2021年04月号
三菱UFJ銀行は「リンガーハット」で“一石二鳥”の我田引水スキーム
コロナ禍企業を弄ぶ「メガバンク」の強欲
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新型コロナウイルス感染症が収束せず、政府の緊急事態宣言が再発令される中、飲食・宿泊、アパレルなどを中心とした内需型企業の経営は一段と悪化している。政府はコロナ禍が顕在化した昨春以降、大規模な企業の資金繰り対策を行ったが、顧客が戻らない現状では一時しのぎに過ぎず、「返済の当てのない借金が積み上がっただけ」(観光業界筋)というのが実態だ。売り上げが立たない一方、家賃や雇用維持に資金流出が続く中、企業は3月年度末の資金繰り確保にさらなる借金を重ねなければ、廃業や経営破綻しかねない窮地に追い込まれている。
菅義偉政権は「企業支援に万全を期す」とアピールするが、企業の命綱を握る銀行は不良債権の膨張を恐れ、自らが貸倒リスクを負うプロパー融資を渋っている。それどころか、他行や政府系金融機関に既存のプロパー融資分まで肩代わりさせて、不良債権処理コストを減らそうと目論む思惑さえ窺える。店舗や人員の大幅削減などリストラ真っ只中のメガバンクをはじめとする大手行の中には、追加融資を拒否する一方、企業に複雑な資金調達スキームを押し付けて収入を稼ぐ〝ハイエナビジネス〟に走る動きも出ている。
コロナ禍という国難にあっても「晴れの日に傘を貸し、雨になったら取り上げる」と評されてきた銀行の強欲ぶりは治っておらず、日本経済の復興の大きな足枷になることが懸念される。
「劣後ローン」導入の本音
「コロナ感染の再拡大で、GoToトラベルやイートなど政府のキャンペンも頓挫した。外食や観光業などは経営危機の第2波に見舞われており、年度末の3月にかけて再び資金繰りが逼迫する。我が行としては単純に追加融資するのではなく、政府系金融機関や地元の地銀などとも連携して、資本性資金の調達を支援し、事業再生を手助けしていきたい」
三菱UFJ銀行のある幹部は、政府が10都府県への緊急事態宣言の延長を決めた2月初め、コロナ対応の取り組みをこう説明した。一見すると、いかにも企業支援に親身な構えのように映るが、簡単に言えば、「不良債権コストの膨張に直結する追加融資はお断り」ということだ。とはいえ、菅政権や金融庁から企業支援を厳しく迫られている手前、何もしないわけにもいかない。そこで追加融資の代替策として打ち出したのが、劣後ローンや第三者割当増資の引受先の紹介など、企業の資本性資金の調達支援策だが、それも額面通りには受け取れない。
コロナショック発生からすでに1年。旅行や外食需要の消失で当初から資金繰りに切羽詰まった企業の多くは、すでに政府系金融機関などを通じた無利子・無担保の借り入れなどで過剰債務問題を抱えている。このため、金融庁も金融界に対して資本性資金の提供を促しているのはその通りだ。先の三菱UFJ銀幹部の説明はあたかも趣旨に適っているようだが、大手行が「追加融資より資本性資金」と口を揃えるのには裏がある。
例えば、劣後ローン。借り手企業の経営破綻時の返済順位が一般の債権より低く、その代わりに金利は高い。素人目には通常の融資の方が返済される確度が高く、貸し手の銀行の焦げ付きリスクは少ないと思われる。平時ならその通りだが、今はコロナ危機の真っ最中だ。今夏の東京五輪さえ中止の可能性が取り沙汰されるほどで、旅行や外食の需要回復がいつになるかは、まったく見通せない。この状況を踏まえれば、銀行にとって「追加融資も劣後ローンも焦げ付くリスクは変わらない」(大手行筋)。それなら融資よりはるかに高い金利が取れる劣後ローンの方が「断然有利」というのが銀行マンの常識だ。
また、劣後ローンは会計上、借り手企業の資本に算入できるため、見掛け上の財務内容を改善させる効果もある。この結果、銀行は劣後ローンを提供した融資先企業の債務者区分を引き下げに済むメリットもある。貸倒引当金の積み増しが不必要となることで不良債権コストが圧縮でき、目先の決算対策にも使えるわけだ。
......続きは「ZAITEN」2021年4月号で。