは別に給料を出してきた。当然、対外的にも公表されない。しかし銀行本体で無役だと、いくら関連会社でも処遇できない。だから、渡辺も相談役に残留させたのだろう」

 なお、百十四は渡辺に退職金が出たかどうかさえ、「個人情報」を理由に明らかにしていない。

 加えて、渡辺と綾田が特別な関係にあることも今回の処遇に繋がっている。というのも学生時代、渡辺は裕次郎の家庭教師を務めていたといい、頭取職の禅譲の際も渡辺に退任を促す修作が、その譲歩条件として「代表権を会長の渡辺にくれてやった」(別の百十四関係者)との指摘もある。

 さらに奇怪なのが、セクハラ事件の一方の当事者である合田工務店社長の森田との関係だ。慶応で同窓の森田と裕次郎は"昵懇の間柄"。「取引先が不適切行為に及んだ」との筋書きを呑んでくれるよう森田に懇請したというが、百十四はこの件も否定していない。

 渡辺、裕次郎ともに同じ穴の狢というわけだが、渡辺が蔓延させた行内風土も同時に禅譲されたようだ。渡辺時代の恐怖政治で、行員の間には上を忖度する気風が広がり、人事も役員室との距離で決まることが常態化したという。

 百十四では最近、次のような不祥事案もあったという。行内で複数の支店長による経費の私的流用行為が発覚したというのだが、さらに驚くのが経営陣の対応だ。

 ある支店長は役員の覚えが目出度かったことから、「未遂」として処理された上、さらに現在は昇進ともとれる人事で処遇されているという。他方、役員の人脈に乏しかった別の支店長にはいまだ処分が出ず、雪隠詰めの状況。それどころか、横領事件に発展しかねないこれらの問題を内部通報した行員はその後、左遷人事の憂き目に遭ったという。これは裕次郎の頭取就任以降の出来事である。

 その結果、毎月、相当数の若手行員が百十四を去っているのだ。しかも、彼ら元行員たちは転職面接の席上、「加重なノルマを負わされ、止まれず高齢者に騙すような形で投資信託を購入させたが、良心に耐えきれずに辞めた」と異口同音に悔やんでいるという。

強行された「ゴルフコンペ」


 それでは、セクハラ事件の当事者たちはどうなったのか――。

 まずは合田工務店の森田。11月9日の百十四会見に先立つ小誌取材に対し、同社担当者は「当社とは関係がない」の一点張りだったが、同月15日に森田が副会頭を務める高松商工会議所に改めて事実確認を行った途端、翌16日に副会頭を辞任してしまった。

 一方、百十四の執行役員本店営業部長として会合に出席していた石川は6月の処分後、重要店舗の今治支店長に栄転。事件発覚後は解任されたものの、「綾田家と因縁が深く、特別な社員しか配置されない」(関係者)関連会社、四国興業に転籍した。「支店長時代には焦げ付き融資を実行したり、パワハラで何人もの部下を潰したりした問題人物」(別の関係者)ともっぱらだが、セクハラ事件後の厚遇にはやはり疑問が残る。

 他方、今回の自身への処分を減俸30%2カ月で済ませた頭取の裕次郎は11月3日、満濃ヒルズカントリークラブで創業140年記念のゴルフコンペを主宰。騒動の最中に自粛すべきとの進言もあったらしいが、強行した。また、本店行員たちも11月中下旬の段階で、高松の繁華街において堂々と「百十四飲み会」を催しているというから度し難い。ただ、渡辺の次のようなエピソードを知れば、そんな腐敗ぶりも頷ける。

「頭取時代、決算前の行員が連日深夜まで仕事を続けている最中、繁華街をホステス風の女性たちを引き連れて闊歩しているのが何度も見られている。取引先からは『あの頭取で大丈夫か』と心配されたほど」(別の関係者)――色情に狂ったエピソードには事欠かない渡辺だが、会長辞任後の今も百十四本店の周辺を徘徊する姿が、関係者らに目撃されている。

 一方、被害者の女子行員らは、事情を感じ取った周囲からの好奇の視線に晒されているともいう。

 そんな中にあって、小誌にはこんな悲痛な声が寄せられている。

「今回が百十四正常化の最後の機会です。御誌にもう一度、弊行の実態を追及していただきたい」

 百十四経営陣はこうした行員の声を「中傷」と捉えているようだが、行内からはもはや、一向に動こうとしない金融庁などの監督当局に寄せる期待も萎み果ててしまったとの嘆きが聞こえてくる。

 ところで地元関係者によると、19年に米寿を迎える修作は今も壮健で、毎日のように高松の街を散歩しているという。こうした行員の悲痛な声は綾田家2代目の耳に届いているのだろうか。(敬称略、肩書等は掲載当時のまま)

 本記事から1年――。今年3月、百十四銀は相談役制度を廃止した。セクハラの汚辱に塗れた渡辺氏はもちろん、10年に大阪・九条支店で発生した反社会的勢力への不正融資事件で頭取退任に追い込まれた竹崎克彦元会長も相談役を退任。渡辺氏は最後まで子会社などでの処遇を求める往生際の悪さを見せたというが、結局は"無役"で放逐される形となった。

 ただ、竹崎氏にせよ、渡辺氏にせよ、百十四銀においては「雇われマダム」に過ぎないのだ。というのも、前述の通り、現頭取出身の綾田家が"似非創業家"として君臨しているからに他ならない。裕次郎頭取、あるいは綾田家に近い者は出世が約束され、ハラスメントはじめ、問題行為に及んでも不問に付される "お友だち政権"の様相を呈しているという。しかも、有力OBたちのほとんどは綾田家恩顧で、今回は渡辺セクハラ事件の時以上に鳴りを潜めているといい、OBを含めた行内にはもはや自浄作用が求められない状況なのだとか......。

 監督当局をはじめとする"外圧"しか百十四銀を変える契機はないのかもしれない。いずれにせよ、明日11月11日月曜日、頭取会見が試金石となるはずだ。

【ZAITEN公式サイト】
http://www.zaiten.co.jp/
【ZAITEN代表電話】
03-3294-5651

百十四銀行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで募集しております。なお、情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼くださいませ。

【情報提供フォーム】
http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php
【情報提供アドレス】
indictment@zaiten.co.jp


小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

・18年10月31日公開
【ZAITEN12月号】百十四銀行・渡辺会長「セクハラ辞任」について
・18年11月16日公開
百十四銀行「セクハラ事件」の見解および続報について
・19年10月31日公開
百十四銀行「情報漏洩で行員が警察に事情聴取」会見の姑息

テレビ朝日「やらせ会見」と「報ステ"セクハラCP"処分」経営責任の平仄

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 この放送局のコンプライアンス意識はどうなっているのか。

 10月16日、突如、夕方の報道番組「スーパーJチャンネル」(SJ)で仕込み、有り体に言えば"やらせ"演出があったことを白状したテレビ朝日。自ら会見を開いたことで、これまで再三再四メディアで叩かれてきた、その不祥事体質と隠蔽癖への反省からとも思われたが、然に非ず。情報提供者からテレ朝に課された"デッドライン"に慄いた末の公表という、何とも後ろ向きの判断だった。

 とはいえ、SJでのやらせ問題では、曲がりなりにも、早河洋会長以下の処分が決定された。そこで翻って思い起こされるのが、8月末に発覚した看板報道番組「報道ステーション」チーフプロデューサー(CP)による番組スタッフを襲った鬼畜の如き"セクハラ事件"。しかし、この事件では当事者のCP以外には処分が下されておらず、経営幹部の責任は依然果たされていない。こうした処分の軽重にも、テレ朝局内の倒錯した力学が反映されていると言える。

