【月刊ゴルフ場批評31】
「程ヶ谷カントリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
早速だが、第1回(1927年)の日本オープンゴルフ選手権競技開催コースをご存じだろうか。答えは戦前から存在する超名門のひとつ「程ヶ谷カントリー倶楽部」。現在のコースは67年に移転・新設された新コースだが、とにかく由緒正しいコースだけあって運営の厳格さでも知られている。
何しろ公式サイトの〈ご来場者へのお願い〉には〈伝統の雰囲気を保つために、来場者皆様の服装・着こなし・立ち居振る舞いは重要な要素と考えており......〉と書かれている。これはマナー教室でも行かねばならんぞ。
また、ジャケット着用はハウス入退場時だけでなく昼食時でも必須(夏場を除く)。もちろん、「機能性アンダーウェアの袖出し」は不可で、携帯電話の使用も制限されている。
とにかく地味で目立たないコーディネートが無難と、プレー前夜に鏡の前で服装チェック。おかげで緊張して眠れず、当日は早めに出たことで渋滞に巻き込まれず到着。車を止めてハウスに向かおうとして、背筋に悪寒。
「ジャケットを忘れた......」
この日の朝は冷え込んでいたことから、思わずダウンジャケットを羽織って出発してしまった。よりによって程ヶ谷CCでやらかすとは。ダウンジャケットもジャケットだなんていう言い訳は通用しない。
恐る恐るフロントに向かう。
「いらっしゃいませ、こちらにサインを」
こりゃセーフかもとドキマギしながら署名し、素早く立ち去ろうとすると、「ジャケットはお忘れですか? 昼食時も必要になりますので、レストランでお借りください」。
やはり見逃してはくれない。門前払いを食らわなかっただけでもよしとしよう。
コースはクラシカルな2グリーンの丘陵タイプ。距離はそれほど長くはないが、重機を入れない時代の造成で、だらだら上りのパー5や、打ち下ろしてから急激に打ち上げるホールなど変化に富んでいる。ブラインドホールも多く、初見ならキャディのアドバイスが必須だ。
ただ、歴史のある名門コースには珍しく、左右の林はそれほど密集しておらず、どのホールも空が開けて開放感がある。名門ほど樹木の剪定に慎重になるものだが、ここはかなり思いきった感じだ。
バンカーやグリーン周りのラインも美しく、名門コースで流行の外国人シェーパーでも入れたのかと思ったほどだ。コースはまったく文句ない!
問題のランチタイムがやってきた。同伴プレーヤーはロッカーに上着を取りに行き、こちらはレストランで上着を借用。休憩はわずか30分しかないのに、わざわざ手間をひとつ増やす必要があるのかという疑問も湧く。暗めの照明と、やや突き放したようなスタッフの接客の中でカレーやサンドイッチなど少ない昼食メニューから選んだが、時間ばかりが気になり、何を食べたか覚えていないほどのバタバタ。せっかくコースを明るく開放的にしたのなら、運営もライトにしてみてもいいのでは。
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所在地 神奈川県横浜市旭区上川井町1324 ●TEL. 045-921-0115 ●開場 1922(大正11)年10月15日 ●設計者 赤星四郎 ●ヤーデージ 18ホール、6797ヤード、パー72