安倍との同時退任説を退け〝歴代最長総裁〟を狙う――
コロナで安堵する「黒田日銀」に人事抗争
カテゴリ:企業・経済
新型コロナウイルスの感染拡大による経済混乱は企業や家計を苦しめる一方、政策当局者にとってはこれまでの失策を帳消しにできる好機となった。7年以上も大量のカネをバラ撒く異常な金融政策を続けながら物価上昇率目標2%にかすりもできず、〝針のむしろ〟に座らされてきた日銀には「コロナ禍が責任逃れの格好の口実となっている」(財務省幹部)。
本来、デフレ脱却失敗の「A級戦犯」である総裁の黒田東彦(1967年旧大蔵省、元財務官)は恥も外聞もなく、「新型コロナの影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加緩和策を講じる」などと公言し、出口なき泥沼に嵌った異次元緩和策をコロナ対策にすり替える厚顔ぶりを晒している。
黒田を巡っては後ろ盾である首相の安倍晋三の任期が切れる来秋に総裁ポストを中途で退く「同時退任説」が囁かれてきた。だが、今回のコロナ禍をまんまと奇貨にして「国難に立ち向かう救世主」に化けた黒田は最近、周囲に「日本経済を立ち直らせるのが自分の使命」と嘯き、2023年4月までの総裁任期を全うする意向をあからさまにしているという。
そんな黒田の個人としての無節操ぶりに加え、それに呼応するかのように副総裁の雨宮正佳(79年日銀入行)ら生え抜きの主流派幹部が金融政策の財政ファイナンス化にひた走る姿に、中央銀行の独立性を重んじる元総裁の福井俊彦(57年同)をはじめとする有力OBの怒りのボルテージは高まるばかり。福井ら旧主流派は1年後の安倍政権退陣を睨み、中堅・若手の日銀マンを巻き込んで黒田一派を追い落とす「再度の日銀のレジーム・チェンジ」を仕掛けようとしている。コロナ禍で慢心する黒田日銀に〝内紛〟の影が忍び寄っている。
〝全知全能の神〟と錯覚
「政府・日銀のこれまでの新型コロナ対応は効果を発揮している。足元で景気回復の兆候が見られるものの、企業の資金繰り支援はかなり続ける必要があるだろう」
7月15日の日銀の金融政策決定会合後の記者会見で黒田はこう強調。今春以降に行った国債の無制限買い入れや金融機関に対する補助金付きゼロ金利貸し出し(通称=コロナオペ)などの政策の成果を自画自賛した上で、「コロナ克服」の重要性をひたすらフレームアップした。マスク越しの黒田の表情には、本来のマンデートだった物価目標達成によるデフレ脱却に失敗したという〝十字架〟から解放されたかのような満足感さえ漂った。