 そこで小誌「ZAITEN」では急遽、同問題についてのウェブ限定記事を公開する。寄稿は、これまでのテレ朝追及記事を手掛けてきたジャーナリスト・濱田博和氏である。

 なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

・【9月30日公開】
テレビ朝日・報道ステーション「参院選報道お蔵入り」の深層

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 看板報道番組『報道ステーション』チーフプロデューサー(CP、当時)の桐永洋による10数人の女性スタッフらへのセクハラや、平日昼間の情報番組『大下容子 ワイド!スクランブル』CP(同)の小林雄高によるパワハラなど、幹部社員の問題行動が続発するテレビ朝日で10月16日、今度は平日夕方の報道番組『スーパーJチャンネル』(SJ)の曜日企画コーナーで不適切な「仕込み」演出が発覚した。

 同日会見した報道局担当常務の篠塚浩と広報局長の長田明は「仕込み、やらせと言われても否定できない。当社の番組に対する信用を著しく毀損する重大な問題」と謝罪。会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋と、放送当時社長だった取締役の角南源五が報酬の10%、篠塚が同20%を1カ月返上するほか、報道局長の宮川晶が10日間の懲戒停職となる処分も公表した。

 だが、テレ朝社内では「確かにSJは報道番組だが、問題のコーナーは、業務請負契約に基づいて子会社の『テレビ朝日映像』(ViVia、村尾尚子社長)などに丸投げされた一種の"ワイドショー"枠。真実を伝えるべきニュース枠で起きた問題とはまるで重大性が異なる。それをあれほどの大事にして早河会長らの処分を発表しているのに、桐永の悪質なセクハラなど、相次ぐ社員の不祥事に経営陣が誰一人責任を取ろうとしないのでは辻褄が合わない」との不満が噴出している。

担当ディレクターは現役映画監督

 SJの17時台の曜日企画コーナー(17時36~53分、一部地域を除く)で不適切な演出が行われたのは、3月15日(金)放送の「業務用スーパーの意外な利用法」。この枠はViViaが親会社のテレ朝から請け負い、2017年2月から不定期で放送されているという。この日はディレクターが「業務スーパー東新宿店」を定点観測し、珍しい買い物をしている個人客の意外な理由を紹介するというものだった。

 この企画を18年3月から担当していたのが、Oという49歳の社外ディレクターだ。テレビ局などのメディア関連会社に人材を派遣する「クリーク・アンド・リバー」(東京都港区)からViViaに派遣され、今回を含めて13本を手掛けていた。問題の企画は2月27日から3月5日にかけて、Oが一人で取材していた。

 会見で「映画監督の経験があり、俳優養成学校の講師を兼任していた」と説明されたOの名前を検索エンジンに入力すると、ウィキペディアに掲載されている肩書は「日本の映画監督・映画プロデューサー・脚本家・漫画原作者。都内の映画専門学校(注:ウィキペディア上は実名)や女子大(同)の非常勤講師も務める。日本映画監督協会会員」。CMなどの監督を経て00年6月に映画監督デビューし、これまでに6作品を監督している。「自分のやりたいものを撮る」ことにこだわる「異端な若手映画監督」と紹介されているものの、「ドキュメンタリー作家」との表記はない。要するに面白い映像作品をつくろうとこだわる、生粋の「映画監督」なのだ。

 さて、問題の業務用スーパー企画に登場するのは(1)大量の焼きそば麺を購入する47歳の主婦、(2)8歳と5歳の子どもに"はじめてのおつかい"をさせる36歳のシングルマザー、(3)1キログラム入りのポテトマカロニサラダ2袋を購入した47歳のアルバイト男性、(4)歌手になる夢を持ち、冷凍と生のブロッコリーを大量購入してダイエットに励む28歳の女性――という4人のケース。(3)の男性と絡む女性を合わせると登場人物は5人に上るが、うち4人が俳優養成学校でのOの生徒で、1人はOの知人。つまり全員がOの知り合いという、典型的な仕込み演出だった。

 今回の仕込み演出に関して、テレ朝は10月4日に匿名で情報が提供されたことを明らかにした。だが同社関係者によると、情報提供者から「10月15日までに何らかの措置を取らなければ、しかるべき対応を取る」とデッドラインを設定されたため、大わらわでO本人の事情聴取を含む内部調査が行われ、デッドラインから1日遅れの16日に何とか緊急会見に漕ぎ着けるドタバタぶりだった。

どう見てもシナリオ通りの演技

 テレ朝の聴取に応じたOは「知人でありながら初対面を装った」ことを認める一方、「撮影日は教えたが、ロケ内容の打ち合わせも、現場での指示もしていない」などと弁明したという。本当にそうなのだろうか。

 例えば(3)の男性の場合、以前このサラダを食べた直後に恋人ができる幸運に恵まれたため、購入したサラダを験担ぎで食べたあと、上野駅で職場の同僚女性に交際を申し込んで断られる。カメラはそのシーンを隠し撮りで収めており、その後、男性は「コスパのいい、おいしいもの(注:サラダのこと)を食べられたので、それでいいです」などと、商品を不自然に賛美しているのだ。会見後にこの映像を改めて確認したというテレ朝関係者が笑いながら話す。

「実際の取材現場で、ここまで"よくできた話"に遭遇する機会など、およそあり得ない。Oの知人の男女2人がシナリオに従って演技し、それをOが偶然を装って撮影したと考えた方がはるかに現実的です。Oは本職の映画監督で、登場した5人のうち4人は俳優養成学校の生徒。ストーリーのつくり込みには何の抵抗もないはずです」

 また、(2)の女性も業務用スーパーを選んだ理由について「自分は常連客で子どもが店に慣れており、買い間違いが起きても低価格なので腹が立たない」と説明しており、どことなく宣伝臭が漂う。前出のテレ朝関係者は、このケースについても呆れ顔で話す。

「撮影は母親が店外で子どもに指示を与えるところから始まり、カメラが店内に入る子どもの後を付いて行きます。本当の取材だったら、店内で買い物をしている子ども2人に気づいたOが子どもに声を掛け、それから店外で待つ母親に取材を依頼する流れになるはず。これもOのシナリオに基づく演技以外の何物でもないでしょう」

 Oは事情聴取に「登場した5人と業務用スーパーに謝礼は支払っていない」と答えたとされるが、果たして本当なのだろうか。

桐永・報ステ前CP処分時とは雲泥の差

 放送前にこの企画を3度プレビューしたというViViaチーフディレクター、同プロデューサー、SJのテレ朝デスク、同プロデューサーはいずれも演出を不適切と認識しなかった。過剰演出や仕込みなどをしていないか自己申告するチェックシートや、番組が義務付けている取材対象者の顔写真・名前・連絡先も提出されていたことから、Oの企画は何の疑念も持たれないまま放送された。テレ朝報道局幹部が真相を語る。

「実は3月の放送終了後間もなく、報道局内で『あのVTR、おかしくなかったか?』と疑う声が上がり、Oの事情聴取も行われましたが、本人が否定したため、沙汰止みになりました。確かにSJ自体は報道番組ですが、あの企画枠はViViaに丸投げの上、ごく限られた関係スタッフがニューススタッフの作業スペースに顔を出す機会もないので、局内では報道の企画とは見做されておらず、オンエアを真剣に見ている報道局員もほとんどいません。会見でも『この企画は報道枠ではないのでは』と的を射た質問が繰り返されましたが、篠塚常務らはなぜか報道枠であるとの主張を崩しませんでした」

 Oは事情聴取に対して「思うように取材ができず、自信がなくなっていた。(生徒らに)明確な指示を出していなければ良いのでは、と都合よく解釈した」と釈明したが、テレ朝社内では「会見の内容だけで終わらないのでは」との見方が強い。大手広告代理店からも「スポンサーに対する説明が必要だが、会見で話した以上の内容が後から出ると、スポンサーの信用を失いかねない」と懸念の声が上がったという。テレ朝幹部が表情を曇らせて話す。

