今号の本誌「企業倫理を問う!」では、ティファールの調理器具を取り上げた(101頁を参照)。
本来、企業の広報対応の問題を明らかにするのが本稿の目的だが、結論から言えば〝広報対応〟には何ら落ち度はなかった。それなのになぜ今回取り上げるかというと、本体であるティファールの日本法人「グループセブジャパン」本社の〝あきれた対応〟を指摘するためである。
取材を試みるべく、編集担当がグループセブジャパンの本社代表番号に架電したところ、数十回のコールののち、ようやく繋がった。そこから数秒の沈黙が流れ、社名を名乗ることなく〈はい〉と若い女性の声が聞こえてきた。
掛け違いかAI音声かと疑い、こちらから先方の社名を確認すると〈そうです〉と憮然と答えたのである。呆気に取られながらも取材概要と担当部署への取り次ぎを依頼するも、〈今から伝えるメールアドレスに送ってもらえれば対応します〉と抑揚のない声で返答するのみ。担当部署の連絡先を訊ねれば〈それはお伝えできません〉、さらに念のために電話口の方のお名前をと訊ねても〈いいです。お答えできません〉といった調子である。やり取りの間中、溜息交じりに返答する先方担当者であった。
......続きはZAITEN5月号で。
本誌今月号では、レゾナックホールディングスの髙橋秀仁社長の経営手腕を問う内容を報じた(詳細は38頁を参照)。
同社に対して事実確認等の取材を行うため、プレスリリースに記載されていた「ブランド・コミュニケーション部広報グループ」に問い合わせた。 同グループの直通番号に何度も架電したが、応答なしが続いたのち、ようやく繋がった。取材のために質問状を送付したい旨を伝えると、
〈担当者から折り返すので連絡先を教えてほしい〉と返答された。こちらの連絡先を伝えたものの、担当者からの折り返しはなかった。 数日後、再度架電し、まだ担当者からの連絡がない旨を伝えた。この時、締切のスケジュールもあるので、当日あるいは翌日までに連絡が欲しいと伝えたが、
〈その旨も含めて担当者に伝える〉と答えるのみ。担当者に直接取り次いでもらえないかと尋ねても、〈1度こちらから担当者が折り返す〉の一点張りで、結局、担当者からの折り返しの連絡はなかった。
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2024年11月、大正製薬がサプリメントの広告においてステルスマーケティングを行ったとして、景品表示法違反で消費者庁から再発防止などを命じる措置命令を受けた。 そんな大正製薬の広告について、読者からメールが届いた。
〈大正製薬の女性用発毛剤「リアップリジェンヌ」の新聞広告に違和感を覚えました。
紙面には大きく、「お買い求めは、お近くの薬局・ドラッグストア・オンラインショップで」とあり、サイトへ誘導するURLもすぐ隣にあります。しかし、同じ広告内に薬剤師から説明を受けるようにとも書いてあります。
薬剤師に直接相談するなど、説明が必要な商品をネットで購入しても大丈夫なのでしょうか。この広告を見て混乱しています〉(読者のメールより)
重要な参考意見
リアップリジェンヌは第一類医薬品に分類され、薬剤師による情報提供が必須となる医薬品だ。以前は薬局などで対面による販売のみ許されていたが、14年に改正薬事法が施行され、ネットでも販売できるようになった。
大正製薬に対して、「リアップリジェンヌの広告で、薬剤師からの説明が必要と記載があるにもかかわらず、ネットでの購入を勧めるのは誤解や混乱を招くのではないか」と質すと、次のような回答が届いた。
〈ネット販売に関しましては、対面での販売と同様の情報提供ができるように、
①購入前に薬剤師による問診、
②購入者への個別の情報提供、
③提供された情報をご理解されているかの確認、
④薬剤師による販売の可否の判断を必須とした仕組みを導入しております。 例えば、大手オンラインストアでは、上記のような仕組みにて購入者の状態を確認し、薬剤師が、適正使用が可能と判断した場合にのみに商品を発送するシステムを採用しています。 しかしながら、今回のご指摘のようなお客様のお声があることを真摯に受け止め、情報発信や適切な広告掲載の方法を検討してまいります〉
対面での販売と同様の仕組みがあると言っているが、今回の広告のように言葉足らずで、不安を覚える消費者もいる。
