番組の最高責任者が、番組出演の女性アナウンサーに"キスセクハラ"の狼藉を働く――。こんな前代未聞の汚辱に塗れたテレビ朝日の看板報道番組「報道ステーション」。下手人の最高責任者、桐永洋氏はすでにチーフプロデューサー(CP)の職を解かれ、BS朝日に追われることになったというが、本来なら「懲戒解雇」レベルの不祥事との指摘も聞かれる。
そんな桐永氏の報ステCPとしての不適格性を小誌「ZAITEN」は再三にわたって指摘してきたが、その核心のひとつは前身の「ニュースステーション」以来続く老舗報道番組のワイドショー化を推し進めてきたことに他ならない。そして、その軽薄路線を桐永CPのもとで彩ってきたのが、昨年10月のリニューアルから事実上のメインキャスターを務める元テレ朝局アナの徳永有美である。
ご承知の通り、お笑いタレント内村光良との"不倫結婚"の過去を持つ徳永アナ。報道番組MCの適格性には当初より疑問符が付されてきた。"不倫アナ"をMCに据え、果てはCP本人の"凶悪セクハラ"......桐永報ステの末路は、早い段階で運命づけられていたようだ。
そこで今回は、前回ブログ上で公開した「ZAITEN」19年3月号(同2月1日発売)掲載の《テレ朝「報ステ」破滅へのバンザイ三唱》の前段レポートとなる19年1月号(18年12月1日発売)の《テレ朝「報ステ」徳永アナに視聴者の罵声 》(ジャーナリスト・濱田博和氏寄稿)を以下に無料公開したい。
なお、下記URLの通り、小誌ブログではテレ朝関連記事を無料公開しています。こちらもぜひともご覧ください。
・【9月4日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(1)
・【9月5日公開】
テレビ朝日・報道ステーション"キスセクハラ"プロデューサーの素顔(2)
(写真は19年1月号掲載記事より。左上が早河洋会長、下中央円内が桐永CP、右上が徳永アナ)
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10月19日朝、前日の視聴率一覧表を見ていたテレビ朝日幹部の表情が険しくなった。米倉涼子主演ドラマの新シリーズ『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』第2回の視聴率が18・1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)と、前回を3・1ポイント上回る好調を示したのに対し、これを受けて始まった看板報道番組『報道ステーション』は9・6%。何と1ケタ台に急落していたのだ。
報ステの前枠の『相棒』(水曜日21時)と『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(およびその後継番組の『リーガルV』、木曜日21時)は、常に15~20%の高視聴率を稼ぐドル箱番組。視聴率は前枠の番組に引っ張られるので、この2番組の放送期間中の水曜と木曜の報ステは、自ずと視聴率の〝発射台〟が高くなる。テレ朝編成局関係者が語る。
「水曜と木曜の報ステの視聴率は硬派なニュースを取り上げても他の曜日より高くなり、悪くても12~13%台は当たり前でした。18日は通常より15分遅れで始まったとはいえ、それでも8・5ポイントも急落した上に最終的に1ケタ台とは前代未聞。極めて深刻な事態です。新体制になった報ステに嫌気が差した視聴者が逃げ出しているとしか考えられません」
テレ朝の〝ドン〟と称される会長兼CEO(最高経営責任者)の早河洋(74)の肝煎りで元テレ朝アナの徳永有美(43)を事実上のメインキャスターに迎え、10月から新たなスタートを切った報ステ。チーフプロデューサー(CP)には朝のワイドショー『グッド!モーニング』(GM)のCPとして視聴率引き上げを達成した桐永洋(48)が抜擢され、番組もスタジオ演出重視のワイドショータッチに大きく変貌した。
