2021年05月号
システム障害は“国際問題”に発展する――
みずほ「佐藤会長vs.坂井社長」で沈没の必然
カテゴリ:企業・経済
「魚は頭から腐る」。このメガバンクに幾度となく冠してきた慣用句だが、もはやみずほに"頭"はないのかもしれない。3度目のシステム障害を引き起こす一方、経営は新旧トップの内紛に明け暮れている。度し難きその内実とは――。
*
「お家芸」の内紛とシステム障害が同時に勃発、みずほフィナンシャルグループ(FG)の経営が混乱を極めている。旧日本興業銀行出身の新旧FGトップによる〝内ゲバ〟とも言える醜悪な権力闘争の最中に、鬼門のみずほ銀行(BK)のシステムで障害が続発。その原因究明も進まず、果ては8年の歳月と4500億円の巨費をかけて一昨年に稼働させたBKの新勘定系システム「MINORI(みのり)」の設計自体に「深刻な問題があるのではないか」(IT業界関係者)との物騒な指摘も出ている。みずほはMINORIの安定稼働を前提にBKをはじめグループ企業の営業戦略を立て、店舗・人員削減などの合理化策も進めてきただけに事態は深刻だ。
旧3行統合直後の02年4月と東日本大震災直後の11年3月にも大規模なシステム障害を起こした前科を持つみずほ。3度のトラブルが預金者や取引先にこれ以上の混乱を広げることを懸念した金融庁はFGとBKの立ち入り検査に踏み切る方針だ。お粗末な事後対応も祟って顧客離れも加速する惨状だが、FG社長の坂井辰史(1984年旧興銀)は自らの経営責任回避に汲々とするばかり。社内では「メガバンク脱落どころか、このままでは沈没だ」(FG中堅幹部)と悲壮な声が漏れる。
全銀協会長に固執した坂井
「度重なるトラブルを深刻に受け止めている。外部の専門家による第三者委員会を設け、一連の障害に通底する問題を炙り出したい。新勘定系システム(MINORI)への過信や気の緩みがなかったかもしっかり見ていく」―。
みずほFGが3月17日午後に開いた緊急記者会見。社長の坂井は神妙な表情でこう語り、2月下旬に発表済みのBK頭取交代人事と、自らの4月の全国銀行協会会長就任を当面見合わせる考えを表明した。「持ち株会社社長として原因究明と再発防止に取り組む責任がある」とも強調した。
だが、現金自動預払機(ATM)の約8割が動かず、キャッシュカードや通帳が吸い込まれるトラブルが多発した2月末以降、坂井はこの緊急会見までは表舞台に立つことをひたすら避け、「BKの問題」と言わんばかりに、謝罪や釈明を頭取の藤原弘治(85年旧第一勧業銀行)に押し付けてきた。藤原は当初、4月1日付で頭取を退き、代表権のない会長に退くことが内定していた。BK関係者によると、坂井の腹は「どうせ頭取をクビになる藤原に経営責任を一手に背負わせて、自分には累が及ばないようにしようというものだった」という。
......続きは「ZAITEN」2021年5月号で。