【月刊ゴルフ場批評33】
「ゴルフ倶楽部成田ハイツリー」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
GW前の営業自粛要請に俳優のゴルフ行動が大きく影響し、コロナ禍はゴルファーの肩身を狭くさせた。本誌が発売される頃には、少しは落ち着くことを祈り、とっておきのコース「ゴルフ倶楽部成田ハイツリー」を紹介しよう。
コース名の響きからしていかにも由緒正しそうな感じだが、なんてことはない。設立母体がプラスチック製造業の高木工業だったことから「高い木」で「ハイツリー」という語呂合わせだった。石橋家によって創られたブリヂストンとなんら変わりはない。
創設者の故・高木康夫氏は理想のクラブライフを追求し、当初は厳格なクラブ運営をしていたが、1998年に経営破綻。会員自らが運営する「匿名組合方式」によって再建され、現在に至っている。
いつ行っても印象的なのは、コース全体に広がる見事な植栽。手入れの行き届いたカイズカイブキを縫うようにして進む進入路から並のコースではないと感じる。
コース内には60種を越える庭園木が季節ごとに彩りを添えてくれる。ハウス周りはもちろん、ドライビングレンジへ向かう小径、次のホールへのインターバルまでコース全体が見事に「庭園美」で覆い尽くされている。
筆者はこのコースで「春モミジ」を覚えた。4月下旬、新緑の季節ながら、この新葉は黄色から葉先の赤色までのグラデーションが美しく、強烈に目に焼き付いている。
ただし、この美しさを優雅に堪能できるのはティアップまでの話だ。今日はインスタートだったが、いきなりの激しい左ドッグレッグ。フェアウエーセンターより少しでも左に打つと、左コーナーの樹々に阻まれて素直にセカンドショットが打てない。ショートアイアンで木越えのショットか、右サイドに刻んでいくか。
さらに、左コーナーにはバンカーも口を開けており、どうしてこんなに意地悪なスタートホールにしたのかと思わせるほどだ。
インほどではないが、アウトスタートも左ドッグで、「スタートホールは心穏やかにティオフできる、やさしいホールが理想だ」という〝帝王〟ジャック・ニクラスの言葉を明らかに無視している。
その後も池絡みや谷越えなど一筋縄ではいかないホールが続き、まったく気が抜けない。
美しい「庭園」を堪能したいという余裕は消え去り、自分のボールを追うことに精一杯になってしまう。
コースメンテナンスは申し分なく、グリーンもコーライ、ベントともにハイクオリティ。こういうコースはホント誤魔化しが利かず、実力が曝け出されてしまう。
最近では競技に使用される機会も増えて、さらにブラッシュアップされた感すらある。
もともと、「四季折々の自然をフラットな目線で楽しむ」というコンセプトからラウンジやレストランはハウスの1階部分に集約されていたが、一昨年に造られたウッドデッキによって、美しい「庭園」はさらに間近になった。
庭園木の美しさは、自粛明けゴルフにうってつけだが、サディスティックなコース攻略で憂鬱な気分にならないように。
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所在地 千葉県香取郡多古町大門659 ●TEL. 0479-75-1141 ●開場 1978(昭和53)年4月1日 ●設計者 石井朝夫 ●ヤーデージ 18ホール、7027ヤード(左グリーン)、パー72