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重いものを自宅まで届けてくれたり、買い物へ行く手間を省けるなどのメリットがある食材宅配サービス。こだわりの有機野菜を扱っていたり、プロ監修のミールキットを売りにしている企業もあり、老若男女問わず、利用者が増えている。
そんな中、食材宅配サービス大手の「Oisix」について読者からメールが届いた。
〈数年前にOisixを利用しました。味やサービスの不満は特にありませんでしたが、しばらく利用していませんでした。
最近、Oisixから電話があったのですが、その内容が消費者を〝ひっかける〟ような語り口でひどかったです。
電話口の担当者は、開口一番、「〝無料〟キャンペーンのご案内」と言い、終始、無料を強調するので購入することにしました。
しかし、電話後に送られてきたメールの明細を見ると、無料になったのは牛乳だけでした。商品発送前なら注文品は変更できるので、結局、送料無料が適用される金額くらいまで減らして注文をしました。
牛乳単品で注文すると、それと同額以上の送料を請求されるので無料にはなりません。それなら「牛乳無料キャンペーン」とか「デイリー品無料キャンペーン」などと言うべきではないでしょうか。利用者をひっかけるような営業電話で不誠実です。なんだか騙されたような気分です〉(読者のメールより)
当社の責任
Oisixは、東証プライム市場に上場しているオイシックス・ラ・大地が運営している。
Oisixと言えば、2022年1月に大規模な物流トラブルを起こしたことが記憶に新しい。注文キャンセルや遅配、欠品などが生じ、約11万人の顧客に影響が及んだ。トラブルに関する問い合わせは7000件を超え、決算説明会で同社の高島宏平社長が謝罪する事態にまで発展した。
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世界150カ国以上で調理器具や小型家電を販売するトップメーカー、グループセブ。そんなグローバル企業が取り扱うブランドが「ティファール」だ。ティファールといえば、鍋やフライパンが定番だが、電気ケトルや電気圧力鍋、アイロンなども人気がある。そんなティファールの商品について、読者からメールが届いた。
〈先日、ティファールの鍋を購入しました。その鍋ぶたにシールが貼付されていて、「このステッカーは、はがさずにお使いください」と記載されているのですが、特別強い力を入れてゴシゴシ洗っているわけでもないのに、洗うたびにボロボロはがれてきます。こんなに簡単にはがれてしまうのに「はがさずに......」という文言は理解できません。数回洗っただけなのに「ナビダイヤル」の番号もすでに読み取れません〉(読者のメールより)
編集部でステッカーの強度を確認したところ、読者が指摘する通り、ステッカーとは名ばかりで脆弱なシールといった代物だった。 そこで、ティファールPR事務局に読者の声をもとに、以下3点を質した。
①今回と同様の問い合わせやクレームを受けたことはあるか?
②ステッカーに防水加工などされていないが、耐久テストなどはしているのか?
③ステッカーを鍋ぶたに貼る理由は?
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『紙の月』(2014年 吉田大八監督)
『バンク・ジョブ』(2008年 ロジャー・ドナルドソン監督)
『紙の月』は1973年の滋賀銀行事件、81年の三和銀行事件など複数の横領事件を元にした角田光代の小説が原作です。ヒロイン役は宮沢りえ。三菱UFJ銀行貸金庫事件の山崎(旧姓今村)由香里容疑者は、逮捕前に和久井映見似と報道されていましたが、どうでしょう......映画化されたら長澤まさみあたりがキャスティングされそうです。映像化ってそんなものですよね。『バンク・ジョブ』もまた、ロンドンで実際にあった事件(71年のベイカーストリート強盗事件)の映画化で、こちらは貸金庫までトンネルを掘って直接金品を強奪するというクラシックな荒業。貸金庫のトラブルを何年も隠していたみずほフィナンシャルグループの木原正裕社長に犯人役に扮してもらいましょう。やはりクラシックな泥棒スタイルで。
澤井健(さわい・けん)イラストレーター。漫画家。現在、週刊文春『言霊U.S.A.』でイラスト担当、月刊映画秘宝でイラスト、コラムを連載中。2018年9月、コミック『イオナ』電子版が文藝春秋から復刻
