ZAITEN2021年09月号
多様性か、お飾りか――その能力からカネまで緊急調査
【特集】緊急調査「女性社外取締役・監査役」224人リスト
カテゴリ:企業・経済
5社兼任する岡島悦子氏(写真は公式サイトより)
経営の監督機能を担い、コーポレートガバナンス(企業統治)強化の柱と期待されるのが社外取締役である。近年、「お上」の大号令や市場の要請を背景に、企業の間で社外取の争奪戦が激化している。中でも、〝売れっ子〟が女性だ。外面を重視する企業にとっては、「お化粧」代わりのありがたい存在でもある。経営に通じた女性人材の不足で、一人で複数の企業の社外取を掛け持つ女性も目立つ。その稼ぎっぷりも相俟って、さながら「マダム社外取」バブルの様相を呈している。
孫正義をして言わしめた「女性枠」の存在
本誌特集班は、主に上場企業の2020年度役員人事における「マダム社外取」の実情を集計した。「日経平均株価」採用銘柄を中心に女性社外取および監査役を抽出、さらにその女性役員の兼務状況を調査した結果、対象企業の女性社外取・監査役は計224人。うち2社以上の企業を兼任した女性は159人に上った。
人材コンサルタントの岡島悦子(55)と、公認会計士の安田加奈(52)の2人が最多の5社でトップとなった。そしてメリルリンチ日本証券(現BofA証券)元社長の小林いずみ(62)、元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃(49)ら21人が4社で続いた。
彼女らの経歴は、大きく3つに分類できる。ひとつが、弁護士や会計士などいわゆる「士業」である。法的な面など専門性の高い助言が得られる点が企業から重宝されている。官僚出身もこれに加わる。女性社外取は厚生労働省出身が目立つ。女性初の事務次官を務めた村木厚子(65)は伊藤忠商事など3社、男女雇用機会均等法の制定に関わった元局長、岩田喜美枝(74)も味の素など3社の社外取を兼ねた。
次に、コンサルタントやビジネスの経験を持つ女性である。兼任が最も多かった岡島や、それに続く小林もこれに該当する。外資系でキャリアを積んだ人材が目立つのも特徴である。みずほフィナンシャルグループで取締役会議長に招かれた小林は25頁の別稿で後述するとして、外資系投資銀行でキャリアを積んだ一橋大特任教授の江川雅子(64)は三井物産や三井不動産、東京海上ホールディングスの計3社の社外取を務める。
小林や江川らがいわゆる名門企業であるのに対し、兼務トップの岡島はクラウド会計ソフトのマネーフォワードなどスタートアップが多く、"新種"の類と言える。
......続きは「ZAITEN」9月号で。