お笑いタレント内村光良との不倫騒動の果てに退社した徳永が13年ぶりにキャスターに復帰するという話題性の高さから、初日の10月1日の視聴率は11・4%と、前週末から1ポイント上昇した。しかしその後はしばしば10%を割り込むようになり、8%台の日さえある体たらく。桐永が6月までCPを務めたGMにさえ負けている。徳永を始めキャスターの顔触れをリフレッシュしたにもかかわらず、10月の平均視聴率は10・4%と、前月の10・5%からむしろ0・1ポイント下落した。
水曜日の『相棒season17』、木曜日の『リーガルV』を受けた報ステの視聴率をもう少し追ってみよう。相棒初回の10月17日は17・1%を受けて10・1%(開始は30分遅れ)、第2回の同月24日は17・9%を受けて10・4%(同15分遅れ)。リーガルV初回の10月11日は15・0%を受けて10・3%(同15分遅れ)。いずれもぎりぎり2ケタで踏みとどまるのが精一杯で、リーガルV第2回の10月18日は前述した通りの惨状だ。
その一方で相棒第3回(15・6%)を受けた10月31日は14・0%と高水準、リーガルV第4回が放送されるはずだった11月1日は15・4%と新体制下で初めて15%を突破した。
だがこれには裏があった。10月31日は相棒の高視聴率を受けて始まり、番組中で東京・渋谷のハロウィーン騒動を取り上げ、さらに『世界体操ドーハ2018』の生中継を後番組に控えて番組自体が30分の短縮版で終わったため。また11月1日はテレ朝が中継したプロ野球日本シリーズ第5戦が延長にもつれ込み、リーガルVの全時間帯と報ステのほぼ全ての時間帯が日本シリーズ中継に充てられた。他人の褌で相撲を取った格好だ。
つまり、新体制の報ステは何らかの特殊要因でもない限り、2ケタの視聴率を維持することさえ覚束ない事態になっているのだ。
「不倫で辞めた人なぜ起用?」
新体制の報ステの視聴率が低迷している大きな要因の一つが、事実上のメインキャスター徳永に向けられた視聴者の嫌悪感である。
徳永は2003年4月に内村との不倫騒動が表面化し、担当番組を軒並み降板したが、翌年4月の報ステスタートと同時に同番組のスポーツ担当キャスターに就任した。この人事の背景には早河のプッシュがあったとされる。だが最終的には内村との再婚を選び、05年4月にテレ朝を退社。〝セレブ〟にのし上がった内村の妻として主婦業に専念しており、17年1月からはAbemaTVの「AbemaNewsチャンネル」で『けやきヒルズ』のキャスターを務めていたものの、セレブ主婦の余技としか見られていなかった。
それだけにキャスター本格復帰が伝えられると、当時のキャスターで権力者に厳しい視線を向ける小川彩佳(33)の降板を惜しむ声が上がり、徳永の〝前科〟は週刊誌などで大々的に蒸し返された。
そして実際に徳永が画面に登場した10月になると、テレ朝に電話やメールで寄せられる視聴者からの「徳永辞めろコール」は途絶えることなく、メインの位置に座る徳永を視聴者が見慣れたはずの月末になって却って増加している。そのごく一部を紹介しよう。
〈いろいろ問題を起こした人をなぜ今ごろ使うのか、経緯が知りたい。常識として考えられない。何か裏があるのか。今までテレ朝が好きで見ていたが、もう見るのを止める〉(40代女性)
〈華もない、頭も良くない。不倫した人がなぜ帰ってきたのか不思議。普通の会社ではありえない。もう見ないわ〉(60代女性)
〈不倫して辞めた人がなぜ戻って来られるのか。(他人の)不倫のニュースがあったら、どう報道するの?〉(60代女性)
〈こんなお騒がせ女、番組から降ろせ。女子アナは他にいくらでもいる。このところ報ステそのものの評価が落ちている〉(60代男性)
〈何か落ち着かない。受け答えも雑で喋り過ぎる。年増感が出過ぎている。もう報ステが見たくなくなった〉(60代男性)