「生粋の映画監督であるOが制作した企画を、報道番組のSJで放送すること自体、チェック体制の甘さを指摘されても仕方がない。あの枠は所詮、報道局内では報道枠とは認識されておらず、番組幹部によるチェックもおざなりになっていたのではないか。あの枠は視聴率獲得が至上命題で、Oに対するプレッシャーは厳しかったはず。ストレスに耐えかねて、映画の感覚で撮影したのでしょう。SJ金曜17時台の企画枠は打ち切られ、今後はOが担当した別の企画に問題がなかったのか検証されるようですが、歌舞伎町潜入ものなども担当しているので、仕込みが常態化していたのではないかと心配です」

 この問題を受けて、テレ朝では前述した早河らの処分のほか、ViVia社長の村尾が報酬返上、同社常務の青木吾朗が報酬返上の上、制作局担当を離れ、両社の関係者にも処分が下されるという。

 報ステCP(当時)という幹部社員の桐永が8月末、同番組に出演している局アナの森葉子や、同番組の女性スタッフら合わせて10数人にセクハラ行為を働きながら(桐永自身は3日間の謹慎とBS朝日への出向)、早河や篠塚、それに宮川には何のお咎めもなかった事態に比べると、文字通り「雲泥の差」である。

「今回の対応はどう見ても、情報提供者の"恫喝"に恐れをなした経営幹部の過剰反応。しかもOディレクターは人材派遣会社から子会社のViViaに派遣された外部の人間に過ぎない。それに比べて幹部社員の桐永のセクハラ行為は、強制猥褻罪に問われかねない悪質なレベル。桐永に対する軽すぎる処分や、桐永を報ステCPに任命した責任のある早河会長に対する不満は、今も報ステ内で燻っていると言われます」(テレ朝元幹部)

 いずれにしても相変わらず問題山積のテレ朝報道局。局長の宮川が同局員宛てメールで強調した「テレビ朝日報道の信頼回復」の道程は容易なことではなさそうだ。(敬称略)

 桐永CPのセクハラ事件を受け、早河会長の肝いりで「ハラスメント問題対策会議」が立ち上げられたというが、それ以前に求められるのが、経営陣の処分と事実の追究であることは言うまでもない。その一助たるべく、小誌は2019年11月号掲載の《報ステセクハラCP「情実処分」の舞台裏》記事を近日、本ブログで公開する予定である。

日本経済新聞朝刊に「ZAITEN」12月号の告知が掲載されています

11月1日の「日本経済新聞」朝刊に、発売中のZAITEN2019年12月号の告知が掲載されております。
是非とも全国書店や弊社に直接ご注文の上、ご購入くださいませ。

なお、弊社サイトでは、発売日より少し早めにZAITENを入手できる「定期購読」も受け付けております。

【ZAITEN購入ページ】http://www.zaiten.co.jp/shop/html/

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ちなみに、12月号の全ラインナップは下記URLをご覧くださいませ。
【最新号案内】http://www.zaiten.co.jp/latest/

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百十四銀行「情報漏洩で行員が警察に事情聴取」会見の姑息

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 小誌「ZAITEN」が、香川の地銀、百十四銀行で発生した渡辺智樹会長(当時)の若手女性行員への"セクハラ事件"を報じたのは、ちょうど1年前、2018年11月1日発売の同12月号のことだった。あれから1年。小誌は明日11月1日発売の19年12月号で、改めて百十四銀の不祥事について報じている。題して《行内文書が流出していた疑いが...百十四銀行「行員が警察に任意同行」隠蔽疑惑》である。

 ところが――。12月号発売を前日に控えた本日10月31日、百十四銀は香川・高松で突如記者会見を開催。香川亮平取締役専務執行役員が「30代の元男性行員が、知人に顧客情報を漏らしていた」とした上で、「顧客の一部は詐欺事件の被害に遭っている」と発表した。

【参照】
産経新聞《百十四銀行員が情報漏えい 17件、一部詐欺被害に 「情報渡った可能性」》記事(10月31日13:16配信)

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 まさに小誌報道と符合する内容の発表だが、小誌12月号は10月29日に刷り上がっており、何らかの形で記事の内容を事前に察知、あるいは入手した百十四銀側が掲載誌発売前に会見を開くという"危機対応"を発動させたものと思われる。想像するに、小誌記事の内容をまだ知らない地元記者の追及をかわせるとでも考えたのだろう。まさに昨年10月、渡辺会長が小誌発売直前に辞任した構図の焼き直しだが、そんな姑息な手段で情報漏洩不祥事、ひいては百十四銀が今なおガバナンス不全に陥っている状況を覆い隠すことは出来ない。

 詳細は明日発売の小誌12月号をご覧頂きたいが、香川専務が会見で発表した内容だけを見ても、依然として、百十四銀の度し難い隠蔽体質が浮かび上がる。元より、高松での会見に参加していない小誌はその全容を知らないが、現時点で報道されているマスコミ各社の記事内容に照らしても、触れられていない(であろう)事実はおろか、事実とは相違する点すら見受けられるのだ。なお、それについては、追ってお伝えしていく。

 一方、当の百十四銀の近況と言うと......地元ゼネコン最大手の合田工務店・森田紘一社長(現在も社長在任)とともに鬼畜の如きセクハラという汚辱に塗れた末、会長辞任を余儀なくされた渡辺相談役が今年3月末に事実上放逐されて以降、"疑似創業家"出身の威光で「一強支配」を確立しているという綾田裕次郎頭取。今回の情報漏洩事件については"一不良行員の不祥事"として幕引きを図ろうという意図は見え見えだが、綾田一強支配によって百十四銀内部ではますます疲弊と腐敗が進んでいるとされる。魚は頭から腐る――。そうである以上、腐敗を止めるには、やはり頭から断ち落とすしかない。

 いずれにせよ、小誌編集部は12月号の記事内容にとどまらず、本ブログ他でも綾田百十四銀のガバナンス崩壊をお伝えしていく所存である。

 つきましては、明日11月1日発売の「ZAITEN」12月号をぜひともご覧ください。
 なお、百十四銀の病巣の内幕を報じた長編レポート《セクハラ百十四銀行「色情と暗黒」の10年》を掲載している19年1月号(18年12月1日発売)についても、在庫がございますので、ぜひともご購読のほど、よろしくお願いいたします。

【ZAITEN公式サイト】http://www.zaiten.co.jp/
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 また、百十四銀行に関する情報提供を以下の公式サイトフォームおよびメールアドレスで募集しております。
 なお、小誌において情報源の秘匿については絶対ですので、その点についてはご信頼くださいませ。

【情報提供フォーム】http://www.zaiten.co.jp/formmail/indict.php
【情報提供アドレス】indictment@zaiten.co.jp


 小誌ブログでは百十四銀について、過去、以下のような記事もアップしています。

・18年10月31日公開
【ZAITEN12月号】百十四銀行・渡辺会長「セクハラ辞任」について

・18年11月16日公開
百十四銀行「セクハラ事件」の見解および続報について

日本経済新聞朝刊に「ZAITEN」11月号の告知が掲載されています

10月2日の「日本経済新聞」朝刊5面に、発売中のZAITEN2019年11月号の告知が掲載されております。
是非とも全国書店や弊社に直接ご注文の上、ご購入くださいませ。

なお、弊社サイトでは、発売日より少し早めにZAITENを入手できる「定期購読」も受け付けております。

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テレビ朝日・報道ステーション「参院選報道お蔵入り」の深層

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「残念。極めて重く受け止めている」――。テレビ朝日の早河洋会長兼CEO(最高経営責任者)は9月24日の定例会見で、同局の看板報道番組「報道ステーション」のチーフプロデューサー(CP)、桐永洋氏(現在、CPは更迭。BS朝日に出向)が引き起こした"セクハラ事件"について初めて言及した。加えて、再発防止策として社内に「ハラスメント対策会議」を設置、早河会長直々に議長に就任したという。