国内化学メーカーの名門、レゾナック・ホールディングス(HD)が一大勝負へと動き出した。基幹事業である石油化学(石化)事業を切り出し、2026年末から27年初めにかけての上場を目指すというのだ。すべてはインタビュー取材時での服装から「Gパン」、「タートルネック」と業界内であだ名されている髙橋秀仁社長が描く、レゾナックHDを半導体材料会社へと生まれ変わらせる構想のためだ。しかし、国内石化事業の先行きは暗く、「単独で生き残っていけると本気で考えているのか」、「そもそも上場して誰が株を買うのか」と業界関係者から疑問の声が渦巻いている。 「25年1月からクラサスケミカルは独立した企業体として新社長の下で事業を進めていく」
これは、今年2月13日のレゾナックHDの決算説明会での髙橋社長の発言だ。
クラサスは、レゾナックHDの石化事業を切り出し、設立した新会社。大分市沿岸部にある大分コンビナートを拠点とする。約900人の社員を抱え、24年の売上高は3298億円、営業利益85億円に達する。「ナフサクラッカー」という多くの化学品の原料となるエチレンの生産設備を九州で唯一持ち、大分コンビナートの中核となっている。余談だが、元AKB48の指原莉乃の父親が働いていたのは知る人ぞ知る話だ。
レゾナックという社名は聞きなれないかもしれないが、昭和電工と言えばピンと来る人も多いだろう。昭和電工は、23年1月、同じく国内化学メーカーの名門で買収した日立化成を前身とする昭和電工マテリアルズと合併し、レゾナックHDに社名を変えた。「化学の力で社会を変える」を理念に、世界トップレベルの機能性化学メーカーになることを狙う。機能性化学とは付加価値の高い特徴ある化学品を指す。髙橋社長は、昭和電工や日立化成が擁する半導体材料に着目し、そこを徹底的に伸ばすことで世界に羽ばたこうとしているというわけだ。
強引な事業切り出し
ここで〝邪魔〟になるのが、半導体材料以外のさまざまな事業。高収益な機能性化学メーカーになるためには、採算性が低く、半導体とは関係ない事業は「不要だという態度を露骨に示しているのです」と昭和電工OBは語る。その象徴となるのが石化事業の分離なのだ。
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今年3月3日14時、雨の降る東京地方裁判所で1つの民事訴訟が幕を開けた。 開かれたのは中堅製薬企業Meiji Seika ファルマ(Meiji)が名誉毀損で立憲民主党の原口一博衆議院議員を訴えるという前代未聞の裁判。この日の第1回口頭弁論には、Meijiの代理人弁護士だけ出席し、被告となる原口代議士やその代理人弁護士らは姿を見せず、報道によればあっさり閉廷したという。 この裁判で、Meijiが名誉毀損だと主張しているのは、
①同社を旧日本陸軍で人体実験を行ったとされる731部隊になぞらえたこと
②同社の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン「コスタイベ」の承認審査過程が公正ではないと訴えていること
③コスタイベが生物兵器だとしていること
④コスタイベの承認審査で必要となる治験を人体実験とみなしていることの4点。
いずれも原口代議士がSNSなどを通じて発信し、同社やコスタイベの評判を落とし、影響が生じているとした。
「意見や論評の範疇を超える」
昨年12月の会見でMeijiの小林大吉郎社長は、この4点を挙げ、提訴を決めた理由をこう説明した。原告側代理人を務める三浦法律事務所の松田誠司弁護士によると、原口代議士の一連の発言で受けた損害は「55億7120万円を下回らない」という。ただ、「金銭が目的ではない」(小林社長)として、賠償額は1000万円に止めたとしている。
受けて立つ原口代議士も1歩も引く気はない様子だ。2月25日に会見し、「徹底的に闘っていく」と宣言した。Meijiの示した4点は「ほとんど私の言ったところとは関係ない」などと語気を強め、「疑問を封じ、言葉を封じている」とボルテージを上げた。
シェア1%未満疑惑
早くも泥仕合の様相を呈しつつあるMeijiと原口代議士の訴訟。どちらの主張に分があるかは、遠からず決着することだろう。 ただ、原口代議士の一連の言動がどこまで影響を与えたかは分からないが、コスタイベが市場で受け入れられていないのは厳然たる事実だ。
親会社である明治ホールディングス(HD)が今年2月に発表した2025年第3四半期決算によると、ワクチン・動物薬事業は25億円の営業損失。コスタイベの評価減などが響いたためで、46億円の営業利益としていた通期見通しも12億円の営業損失になると下方修正した。インフルエンザワクチンの出荷が前年同期比では大幅増となっていることを考慮すると、いかにコスタイベが足を引っ張っているかが分かる。
