2021年3月号
月刊ゴルフ場批評41
「総丘カントリー倶楽部」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
新型コロナウイルス問題は収まるどころか2021年に入っても勢いが衰えないが、ゴルフは「密」にならないことで人気上々のようだ。今年も張りきって人気コースを滅多切りしていくとしよう。今回は「総丘」と書いて「そうきゅう」と読む千葉のゴルフ場だ。
元は「PL千葉カントリー倶楽部」といい、「パーフェクト リバティー教団」が経営していたコースだった。
PLとくれば高校野球を思い出してしまうが、教祖の代替わりとともに力が衰え、野球部も活動を中止して久しい。ちなみにPLを冠するゴルフ場は、教団お膝元の大阪をはじめ仙台にもあったが、すべて名称変更。運営会社の「光丘」に合わせてなのか、「光丘カントリー倶楽部」、「聖丘カントリー倶楽部」、そして千葉は「総丘カントリー倶楽部」となった。
その後PGMグループが買収したが、土地にまつわるコース名でもないし、もう一度名称変更してもよかったんじゃないか。
ここに来て何より驚かされるのが、そのダイナミックな地形だろう。出だしは平坦なパー5だが、左サイドは急峻な崖。緑のじゅうたんと崖の荒々しさとのコントラストが強烈な印象を残す。
折り返していく2番パー3も、フェアウエーは不自然なほど広くて平坦。それなのにラフから少し先のOBゾーンは奈落の底で、こんな地形あるのかと驚かされる。
クラブハウスからコースを見渡すと、険しい山々に囲まれた中にぽっかり平坦な大地が広がり、その大地にしがみつくようにコースがレイアウトされている。
急峻な山の頂部分をダイナマイトで吹き飛ばし、平坦部を作ってフェアウエーにしたんじゃないかと思うほどだ。
その後もアウトコースは同じように穏やかなホールが続くが、インに入ってコースは一変する。いきなりの40㍍打ち下ろしパー5に驚いていたら、12番はなんと80㍍の打ち下ろし。スキーのジャンプ台から打っていく心持ちだ。
続く13番は168㍎の谷越えのパー3。この谷には一昨年の台風の被害の倒木が入り乱れ、尋常じゃない荒々しさだ。
14番は右サイドが山肌に沿うよう造られたフェアウエー。ティショットが左に逸れると100㍍近い崖下に真っ逆さまだから恐ろし過ぎる。
いかにフラットなフェアウエーが用意されていても、これだけ両サイドやグリーン奥の地形が荒々しいと、心穏やかに打ち進むのは至難の業。12番から17番は最近改造されたというが、以前はもっと激しいレイアウトだったのか?
名物15番は右には岩壁、左には山肌が迫り、その間を縫うように打っていく急激な左ドッグのパー4。どちらに曲げても大きく跳ね返りそうなほど壁が近い。
全体を通して総じて距離は短く、グリーンは小さく傾斜も穏やか。スコアはまとまるかもしれないが、とにかくOBゾーンは命の危険があるから近づかないのが賢明だろう。
東京湾の絶景より房総丘陵の荒々しさを実感できる、なんとも不思議なコースだ。
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●所在地 千葉県富津市田原1021 ●TEL. 0439-68-1351 ●開場 1973(昭和48)年5月10日 ●設計者 御木道正 ●ヤーデージ 18ホール、6409ヤード、パー72