〈バラエティーのような雰囲気を醸し出す徳永アナにはがっかり。年齢の割には落ち着きがなく、代わった方がよい〉(60代男性)
〈「自分が一番」と勝ち誇ったような顔を見ていると引っぱたきたくなる。ニュースステーションの頃から見続けてきたが、あの人が出るのなら見るのは止める〉(60代女性)
〈流儀も笑い方も化粧も古く見苦しい。あんなポンコツ、誰が選んだのか。もうテレ朝を見るのは止める〉(50代女性)
〈小川さんは一生懸命でまあまあだと思っていたが、徳永さんはただの主婦が出ている感じ。起用の意味が全く分からない。もう少し政治に詳しい人にしてほしい〉(70代女性)
いかがだろう。不倫アナ徳永に対する視聴者の見方はかくも厳しいのだ。しかも、逆に彼女を評価する意見は滅多に聞かれない。社長の角南源五(62)は10月30日の定例会見で「始まって間もないのでぎこちない面があるかも知れないが、徳永キャスター、竹内由恵アナウンサー(32)が加わったことでスタジオが明るくなり、親しみやすい雰囲気も出てきたのではないか」などと能天気に語ったが、早くも同日午後には、この発言に対する疑問の声が寄せられた。
〈社長が定例会見で徳永さんを良い方に捉えて発言したようだが、視聴者の意見は一切取り入れないのか? 業界の中だけでものを見ているから視聴者とのズレが生じる。徳永さんは感じが良くない。何だか会長がこの人に相当入れ込んでいて、AbemaTVにも会長が推して出していたとか。そのうち変な噂も出かねない。春頃には他の局アナに変えてあげてはどうか〉(60代女性)
またしても徳永をキャスターに捻じ込んだとされる早河は、この意見をどんな思いで読んだことだろう。
時代錯誤の「亭主関白」礼讃
実はキャスター復帰が発表された段階から、テレ朝関係者の間で囁かれていた徳永の致命的欠陥がある。10月29日の朝日新聞朝刊で劇作家・演出家の永井愛も指摘した「問題意識の欠如」。それは新体制2日目の10月2日に早くも明らかになった。
18年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京大特別教授の本庶佑がこの日、妻の滋子同伴で記者会見。「サイエンスは未来への投資。今儲かっているところにさらにお金を注ぎ込んでいては他国に遅れを取る。システマティックかつ長期的な展望で基礎研究をサポートしてほしい」と、近視眼的な日本の助成政策を鋭く批判した。これを受けて報ステも、本庶の問題提起に力点を置いたVTRを制作する方向で動いていた。
ところが夕方の打ち合わせの段階で徳永が発した一言で、事態が一変する。主婦目線が売り物の徳永は、滋子が会見で「主人を支える側に回り、ノーベル賞を受賞できて大変嬉しい」と語ったことに反応、「奥さんの言葉が良かったですね」と発言した。するとCPの桐永はあっさりと徳永に同意。「奥さんの話でやれ」と、スタッフに方向転換を指示したのだ。
その結果、スタジオでのキャスター間のやり取りやVTRの力点は本庶が示した重要な問題提起から離れ、「僕は、典型的な亭主関白として研究に邁進してきた」という本庶のコメントを加えたワイドショー風味に様変わりした。
納まらないのは「亭主関白バンザイ」という時代錯誤の報道を見せられた女性スタッフの面々だ。桐永は放送終了後の反省会で「なぜあんな気持ちの悪いタッチになるのか?」と厳しく追及された。
報ステスタッフは「本庶さんの会見は今の政府のやり方の問題を的確に指摘していたのに、それが全く伝わらなかった。元はと言えば、時代錯誤で能天気な徳永さんの発言がきっかけなのです」と憤りを隠さない。
幸せな〝セレブ妻〟の限界
徳永の問題意識の欠如は、10月30日の放送でも露見した。石井啓一国土交通相はこの日、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設を巡り、県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回処分の効力を一時停止すると発表した。これを受けて岩屋毅防衛相が工事再開の意向を表明したため、玉城デニー県知事は「自作自演の極めて不当な決定」と批判。第三者機関の国地方係争処理委員会に審査を申し出る考えを明らかにした。