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89歳6カ月のワンマン経営者が君臨するキヤノン。かねて会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)と首脳ポストを独占する御手洗冨士夫の老害ぶりが問題視されてきたが、ついに馬脚を現した。2024年12月期の業績が急失速。最大の要因は9年前に巨額を投じ、買収した医療機器子会社を中心にした1651億円の減損損失計上である。社内には「いい加減に退いてほしい」と怨嗟の声が渦巻くが、本人に辞める気はなく、このままでは9月に前代未聞の〝90歳のCEO〟が誕生する。
急落する株価に自社株買い
東証市場で「キヤノン・ショック」が起きたのは1月31日。引き金は前日30日に公表した24年12月期決算だった。 「新型コロナウイルスが一段落した23〜24年に中国の景気悪化や日本の医療機関の経営が悪くなった」。オンライン説明会で同社副社長兼最高財務責任者(CFO)の田中稔三(84)はこう語り決算の悪材料を開示した。16年に東芝から買収した子会社キヤノンメディカルシステムズ(旧東芝メディカルシステムズ、買収総額6655億円)などメディカル事業を巡る「のれん代」の減損損失1651億円の計上である。その結果、当初は前期比23%増の3250億円を見込んでいた同社全体の純損益が、一転して同40%減の1600億円へ大幅に減少した。
市場の衝撃を和らげるためか、今期(25年12月期)の純損益が3640億円(24年12月期比2・3倍)に急回復することに加え、最大1000億円の自社株買いを実施することも発表。翌31日の東証でキヤノン株(30日終値は5070円)は取引開始直後に値を上げたものの、投資家が反転増益や株主還元策など目先の弥縫策に惑わされたのはそこまでだった。
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外国債券の運用に失敗し、2025年3月期に1兆9000億円もの最終赤字を見込む農林中央金庫。かねて「A級戦犯」と批判されてきた理事長の奥和登(1983年入庫)は2月下旬になって、ようやく3月末で引責辞任すると発表した。
記者会見では、含み損を抱えた債券(約12兆8000億円)の売却によるポートフォリオの入れ替えが完了し、26年3月期には300億~700億円程度の黒字に転換する見通しが立ったと説明。全国の農業協同組合(JA)グループからの約1兆4000億円の資本増強支援にもメドがついたことを挙げて、「職責を全うできれば経営責任を明確化しようと考えていた」などと嘯いた。
だが、奥が最初に赤字決算見通しを公表した昨春以降、理事長のイスを何とか死守しようと保身に汲々としてきた姿は「誰もが知るところ」(元役員)だ。しかも、後任理事長には「奥のイエスマン」と後ろ指をさされてきた常務執行役員・最高財務責任者(CFO)の北林太郎(94年入庫)が就くというから呆れかえるばかりだ。
財務を管理できず、過去最大の赤字決算を許したCFOは、本来、トップの奥とともに真っ先にクビが飛んで当然のはずだ。しかも社内で「単なる経理屋」(中堅幹部)と揶揄されてきた北林には、組織を統率する求心力や、何かと経営に介入してくる農協の中央組織JA全中や自民党の農林族議員と渡り合えるような器量も期待できない。畢竟、引責辞任したはずの奥が「アドバイス」などと称してしゃしゃり出て、北林を思い通りに操る〝院政支配〟が展開されることは想像に難くない。巨額赤字の尻拭いをさせられたJA関係者から「お為ごかしもいいところだ」と憤懣やるかたない声が漏れるのも、むべなるかなだ。
組織ぐるみの過小開示
「巨額含み損を抱えた3年前から退任を考えてきた」 奥が記者会見でこんな戯言を口にすると、詰めかけたマスコミの記者の間で失笑が漏れた。言っていることとやってきたことは、あまりにもかけ離れているからだ。というのも、18年に理事長に就任した奥は昨年5月時点で2期目(1期3年)の任期を迎えていた。その時点で25年3月期の赤字転落が不可避の見通しだったこともあり、政治サイドや農林水産省、JAグループからは奥の任期満了による退任と経営刷新を求める声が出ていた。
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