2020年11月号
“地元”神戸で勢いづく住民訴訟
神戸製鋼「今さら石炭火力発電」の窮地
カテゴリ:企業・経済
3年前に発覚したアルミ・銅製品の品質データ改竄に未曾有の鉄鋼不況が加わり、赤字の泥沼から脱出できない神戸製鋼所がさらなる難題に直面している。政府が7月に打ち出した「石炭火力発電所の削減方針」。多角化戦略の一環として神鋼は電力卸事業を強化してきたが、神戸製鉄所(神戸市)内で稼働中の2基と現在建設中の2基はいずれも石炭火力発電所である。すでに周辺住民が稼働と建設の差し止めを求める訴訟を起こしており、政府の削減方針で勢いづくのは必至の状況なのだ。
"頼み"の電力卸事業
「石炭火力のフェードアウト(段階的削減)の仕組みをつくる」
7月3日、経済産業相の梶山弘志が閣議後の記者会見で削減方針を公表。経産省によると、6月末現在で国内に石炭火力は150基あり、このうち114基が発電能力の低い「非効率な設備」、その8割強の100基を2030年度までに休廃止にしたい考えだ。
政府が俄かに石炭火力の削減に舵を切ったのは温室効果ガス削減への国際的な圧力が背景にある。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に基づく動きが欧州を中心に強まる一方で、昨年12月開催の「国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)」で「脱石炭」などの具体的方針を示さなかった環境相の小泉進次郎は、世界の環境団体で構成する「気候行動ネットワーク」から極めて不名誉な「化石賞」に選ばれている。
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