2021年06月号

旧住信勢の“トップ独占”で旧三井信託勢が三井住友銀行に急接近

三井住友信託「旧住友に敗れた旧三井」の窮鼠猫を噛む

カテゴリ:企業・経済

 2011年4月に旧住友信託銀行と旧中央三井トラスト・ホールディングス(THD)の経営統合により発足してから10年の節目を迎えたメガ信託銀行グループ、三井住友トラスト・ホールディングス(THD)。だが、社内に祝賀ムードはまったくない。今春のトップ交代人事をきっかけに旧住信勢と旧三井信託勢による内戦が燃え盛っているからだ。

 これまで母体2行によるたすき掛けだった三井住友THDと中核子会社の三井住友信託銀行(TBK)の両社長ポストを旧住信出身者が独占したことに、前信託銀社長の橋本勝(現会長、1980年旧三井信託銀行)ら旧三井信託勢が猛反発。「取締役会でも不協和音が充満し、業務に支障が及ぶ恐れさえ出ている」(中堅幹部)。旧住信勢の間からは「旧三井信託の『最後の砦』を陥落させ、経営支配が完了した」と満足気な声も漏れ聞こえるが、我が国初の信託会社として発足した歴史を持ちプライドが高い旧三井信託勢には「耐え難い屈辱」(橋本周辺筋)だ。

 追い詰められた橋本らは金融庁や、旧住信が近親憎悪する旧住友銀行勢が牛耳るメガバンク、三井住友フィナンシャルグループ(FG)も巻き込んで反撃の機会を窺っているという物騒な状況で、経営の混乱は必至だ。表向きは「専業信託」をアピールしながら、実態は本分の資産運用ビジネスよりも融資に頼るメガバンクの〝亜流経営〟を続けてきた三井住友THD。超低金利の逆風に追い打ちをかける内戦の勃発で業績悪化が加速する懸念は高まるばかりだ。

背後には「常陰均」元社長

 上善は水の如し―。二千数百年前に書かれたとされる「老子」のこの格言が、4月1日付で三井住友THD取締役執行役専務から社長に昇格した高倉透(84年旧住信)の座右の銘という。水のように常に低い場所に身を置き、人と争わず、みんなに恩恵を与えるような生き方を勧める教えだ。だが、大手マスコミ各紙で報道されるや、旧三井信託出身幹部の間では「ブラックジョークなのか」と嘲笑の声が溢れた。

 高倉は、「旧住信のドン」としていまだに経営に隠然たる影響力を持つTBK元社長の常陰均(77年旧住信)の直系。常陰が社長時代の15~16年にかけては人事担当役員として旧三井信託勢を主要ポストから外す「非情なパージ」を主導した人物だからだ。後述する紆余曲折を経て、社外取締役で構成する指名委員会に高倉社長案が上程された際、旧三井信託出身の橋本が指名委員会委員長の松下功夫(元エネオスHD社長)らに対して「高倉君では多くの社員が失望し士気が下がる」と必死に抗議したのも宜なるかな、だ。

......続きは「ZAITEN」2021年6月号で。

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