2021年06月号
前田晃伸の〝変節〟も囁かれる……
【NHK特集】NHK幹部「前田会長降ろし」の新局面
カテゴリ:事件・社会
専務理事、板野裕爾の再任を巡ってもつれにもつれた4月のNHK役員人事。「板野外し」を画策した会長の前田晃伸は一敗地に塗れた格好だが、NHKプロパー幹部たちは水面下で蠢動する。伏魔殿の内実とは―。
4月6日、東京・渋谷のNHK放送センターで開かれた経営委員会―。この日はある重要議案が議論されることになっていた。 その議案とはNHKの次期役員人事。昨年1月、会長に就任した前田晃伸(76、みずほフィナンシャルグループ元会長)が、人事でどんな独自色を出すのかと注目を集めていたものだった。しかしこの日、前田は議案を提案することができず、2週間後の20日に改めて提案させていただくと述べるにとどまった。というのも、前田がまとめた新体制に官邸から横槍が入ったからだ。
事情に詳しいNHK関係者によれば、官邸が問題視したのは、前田が専務理事の板野裕爾を外そうとしていた点だ。板野は経済部出身。2011年当時、経営委員長を務めた数土文夫(JFEホールディングス元会長)の寵を受けて勇躍し、松本正之(JR東海元副会長)の会長時代に理事に就任。14年に専務理事に昇格した。安倍政権時代には官邸との太いパイプを後光にして、政権の意向を番組に反映させたと言われる。専務理事・放送総局長時代には、「クローズアップ現代」のキャスター、国谷裕子を降板させた〝張本人〟として取り沙汰されもした。
しかし、当時会長だった籾井勝人(三井物産元副社長)と鋭く対立、16年に専務理事からの退任を余儀なくされる。その後、関連会社のNHKエンタープライズ社長に落ち延びたことから、「次はないと見られていた」(関係者)。
ところが―。19年4月に専務理事として返り咲き、異例の復活を果たす。前会長の上田良一(三菱商事元副社長)は嫌がったものの、経営委員長だった石原進(JR九州元会長)が後押しして復帰させたとも広く囁かれた。
猛烈な反発に業を煮やして...
そんな板野を前田は放逐しようとしていたというのだ。NHK幹部が解説する。
「社会部出身の松坂千尋専務理事と伊藤浩経営企画局長らが結託して政治部出身の正籬聡副会長を巻き込み、執行部内で幅を利かせていた『板野外し』を画策。前田会長に進言したそう。板野氏を抵抗勢力として快く思っていなかった前田氏もそれに乗ったようだ」 しかし、ここで横槍が入る。
「官邸事務方のトップを務める杉田和博官房副長官が『板野を外すのは罷りならん』と待ったをかけたと見られる。父親が実力者であることに加え、安倍から菅義偉に首相が替わっても、官邸とのパイプは健在なのだろう」(同)
なぜ前田はそんな荒業に出たのか。
.....続きは「ZAITEN」2021年6月号で。