とはいえ、これまで週刊誌の取材に対し、自宅でゴルフの素振り中のところを直撃されても無視(週刊新潮9月12日号)、自宅にベタ付けした社用車に乗り込むところを記者に直撃されても黙殺(写真週刊誌「フラッシュ」9月17日号)で、臨んできた早河会長。週刊誌等の各メディアが取材に動き始めて早1カ月が経とうかという時期になってようやく、最高実力者の肉声が発せられたということ自体に、テレ朝におけるハラスメント対策の本気度が窺い知れる。

加えて、明日10月1日発売の小誌「ZAITEN」11月号でも報じている通り、報ステスタッフをはじめ、テレ朝内部でもセクハラ事件の詳細な事情説明は行われていない。早河ハラスメント対策議長がどのような施策を持ち合わせているのかは知る由もないが、少なくとも社内において"事件"に関する認識を共有することが、ハラスメント撲滅の第一歩のはずだ。

"共通認識"で言うと、今回の桐永CPによる鬼畜の如きセクハラ行為の告発を巡っては、報ステ番組内部の"権力抗争"に原因を求める背景説明が週刊文春をはじめ、一部メディアによって流布されている。曰く、「(桐永CPが進めた報ステのワイドショー化が)硬派なディレクターらと桐永氏の軋轢を深めた」(週刊文春9月12日号)。それ故、"反桐永"の女性スタッフが中心となって桐永CPのハラスメント行為を殊更に騒ぎ立て、追放を画策。そして、7月17日の報ステにおける参院選報道の"ドタキャン"騒動が、その直接的な引き金になった――という構図である。

このドタキャン騒動とは、参院選静岡選挙区において、国民民主党候補の榛葉(しんば)賀津也氏と立憲民主党の徳川家広氏の野党両党の候補者が2位での当選を巡って激戦を繰り広げる中、菅義偉官房長官が国民・榛葉氏への協力を要請していたという安倍官邸の関与を窺わせる疑惑について、7月17日の報ステは新聞のテレビ欄において〈"大物が続々応援"激しい駆け引き......静岡選挙区〉と銘打ち、報道を予告にしていたにもかかわらず、突如、桐永CPの指示でニュースがお蔵入りになってしまったことを指す。つまり、静岡選挙区の報道を取り止めた桐永CPに硬派とされるスタッフが造反した結果、セクハラ事件が炎上したと臭わせているのである。事実、週刊文春の同レポートでは......

・桐永氏は選挙特別番組「選挙ステーション」にかかりきりで、同日の報ステの内容は、後任CPとなった鈴木大介プロデューサーに任せきりだった。

・「公平な選挙報道が求められる中、全国放送の報ステが投開票直前にあえて静岡を取り上げ、しかも、官邸の関与に焦点をあてれば偏って見える」などということで、報道をお蔵入りにした。

・放送終了後の反省会で、桐永CPは「(選挙報道の基本を記した)ハンドブックを読み、選挙報道の勉強会にも出てれば、こんな原稿を書けるわけない。こんな放送をしていたら間違いなく訴えらえる。BPO(放送倫理・番組向上機構)案件になったら番組が終わるんだよ。僕はこの番組の責任者として、中小企業の社長のオヤジとして、みんなを路頭に迷わせるわけにはいかない」などと発言した。

文春記事は、7月頭のセクハラ告発と同月17日のドタキャン騒動は〈時系列が矛盾する〉と指摘するものの、これら桐永CPを擁護するかのようなテレ朝幹部の発言やエピソードについては、まさに笑止千万なフェイクニュース。他方、小誌は文春に先立つ9月1日発売の10月号において同騒動の詳細を取り上げている。まずは、当該レポート《テレビ朝日・報ステCP「官邸忖度」の咆哮》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を無料公開したので、お読み頂きたい。これがドタキャン騒動の真実である。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

20190717hstation_kirinaga.jpg7月17日の「報ステ」のテレビ欄と桐永洋氏(写真はマイナビニュースサイトより)
(19年10月号掲載写真より)


 この民放局を報道機関と見做すのは、もはや悪い冗談なのかも知れない。ほんの数年前まで「権力に物申すテレビ局」と期待されていたテレビ朝日のことだ。小誌は今年6月号で、安倍晋三・自民党政権の走狗と化した同社報道局政治部の実情を伝えたが、今回は看板報道番組『報道ステーション』で7月17日に起きた、安倍官邸に対する〝忖度劇〟など、報道機関にあるまじきその実態を報告する。

 報ステの忖度劇の主役は、テレ朝の〝ドン〟と称される会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(75)から直々に抜擢された同番組チーフプロデューサー(CP)の桐永洋(49)。硬派だった報ステのワイドショー化を恥ずかしげもなく進めてきたA級戦犯だ。

 事の発端は、時事通信が参院選投票日10日前の7月11日午後に配信した「立憲が国民に『刺客』=官邸参戦で対立激化−静岡」と題する、参院選静岡選挙区の情勢分析記事だった。

静岡選挙区に安倍官邸が介入

 改選数2の「2人区」の中で唯一、立憲民主党と国民民主党が競合する形となった同選挙区は、立憲候補の徳川家広が国民現職で同党参院幹事長の榛葉賀津也の追い落としを図る格好に。榛葉はかねてから自民党参院幹部と親交が深く、「ほぼ自民」と目されていたが、時事通信によると、今回の選挙では何と、安倍官邸が苦戦する榛葉のテコ入れに動いていた。

 その裏付けとして時事通信は、(1)安倍が6月、自民党静岡県連関係者に「立憲民主が当選したら困るよね」と問い掛けた事実、(2)榛葉と親しい官房長官の菅義偉が、企業や公明党の支持母体・創価学会に榛葉支持を働き掛けたとする複数の証言、(3)菅の動きを察知した徳川陣営関係者が「公明が怪しい動きをしている」と警戒を強めている事実――などの取材結果を挙げた上で、こう結論付けた。

「(憲法改正に拘る)安倍は、参院選後も自公や日本維新の会などの改憲勢力で発議に必要な3分の2を維持することが難しいと認めている。このため新たな改憲勢力を求めており、榛葉は格好のターゲットと映っているとみられる」

 するとその2日後の13日、地元の静岡新聞が朝刊1面トップで「野党激突に『不思議』な動き、官邸介入か」と報じる。自民党を支援してきた自動車大手、スズキ会長の鈴木修が疎遠のはずの榛葉支援を表明したことや、他の県内企業や団体の一部も榛葉の支援に回ったことを報道。「首相官邸からの依頼だ」との自民党関係者の証言を引いて、「榛葉に恩を売って改憲への協力を得る狙い」と言明した。

 さらにその2日後の15日、今度はテレ朝系列の静岡朝日テレビ(SATV)が夕方の報道番組『とびっきり!しずおか』で、「〝官邸参戦?〟静岡に異変」と銘打った約9分間のVTRを放送。榛葉支援を表明する鈴木の映像や、菅が関係者に電話で「榛葉氏を落とすわけにいかない。助けてやって欲しい」と直接要請してきたことなど、官邸介入の事実を強く窺わせた。ただ、榛葉本人が支援要請自体を否定する映像や、国民の前原誠司が「自民党が(榛葉に)手を差し伸べることはありえない」と話す映像も差し込み、バランスに配慮した完成度の高い構成になっていた。

 静岡選挙区を巡るこうした一連の報道、中でもSATVのVTRに飛びついたのが、キー局の報ステのデスクで政治部出身の梶川幸司だ。21日の投開票日夜の『選挙ステーション2019』のプロデューサーを兼任し系列局の選挙報道を閲覧できる立場の梶川は、このVTRを「このまま報ステで使える」と判断。映像素材と構成原稿をSATVから取り寄せることにし、CPの桐永の了解を得た。

 さらに梶川らは一連の報道について、政治部の官邸担当記者が翌16日午前の定例会見で菅に真偽を直接尋ねるよう、政治部デスクに要請した。官邸からのクレームに備えての発想だ。会見で「静岡選挙区で、選挙後の協力を見据えて、官邸が国民の榛葉候補への支援を行うよう、各所に要請しているという地元報道があるが」と尋ねられた菅は、「そうした事実関係はありません」と素っ気なく答え、次の質問に移ったという。

 SATVの取材が行き届いていたこともあり、菅のコメントを確認した梶川らは、翌17日の特集枠でこのネタを放送できると判断、番組に関する決定権を握る桐永の了承を得た。特集枠の担当ディレクターも16日中に決定。同日夜には17日付朝刊のラジオ・テレビ番組欄に載せる、この特集の見出しが決まった。「〝大物が続々応援〟激しい駆け引き...静岡選挙区」。これも桐永の了承済みであることは言を俟たない。

こんなの放送できるわけない!

