カネで社外取締役と株主を黙らせ、今度は社員を追放

武田薬品「そして、誰もいなくなる」

カテゴリ:企業・経済

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「驚きました。経営側は『人員削減ではない』と強弁していますが、やろうとしている中身はクビ切り以外の何者でもない。巨額買収で膨らんだ負債圧縮のため、資産売却だけでは間に合わず、ついに社員にまで手を付け始めたということでしょう。もっとも、すでに会社を見切っている者にとっては渡りに船。今後、経営側が予想する以上に辞める社員が続出するかもしれません」

 こう話すのは、武田薬品工業の現役中堅社員だ。

 武田は8月17日、国内部門の早期退職制度を発表した。対象は勤続3年以上で30歳以上の社員。9月末から募集を始め、原則11月30日付で退職する。退職金とは別に特別加算退職金を支払うとしているが、算定方法などの詳細は明らかにせず、募集人数も非公表。人事制度改革の一環としているが、早期退職で下限年齢「30歳以上」は極めて異例だ。

 予兆はあった。国内営業部門のほぼ全社員が参加するウェブ会議が開かれた今年7月上旬。武田は同部門を対象としたリストラ案を内示している。参加した社員によると、対象年齢30歳以上、特別加算退職金も最大60カ月分を支給するという異例の内容。武田にはこれまで「55歳以上、最大36カ月分の特別加算退職金」という早期退職制度があったが、大幅に拡大した形だ。実質的な人員削減であることは明らかだった。

 冒頭の中堅社員が驚いたのは、リストラ案の内容だけではない。約2カ月前に発表された経営陣の役員報酬額と比べて、大きな落差を感じたからだ。武田は2019年度から社外も含む取締役16人全員の役員報酬の開示を決め、20年度についても株主総会のあった6月24日、有価証券報告書で明らかにしている。

 それによると、社内取締役5名の内4名の報酬が1億円以上。最も高額だった社長兼CEO(最高経営責任者)のクリストフ・ウェバーは、前年より3億1500万円増加して20億7300万円。次いで研究・開発総括のアンドリュー・プランプが前年比2億5100万円増の10億4600万円、新任CFO(最高財務責任者)のコスタ・サルウコスが6億6400万円、国内総括の岩崎真人が前年比1億400万円増の2億9700万円と続いた。

「ウェバー社長以下の役員たちが高額報酬を得る一方で、社員に対しては早期退職を促すというのは、一体どういうことなのか。しかも、リストラ案をウェブ会議で発表した張本人が国内トップの岩崎取締役。自身は1億円を超える報酬の上乗せを得ながら、平気でクビ切りの旗振り役となれる神経が理解できない」(中堅社員)

 外国人役員に混じって3億円近い高額報酬を得ながら、国内リストラを主導する岩崎とは一体、どんな人物なのか。

主力薬「リュープリン」欠品でも現場に責任転嫁

 ウェブ会議でリストラ案を内示した取締役の岩崎は、国内の医薬用医薬品事業トップを務める。1958年生まれ、61歳。85年に入社し、主に医薬営業本部で営業や人材マネジメントなどを歩いた。12年に取締役、15年に現職の「ジャパンファーマビジネスユニットプレジデント」(医療用医薬品の国内最高責任者)に就任。公式サイトによれば、順天堂大で医学博士、東京薬科大で薬学修士を取得している。岩崎について、ある武田関係者はこう解説する。

「日本人唯一の(社内)取締役ですが、完全にウェバー以下の外国人役員に呑み込まれていて、何もできない。部下の日本人幹部に対しても、調子の良いことを言っているだけ。要領の良い男ですから、迂闊なことを言えば、他の外国人役員に筒抜けになる。日本人だからといって、信用して本音を言う社員など誰一人いません」

......続きは「ZAITEN」2020年10月号で。

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