2021年06月号
大塚陸毅元会長(78歳)の「直系役員」が次期社長候補に――
大塚顧問が君臨「JR東日本」労務・企画系支配に遠心力
カテゴリ:企業・経済
関係者の間で注目を集めた労務畑出身の〝強面常務〟喜勢陽一の人事異動。その陰には会長の冨田哲郎、そしていまも経営に容喙する顧問、大塚陸毅の意向があるという。
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3月22日にひっそりと内示された人事にJRグループ関係者の注目が集まった。
〈ジェイアールグループ健康保険組合理事長 喜勢陽一〉―。JR東日本常務の喜勢陽一が4月1日付でJR健保の理事長に就任したのだ。この人事について、東日本とは別のJR幹部は「これで喜勢氏のJR東社長の就任は間違いないだろう」と語る。
JR健保は日本鉄道共済組合からJR旅客6社、貨物、バス9社などの社員の共済年金や公的医療保険の業務を引き継いだ組織。1997年4月の発足時は被扶養者を合わせ58万5000人の加入者を抱え、NTTグループの健保に次ぐ全国2位の規模となった。ただ、慢性的財政難で課題も多い。
その理事長の系譜を追うと、ある共通点が浮かび上がる。初代はJR東常務(当時、以下同)の大塚陸毅。翌98年6月に2代目の理事長に就いたのが副社長の小島紀久雄。そして02年6月からは常務の清野智と続く。その後、06年4月に副社長の谷哲二郎、09年6月に副社長の冨田哲郎、12年6月に副社長の深沢祐二ときて、18年9月から今年3月まで理事長に就いていたのが、同じく副社長の西野史尚だ。この7人のうち大塚、清野、冨田、深沢が東の社長に上り詰めているのだ。
「JR各社はJR健保の理事長人事を見て、東の次の社長を予想する。西野氏が理事長になり、『次は西野』との見方もあった。しかし、喜勢氏の社長就任は既定路線とも見られていたので、今回の人事で納得した」(前出幹部)
「大塚―冨田」ラインの直系
社長候補の最右翼に勇躍した喜勢とは一体どんな人物なのか。
64年生まれで東大法学部卒業後の89年にJR東に入社。14年に人事部長となり、最大労働組合と強硬に対峙した当時社長の冨田のもと、労務政策を担当した。JR東日本労組の大分裂のきっかけとなった18年春闘の前年、冨田、副社長の深沢(現社長)らに最大労組に浸透している過激派との決別を強く進言、「労使共同宣言」失効への流れをつくった「強面」(JR関係者)とされる。
......続きは「ZAITEN」2021年6月号で。