 さて、放送当日の17日。担当ディレクターは、SATVから伝送された映像素材や前日の菅の会見映像、それにSATVの構成原稿をベースに、報ステで放送するVTRの構成原稿を執筆した。VTRの尺(長さ)は約6分だった。

 報ステでは毎日午後3時と5時、その日の放送内容に関するミーティングが行われる。前者では桐永と梶川ら番組デスク、後者ではこれに各ニュースの担当ディレクターとMCの徳永有美、富川悠太が加わり、各ニュースの取り上げ方や演出方法などについて打ち合わせる。複数の報ステ関係者は「この席で、参院選静岡選挙区の特集の内容修正を求めるような意見は特に出なかった」と口を揃える。

 ところが午後7時ごろ、状況が一変する。約3時間後の放送を前に、30人前後のスタッフが忙しく準備を進めている本社4階のニュースルーム。そこに血相を変えて駆け込んで来た桐永が、特集を担当したディレクターを名指しして「こんなの、放送できるわけがないだろ!」と怒鳴り散らしたのだ。報ステ関係者が内幕を語る。

「報ステをはじめ番組のディレクターが執筆したニュース原稿は、政治部や社会部など出稿部の担当記者が内容をチェックする決まりです。静岡選挙区の構成原稿は首相官邸が絡む話なので、政治部の官邸記者クラブの吉野(真太郎)キャップが確認しますが、何しろ安倍官邸ベッタリで有名ですから、あの時間帯なら、原稿内容について否定的な意見を付けてきても不思議はありません」

 その1時間後の午後8時すぎ、ニュースルームに「選挙のVを飛ばします」とのアナウンスが流れ、特集VTRは幻となった。別の報ステ関係者が明かす。

「コメンテーターの後藤謙次氏が、8時からのデスクとの打ち合わせの際に『この件では官邸が大変ナーバスになっている』と話したというのです。『放送はやめるべきだ』との意図はなかったと思いますが、元共同通信社編集局長で敏腕政治記者である後藤氏の情報なので、官邸の機嫌を損ねる報道は差し控えることが最重要課題の桐永CPはビビッて、お得意の忖度を働かせた。報ステからの依頼で送った、完成度の高いVTRを反故にされたSATVの担当ディレクターは、放送取り止めに激怒したそうです」

 約6分の特集VTRを飛ばした穴は結局、用意していた別のVTRの放送や、スタジオ演出の時間を少しずつ伸ばすことで対応。ラテ欄に掲載した予告内容を番組側の都合で変更したため、番組の最後に「番組の内容を一部変更しました」とのテロップが流された。

私は正しいことをしている!

 番組終了後のスタッフルームで開かれた恒例の反省会で、桐永は「何でこんなネタを持ってくるんだ! こんなの放送していたらBPO(放送倫理・番組向上機構)案件だ! 担当ディレクターは猛省してもらいたい」などと一人荒れ狂った。その言い草に呆れ果てたというスタッフの一人が話す。

「梶川デスクの提案を承認したのも、ラテ欄の文章を決めたのも、放送当日の2度にわたる打ち合わせで何ら疑義を挟まなかったのも、すべて桐永CP自身。そもそも担当ディレクターはネタを振られただけで、この特集の発案者でもない。それにこのネタがなぜBPO案件になるのか? 菅長官のコメントはあるし、SATVの取材も周到に尽くされている。猛省すべきなのは、土壇場で保身に転じた桐永CP自身のはずです」

 ちなみに反省会で桐永は、このニュースを放送するよう提案した梶川を咎めることはなく、一方、桐永に晒し物にされた担当ディレクターを梶川が庇うこともなかった。担当は制作会社から派遣された中堅の有能な女性で、桐永らの態度はテレビ局に典型的な「下請けいじめ」以外の何物でもない。

 また同じ7月17日の報ステでは、NHKが放送直前に報じた「ジャニーズ事務所が元SMAPメンバーの3人を出演させないよう民放局に圧力をかけていた疑いがあるとして、公正取引委員会が同事務所に注意した」との特ダネを、意図的に後追いしなかった。

「視聴率万年4位の時代が長かったテレ朝には、ジャニーズのタレントに出演してもらえなかった苦い過去があり、そのネガティブ情報を伝えることに関しては、他の民放局よりもはるかに臆病です。この日もNHKが報じたあと、報道局の記者が迅速に裏を取り、原稿を書き終えていたにもかかわらず、総合編成局から『後追いの必要なし』との指示が出され、桐永CPは何ら抵抗することなくこれに従いました」(テレ朝関係者)

 これらの〝事件〟から5日後の22日、報道フロアの幹部席で報道番組センター長の佐々木毅と言い争う桐永の姿があった。桐永は「私は正しいことをしているだけだ!」と声を荒げていたが、テレ朝の報道姿勢を貶めた張本人はいったい何を主張していたのか。

 こうした報ステの報道姿勢について、テレ朝広報部は「特に(小誌の取材に対し)お答えすることはない」と回答した。報ステCP就任から1年が過ぎ、桐永の「忖度病」はいよいよ病膏肓に入ったようだ。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

なお、小誌の取材では、桐永氏が「選挙ステーション」にかかりきりになっていた事実がなかったことはおろか、参院選報道の取り止めについて「中小企業の社長のオヤジとして、みんなを路頭に迷わせるわけにはいかない」など、桐永氏が"浪花節"の発言をしたなどという美談調のエピソードも一切なかったことが確認できた。

少し調べれば簡単にバレてしまう嘘を臆面もなく口にできるという、桐永氏の早稲田大学雄弁会仕込みのセルフプロデュース能力については、小誌がこれまで言及してきた通りである。ハラスメント撲滅を掲げるテレ朝にまずもって求められるのは、正しい情報と認識の共有である。"笛吹き男"に騙されてはならない。

テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

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《聞き取りで浮上 報道ステーション「セクハラ横行」の疑い》――。本日発売の「週刊文春」(9月19日号)で再び報じられたテレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の男性番組スタッフによる複数のハラスメント疑惑。「魚は頭から腐る」というが、番組の最高責任者である桐永洋チーフプロデューサー(CP。現在更迭)からして、出演する女性アナウンサーに対する"キス・セクハラ"に手を染めていたのだから、麾下にあるデスク他、番組の男性スタッフの度し難いモラルハザードは推して知るべしと言える。

ただ、セクハラがバラエティなどの娯楽番組で罷り通ってもよいとは言わないが、こと、清廉性が求められる報道番組において、そのような野獣の所業が横行していたとなると、事情は大いに違ってくる。果たして、今後、報ステはセクハラ問題を真正面から報じることが出来るのか。それどころか、局面次第では時の政権との対決も余儀なくされるはずの報道番組が、そのような破廉恥行為で足元を掬われることの社会的損失はあまりに大きい。

