2021年06月号
五輪聖火リレー動画の〝音声消去〟が表すNHKの忖度
【NHK特集】「公共メディア」とは程遠い現状と構造問題
カテゴリ:企業・経済
メディアを取り巻く環境は激変しており、放送業界はデジタル企業への変革を余儀なくされている。それは「みなさまのNHK」も例外ではない。
本稿では私の古巣であるNHKへのエールの意味も込めて、NHKを取り巻く様々な「構造問題」を論じていきたい。
NHK局内会議にて報道局長が職員を前に、「テレビの時代は終わる」と話したのは2016年のことだった。動画配信サービスが台頭し、人々の生活に定着した現在、NHKのライバルは朝日新聞や日本テレビだけではなく『ネットフリックス』『アマゾン』『ディズニー』はもちろん、『LINE』『TikTok』もライバルである。これらすべてが、1台のスマホ上で起きている競争である。
こうしたデジタル時代にNHKはどうあるべきか。昨年10月、報道局所属のデスク有志3人が書いた内部文書《NHKイノベーションリポート 目指すべき公共メディア像》が一部で話題を呼んだ。
報道領域でデジタル戦略を牽引してきた3人が、31頁に及びNHKの変革の必要性を訴えている内容だが、NHKがデジタル時代に対応するための論点が整理され、ジャーナリズムから人事まで、広くカバーされている。『ヤフー』『スマートニュース』『文春』などの他のメディアも研究した上で、NHKとしてとるべき打ち手を提言している点が興味深い。「目指すべきは1億人のためのパーソナライズ」「もはやあらゆる伝送路を使うしかない」という提言は、およそ「みなさまのNHK」からは想像がつかないものである。〈公共性を高めるネットフリックス〉と題された箇所では、ネットフリックスについて「公共メディアとしての座を脅かす存在になりかねない」と危機感を率直に綴っている。人材育成のあり方についても「イノベーションを起こすための人事」「辞めやすく、戻りやすい制度に」として、NHK内だけではなく、他のメディアなども含む「外」との行き来(回転扉)がNHKを活発化させ、前進させると訴える。
......続きは「ZAITEN」2021年6月号で。