報ステもこのニュースを取り上げ、元共同通信社編集局長でコメンテーターの後藤謙次は「ソフトランディングで行くべきという意見も政府内にある。政府側もぜひ話し合いのテーブルに着くと。民主主義の原点に立ち返ることが大切」と、安倍晋三政権の性急で一方的な対応に苦言を呈した。
ところがこれを受けた徳永は、首を傾げながら「でも、話し合いといっても、なかなか本当......難しいですよねえ」と、あたかも「もはや話し合っても無意味」とさえ受け取れる言葉を口にした。翌日にはすぐさま70代男性から怒りの声がテレ朝に寄せられた。
〈全く不適切な発言で、「沖縄(県民)はもう諦めろ」と言っているに等しい。沖縄の民意を理解しようとしていない気持ちの表れで、理不尽で強圧的な国の対応を是認するもの。これこそ安倍政権の思うツボで、前任者の小川さんならこんな発言は絶対にしなかった〉
あるテレ朝元幹部は「この意見は全くの正論ですが、そもそも局アナ時代にスポーツやバラエティー番組しか担当した経験がなく、取材でも的外れの質問をすることで有名だった徳永に、沖縄の現状を理解しろと要求すること自体、土台無理な話です。しかも彼女は今、大ブレイクしたお笑いタレントの幸福なセレブ夫人。一般市民の感覚など持ち合わせてはいません」と分析し、次のように語る。
「早河会長には徳永に執着する何か特別な理由でもあるのでしょう。だが、看板報道番組のメインキャスターなど、彼女には明らかに荷が重すぎる。完全な人選ミスです。次の改編期にでも交代させないと、報ステの視聴率に悪影響を及ぼすだけです」
テニスのラリー見守る観客
ところで10月からの報ステでは、それまでメインキャスターとして中央に座っていた富川悠太(42)が画面向かって下手のサブキャスターの位置に移り、復帰した徳永が中央に座っている。これに関して表向きは「どちらがメインというわけではなく同格扱い」と説明されたが、実際には富川がスタジオに設置された大型ボードやフリップの扱いなど〝汗を掻く役回り〟を担当し、徳永は着席してニュースの受けコメントや番組進行を担う。やはり事実上のメインは徳永なのである。桐永はこれを「天真爛漫な姉さん女房をしっかり者で働き者の旦那が支えるイメージ」と表現した。
だが、テレビウォッチャーの吉田潮は『女性セブン』11月1日号掲載の記事中で、この徳永の状態を「真ん中に座って、首を振りながら両隣の富川キャスターとコメンテーターの会話を聞く姿は、テニスのラリーを見守る観客のよう」と揶揄している。メインキャスターとしての徳永がいかに非力かを射抜いた絶妙な表現だ。
テレ朝の10月(1~28日)の月間平均視聴率は全日(6~0時)で7・7%を記録、13年6月以来5年4カ月ぶりの単独首位となった。ただ、19~22時のゴールデンタイムと、報ステを含む19~23時のプライムタイムは首位の日テレに及ばず、社長の角南は「まだかなりの差がある」との認識を示した。
報ステの視聴率低迷の原因が徳永から醸し出される軽薄さ、さらにはCPの桐永が推し進めるワイドショー化にあることは明らかだ。しかし、この二人を任命したのが〝ドン〟早河であるのは言うまでもない。あるいは早河は、報ステの迷走を機に、この枠をドラマやバラエティーに替えてしまおうという〝ハラ〟でも持ち合わせているのだろうか。(敬称略。年齢等の表記は発売当時のまま)
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テレ朝・報ステには目下、不倫アナに引き続き、セクハラCPへの罵詈雑言が寄せられているに違いない。ちなみに、テレ朝側は本記事には何ら抗議等を寄せなかった。