しかし、テレ朝の報道部門はその清廉性を自ら放棄しようとしているようなのである。これまでの報ステ関連記事に加え、今回は小誌「ZAITEN」2019年6月号(同5月1日発売)で報じた《安倍官邸に踊る「テレ朝」政治記者の倫理観》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を無料公開したい。安倍政権中枢の菅義偉官房長官、今井尚哉首相秘書官(当時、9月11日の内閣改造で首相補佐官を兼務)に接近、"走狗"ぶりを見せるテレ朝政治部記者の振る舞いを描いた同レポートは、永田町界隈で大いに注目を集めたが、果たして、公共の電波を預かるテレ朝の報道姿勢は大丈夫なのか......。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月9日公開】
テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

1906tvasahi_imai_suga.jpg今井尚哉首相秘書官と菅義偉官房長官
(「ZAITEN」19年6月号掲載写真)

 令和おじさん――。新元号「令和」を発表した安倍晋三・自民党政権の官房長官、菅義偉は今、若い世代からこんな愛称で呼ばれているのだそうだ。だがその素顔は、学校法人の森友学園と加計学園を巡る一連の問題、さらには閣僚の不適切発言などに対するメディアの追及を巧妙にかわし、定例会見で厳しい質問を連発する東京新聞社会部記者の望月衣塑子を「あなたに答える必要はない」と突っ撥ねる、厚顔無恥な第2次安倍政権の〝防波堤〟である。全国紙の政治部記者が解説する。

「政権のスポークスマンを務める菅長官は、テレビの影響力の大きさを熟知しています。朝食会では、5時半起きで新聞とテレビをチェックした秘書官から報告を受け、テレビに出ているコメンテーターらと連日会食する。その際は『先生のおっしゃる通りです』などと下手に出てプライドをくすぐるので、コメンテーターらも悪い気はしない。メディア支配の手法が実に巧妙なんです」

 この菅とともにメディア支配の役割を担うのが、第1次政権時代からの「安倍の懐刀」政務担当の首相秘書官、今井尚哉。NHK解説委員の岩田明子ら、お気に入りの記者を露骨に贔屓する一方、意に染まない番記者を恫喝や無視。優等生揃いの番記者は怖気づき、今井の掌の上で踊る。菅とは一味違う「恐怖による支配」である。

「育ちの良い安倍首相と、キャリア官僚の今井秘書官は、学歴が高く礼儀正しい記者がお気に入り。逆に地方議員からの叩き上げで苦労人の菅長官は、エリート臭の強い記者や女性記者がNG。『特定の女性記者に甘い』と指弾されないよう用心しているのです。さすがに官邸クラブから不満が上がり、最近は各社の女性記者が菅長官を囲む会合が持たれるようになりました」(前出の政治部記者)

安倍シンパのテレ朝記者

 こうした第2次安倍政権が支配を目論んだメディアのひとつが、1985年10月の『ニュースステーション』(Nステ)放送開始以来、一貫して歴代自民党政権に批判的な論調を展開してきたテレビ朝日と、Nステの後継番組『報道ステーション』(報ステ)だ。Nステや報ステのシニカルな報道姿勢や、報道局長(当時)の椿貞良の「『何でもよいから反自民の連立政権を成立させること』を狙って局内をまとめていた」との発言が波紋を広げた椿事件(93年)などが原因で、自民党政権とテレ朝との関係は長年冷え切っていた。

 安倍政権はそうした状況を打開し、仇敵の報ステを骨抜きにしようと目論む。それにはテレ朝政治部内にシンパを作るのが何より手っ取り早い。その対象になったが、第1次政権下(2006年9月~07年8月)で内閣記者会(官邸記者クラブ)に配属されていた吉野真太郎だった。

 79年生まれの吉野は久留米大学附設高校(福岡県)、東大経済学部を卒業して03年4月にテレ朝に入社した学歴エリート。入社当初は報道情報局社会部で警視庁記者クラブに所属したが、わずか1年で政治部に。10年7月に報ステに異動するまでの6年間を官邸クラブで過ごした。吉野を知る他の民放キー局の政治部記者が語る。

「吉野は政治部記者としてではなく、一個人として安倍さんの熱狂的なファンなのです。07年9月に安倍さんが参院選の敗北や体調悪化を受けて政権を投げ出したあと、吉野は高尾山の登山に同行するなどして、親交を欠かしませんでした。報ステ異動後の吉野が11年に結婚した際、安倍さんは『吉野君は私が最も信頼するテレ朝の記者』というビデオメッセージを送った。吉野がそれを披露宴で自慢げに流したことで、政治部記者の間で話題となり、顰蹙を買っていました」

 12年12月の第2次安倍政権誕生に伴い、吉野は翌13年7月にめでたく政治部に復帰、再び官邸クラブに所属して現在に至る。大手メディアは、特定の相手との癒着関係を防ぐため、長くても3年で担当替えするのが不文律だ。ところが吉野の官邸クラブ在籍期間は前後11年9カ月に及び、昨年7月からはキャップとして5人の部下を統轄する。そのうちの一人で内閣府特命担当大臣の片山さつきらを担当していたのが、同僚の夫がありながら、週刊誌にNHK記者との〝禁断愛〟を報じられた元局アナの村上祐子。全国紙の政治部デスクは驚きを隠さない。

「自民党担当の平河クラブや野党クラブを一度も担当せず、中央官庁で政策取材の経験もない政治部記者が、官邸クラブのキャップになるなど、通常はあり得ない。吉野と安倍政権との親密さは永田町界隈では周知の事実だが、それを放置しているテレ朝政治部の堕落ぶりは醜悪と呼ぶ他ありません」

報道局内のアンタッチャブル

 今井の方から吉野に「総理の報ステ出演はどうだ?」などと持ち掛け、意を汲んだ吉野が報ステと交渉することもあるという。その姿は〝官邸の走狗〟そのものだ。さらに、報ステスタッフ作成の政権関連原稿は吉野がチェックすることになっているのだが、官邸クラブ関係者によると、なぜか、その内容が官邸側に漏れているとの疑念まで燻っているという。

 とはいえ、今井が吉野に特ダネを提供するわけではない。前出の政治部デスクが解説する。

「メディアとしての〝格〟を重視する今井秘書官は、テレ朝に特ダネを与えるような真似はしないが、吉野が他社の特ダネを後追いする際は、優先的に裏取りさせています。自民党政権から相手にされない時代が長かったテレ朝政治部にとっては、自力でスムーズに後追いできること自体、画期的。今井秘書官に利用されているのが見え見えとはいえ、吉野を替えようにも替えられないようです」

 こうした吉野の傍若無人ぶりを如実に示す出来事が、17年4月に報じられている。『週刊ポスト』によると、今井番だった吉野は同年1月、今井の不興を買っている朝日新聞記者を大手紙記者とともに呼び出し、「君が(夜回り取材に)来ると今井さんが対応してくれないから、もう来ないでくれる? その代わり(今井氏とのやり取りを記した)メモは回すからさ」などと要請したという。

 そしてその後、件の朝日の記者は今井番を外れた。記事中では「テレビ局の番記者」と名前が伏せられたが、事態を把握したテレ朝のコンプライアンス関連部署は吉野を注意。それでも政治部が吉野を官邸クラブから外すことはなく、逆にキャップに昇格させた。

 また昨年10月半ば、内閣府特命担当大臣の片山の国税庁への口利き疑惑を『週刊文春』が報じた際、報道番組から片山の直撃取材を依頼された吉野は「片山番は担当になったばかりで、朝から追い掛け回すと信頼関係を築けない」として当初はこれを拒否。テレ朝1社だけ直撃映像が存在しない「特落ち」になりかけたが、安倍政権に対する吉野の忖度を叱責する声は上がらなかった。ちなみに、この片山番は前述した元局アナの村上。吉野は彼女に対しても、何かしら忖度する理由があったのか。

 さらに読売新聞が昨年10月14日、「安倍首相が19年10月の消費税率引き上げを予定通り実施する方針を固め、15日の臨時閣議で表明して増税の影響を和らげる対策の検討を指示する」と報じた際も、吉野は「引き上げは既定路線」と後追いを拒否した。他社は揃って後追いしたが、テレ朝関係者によると、この時も吉野が叱責されることはなかったという。

 17年5月24日に行われた安倍とテレ朝会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋との会食にも、吉野は取締役報道局長(当時)の篠塚浩や政治部長の伊井忠義とともに陪席した。前出のテレ朝関係者は「政治部だけでなく報道局全体のアンタッチャブル的な存在となった吉野は、政治部デスクを『紙屑さん』と公言して憚らない。増長の極み」と嘆息する。

菅ファミリーの記者も存在

 そしてテレ朝政治部にはもう一人、安倍政権の〝走狗〟が存在する。吉野と同期の03年入社で、昨年7月から平河クラブキャップを務める小西弘哲。13年7月に官邸クラブの菅番を終えたあと、ワイドショー『モーニングバード』(現・羽鳥慎一モーニングショー)のスタッフ時代に娶った姉さん女房は何と、菅の横浜市議時代(87~96年)から付き従ってきた最側近の私設秘書だった。番記者の小西が菅事務所に出入りしているうちに関係を深めたという。

 自民党所属の元大阪府議を父に持つ小西は、兵庫県の灘校を卒業して同志社大経済学部に進学。お笑い番組の制作を志してテレ朝に入社すると、バラエティ番組担当の編成制作局制作1部に配属されたが、07年7月に報道局社会部に異動、司法記者クラブや横浜支局に所属した。11年7月から2年間は政治部で野党クラブや官邸クラブを担当、4年間のワイドショーのスタッフのあと、17年7月に政治部に復帰した。小西を知る他の民放キー局の政治部記者が語る。

「お調子者で大の競馬好きですが、菅長官は優等生タイプの記者を好まず、何より安倍政権が取り込みを目論むテレ朝政治部の記者。長年付き従ってくれた女性秘書が結婚を望めば、止める理由はありません。『小西の前で安倍政権批判はタブー。たちどころに菅長官に伝わる』というのが、昨今の政治部記者の常識です」

 安倍と今井の後ろ盾を持つ吉野と、ポスト安倍の有力候補に躍り出た菅と家族同然の付き合いをする小西。部長の伊井さえ、もはや2人には何も言えない。舵取りを失ったテレ朝政治部は、小西の部下へのパワハラも相俟って危機的状況にあるという。安倍政権のテレ朝対策は、当初の期待を上回る成果を挙げたようだ。

 なおテレ朝は、報道番組の内容の官邸への漏出などは事実無根で、不適切な取材はしていない旨回答した。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

190912tvasahi_shincho_suga.JPG令和おじさんの脇で仁王立ちの小西記者
(「週刊新潮」19年4月25日号記事より)

菅、今井の両氏が共に影響力を盤石にした安倍政権の内閣改造に、最も安堵しているのは、彼ら政治部記者たちなのだろう。永田町劇場の舞台裏をどれだけの国民が知っているのだろうか。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年6月号発売後に、従業員に対する名誉棄損および侮辱行為とした上で、官邸側に情報が漏れていることはない、特定の個人・団体の意向によって報道が左右されている事実は一切ないなどといった内容の「警告書」を小誌編集部に寄せている。
加えて蛇足ながら、テレビ朝日は報ステ番組サイト内で「週刊誌報道等について」と題した声明を出している。しかし、一般には気づき難いと思われるので、以下にサイトURLを告知させて頂く。

https://www.tv-asahi.co.jp/hst/contents/info/0007/index.html

テレビ朝日「報ステ」セクハラに沈黙する早河会長

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《自宅を訪ねると、ゴルフのドライバーを手に素振り中。しかし、こちらの問いかけには一切応じることがなかったのである》――。テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」の桐永洋チーフプロデューサー(CP、現在更迭)による女性アナウンサーへの"キス・セクハラ"問題を報じた「週刊新潮」(9月12日号)。同誌の直撃取材に"完全無視"を決め込んだのは、齢75、テレ朝の早河洋会長兼CEO(最高経営責任者)である。

本日9月10日発売の写真週刊誌「フラッシュ」でも、記者に一瞥をくれることもなく、無言のままハイヤーに乗り込む早河会長の写真が掲載されたが、そのタイトルは《恐怖の独裁》である。早河会長のテレ朝支配が"恐怖"であるかどうかは置くとして、今回の桐永CPのキス・セクハラのみならず、局の不祥事に際して、この最高実力者の肉声が伝わってくることはほとんどない。早河氏にとっては先輩格に当たる"お台場の首領"ことフジテレビの日枝久相談役が、曲がりなりにも雑誌取材に応じるのとは対照的だ。

ところが、今年2月、そんな早河氏が相好を崩すような一幕があった。テレ朝開局60周年記念式典である――。小誌「ZAITEN」は2019年5月号(同4月1日発売)で《テレ朝・早河会長「ワンマンショー」誌上中継》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)と題し、式典の一部始終を詳報。今回は同レポートを公開したい。

なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。

・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)

・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)

・【9月7日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(3)

・【9月12日公開】
テレビ朝日・政治記者の知られざる実像

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式典に先立ち「テレビ朝日稲荷」を拝礼する早河会長
(テレ朝社報「tv asahi press」19年5月号より)

 さる2月4日。暦の上の春を迎えたこの日、東京・六本木ヒルズのテレビ朝日本社から程近い、同社直営のライブハウス「EXシアター六本木」に、部長級以上の社員やグループ会社幹部、さらには系列局の代表や広告代理店幹部らが集まった。業務を外れても支障のないテレ朝の一般社員までが参列を求められ、着席で最大920人を収容できる場内は熱気に包まれていた。

 2013年11月開場の同シアターは、スイッチを押すだけで座席を巻き取るロールバックチェア方式を採用し、立ち見なら1746人を収容可能。09年6月に同社初の生え抜き社長(14年6月からは会長兼CEO=最高経営責任者)に就任以来、10年の長きにわたってテレ朝グループに君臨する〝ドン〟早河洋(75)ご自慢のハイテク施設だ。早河が六本木ヒルズの本社周辺に構築を目指す「メディアシティ」の一翼を担っている。

 そのEXシアターでこの日午前11時から催されたのが、1959年2月1日に本放送を開始したテレ朝(当時は日本教育テレビ)の「開局60周年記念式典」だ。参列した若手や中堅の社員を「テレ朝はここまで個人崇拝の会社だったのか」と驚かせた「早河万歳=マンセー」式典の一部始終をダイジェストでお送りしよう。

 その前に開局60周年を迎えたテレ朝の現状をおさらいしておく。

女子アナはまるで「喜び組」

〝万年民放4位〟と揶揄された同社の視聴率は昨18年、全日帯の年間平均で7・7%の2位(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。トップの日本テレビにわずか0・2ポイント差にまで肉薄し、3位のTBSとは1・4ポイント、4位のフジテレビとは2・0ポイントもの大差をつけている。また、同年10月クール(10~12月)の全日帯は7・8%と、5年半ぶりに日テレから1位を奪取した。

 この好調ぶりを支えるのが、プライム帯(19~23時)放送のドラマ群だ。10月期の連ドラで全局1位の『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(10月クール平均15・8%)、2位の『相棒season17』(同15・5%)が大きく貢献、長寿ミステリー『科捜研の女』(同12・5%)も健闘している。

 だが肝心の業績は低迷が続く。減収減益を記録した19年3月期第3四半期(18年4~12月)は売上高、営業利益とも4位のまま。トップの日テレとは売上高で約902億円、営業利益で約234億円の大差をつけられ、視聴率の絶好調ぶりが業績に反映されない体質は一向に改善が進まない。

 とは言え、やはり視聴率ですべてが決まるのがテレビ局というものだ。あるテレ朝幹部は「万年4位の指定席を脱して、トップに肉薄する2位にまで押し上げた早河会長は昨今、卓越した経営者を自任するようになり、角南源五社長(62)ら側近のすり寄りぶりも一段と露骨になっている。開局60周年記念式典で早河会長を〝神格化〟する演出は、それを端的に物語っている」と話す。

 では、EXシアターの式典会場に戻ろう。シアター内の広いステージ上には客席から向かって上手前方に演台が据えられ、その壇上を丈の低いカラフルな花が覆う。演台後方にもピンク中心の豪華な花。ステージ後方の壁には巨大な横長のスクリーンが投影され、その両脇のブルー地に「60」の文字が浮かび上がる。

 司会進行役は視聴率好調の早朝の情報番組『グッド!モーニング』でMCを務める坪井直樹と松尾由美子。ともに早河お気入りのベテラン局アナウンサーだ。

 式典のメインイベントとなる早河の「開局60周年記念講演」に先立ち、ポップな衣装で統一した同局の若手女子アナたちが登場。テレ朝の社歌など複数の楽曲を歌いながら、軽快なダンスを披露した。これを見た参列者の一部からは「何だか北朝鮮の『喜び組』みたいだ」と失笑が漏れた。

 続いてステージ後方の巨大スクリーンに映し出されたのは、テレ朝60年の歴史を回顧するVTRだ。その中では『相棒』の水谷豊、『リーガルV』の米倉涼子、『科捜研の女』の沢口靖子、『TVタックル』のビートたけしなど、テレ朝の主要番組の主役を務める芸能人が次々と登場して祝辞を述べていく。

「早河会長、60周年おめでとうございます。今日の私があるのも、早河会長のお陰です」――。つまり、彼らが一様に賛美したのはテレ朝という会社ではなく、今も番組の主要出演者に関する最終決定権を握り続ける早河個人だったのだ。これを見てドン引きしたという若手社員が嘆く。

「いくら会長とはいえ、一個人をそこまで神格化して見せるのは、普通の会社でも異常。『これほど個人崇拝の会社だったとは......。この会社にいても大丈夫なのか』と、先行きが不安になりました」

北朝鮮の最高人民会議か

 さて、いよいよ式典のメインイベント、早河の講話が始まる。仕立ての良いスーツに白いシャツ、薄いグリーンのネクタイ姿。英国の作曲家エルガーの有名曲『威風堂々』が流れる中、スポットライトを浴びながら赤絨毯の上を颯爽と歩いて登場した早河は、テレ朝が出資する「新日本プロレスリング」のスター選手と見紛うばかりの迫力である。

 花に覆われた演台にセットされた椅子に着席し、進行役から「社員の総意として、会長の話を承ります」などと持ち上げられた早河は、A4の紙27枚に大きめの文字サイズで印刷された約1万1千字の講話を読み上げていった。テレ朝の開局式典にもかかわらず、ステージ上にいるのは早河ただ一人。完全なるワンマンショーだ。

 講話の内容は、文字やグラフとなって巨大スクリーン上に逐一投影されていく。スクリーンにはそれだけでなく、読み上げる早河の表情のアップや、長年低迷を続けた視聴率を2位にまで引き上げた「我らがヒーロー」のお話を有難く拝聴している参列者の姿まで、折に触れて映し出された。巨大なアリーナで行われるコンサートさながらの映像演出は、さすが本職のテレビ局のスタッフである。

 参列したある中堅幹部は「早河会長は北朝鮮の最高人民会議の金正恩(朝鮮労働党委員長)、もしくは中国の全国人民代表大会(全人代)の習近平(国家主席)にしか見えなかった。演出の担当者は、会長を新興宗教の教祖とでも見せかけようと考えたのかも知れません」と苦笑する。

 そして講話冒頭で早河が語った若き日の回想はいみじくも、85年10月の『ニュースステーション』(Nステ)の放送開始以来、「権力に物申すテレビ局」と認識されてきたテレ朝の現状と未来を示唆するものだった。関連個所をほぼ原文のまま引用しよう。

「私自身がテレビを志したのは大学時代に放送研究会に所属し、ドラマの脚本を勉強したのが大きなきっかけです。2年の時、初めて書いた脚本が20大学のドラマコンクールで、今で言えば橋田寿賀子さんのような大御所審査員に〝脚本はこれが一番〟と褒められ、学業成績が悪かったこともありまして、テレビを選択したわけです」「入社前にアルバイトをしていた日本テレビで、当時人気絶頂のエンターテインメント番組『シャボン玉ホリデー』を覗いたり、入社後は日本初のワイドショー『木島則夫モーニングショー』で働いたりと、若かりし頃のこの3種類の体験が後の私のテレビ人生に大きな影響を与え、番組をいろいろな角度から見られるようになり、テレビという世界の広がりや奥深さを学ぶことができた」

報道番組はワイドショーか?

 ここに早河というテレビ人の原点が凝縮されている。もともと脚本家志望だった早河はここで、自らが根っからのエンタメ志向であることを、巧まずして告白しているのである。Nステの初代局プロデューサーを務めたはずの早河が重視する報道番組の要素とは「ニュースとしての新鮮さ」や「ニュースの核心にどれだけ切り込めるか」などではなく、「表面的にいかに面白いか」に尽きている。

 換言すれば、早河にとっての報道番組とはニュースの本質をどう伝えるのかではなく、ワケ知り顔の評論家や芸能人らがニュースを材料に「ああでもない、こうでもない」と面白おかしく語り合うワイドショー路線のことなのだ。

「こんなエンタメ志向の早河会長が君臨し続けるテレ朝に、報道機関としての責任を期待したところで土台無理な話。だから昨今のテレ朝が批判を浴びている、安倍晋三・自民党政権に対するすり寄り姿勢にしても、早河会長にとって大した問題にはならないのです」(テレ朝報道局元幹部)

 早河の講話はこのあと(1)過去の悔恨を含むテレ朝の歴史、(2)自身が分析したテレビ離れの要因、(3)盟友のサイバーエージェント社長・藤田晋と協業する「AbemaTV」との緊密な連携の必要性―などとありきたりの内容に終始し、最後にこう結ばれた。
「60周年、還暦の本卦還りであり(中略)みんなで力を合わせ、新しい時代のテレビ朝日として生まれ変わりたい」

 この〝本卦還り〟が、エンタメ路線のさらなる追求を意味することは言を俟たないだろう。式典に続いて午後零時半からEXシアター2階の屋上庭園で開催された懇親パーティーでは、テレ朝社外取締役で東映グループ会長の岡田裕介の音頭で乾杯が行われたあと、ニュースでリポートする若き日の早河や角南らのVTRが流され、結婚式の披露宴さながらの盛り上がりを見せた。早河は一連の〝マンセー演出〟にすっかりご満悦だったという。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)

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記念式典で講演する早河会長の面持ち
(テレ朝社報「tv asahi press」19年5月号より)

開局60年の"本卦還り"のテレ朝を見舞ったのは、野獣の如きCPのセクハラ事件だった。そういえば、還暦は厄年でもある。

なお、テレ朝側は上記レポート掲載の「ZAITEN」19年5月号発売後に、早河会長と職員に対する人身攻撃ないしいわれなき誹謗中傷、式典での発言が事実と異なる、番組出演者のビデオメッセージは会社に向けられたもので、早河会長を賛美したものではないなどといった内容の「抗議文」を小誌編集部に寄せている。ちなみに、本編上にある早河会長の講演時の描写は、テレ朝社内で公開された映像に基づいている。