2021年06月号
スルガ銀創業家の〝曰く付き美術館〟を巡って……
静岡新聞「スルガ銀」の不可解な絵画取引
カテゴリ:企業・経済
代表取締役顧問―。日本の大動脈、東海道を眺めると、尾張名古屋には「代表取締役名誉会長」なる珍無類の尊号を持つ御仁もいたが、やがて代表と取締役を外しいまや無冠の名誉会長となって1年弱。しかし、またこの街道に奇矯な肩書を持つ経営者が現れた。
写真週刊誌『フライデー』(3月5日発売)によるダブル不倫・パワハラ報道で一躍全国に名を売った静岡新聞社前社長の大石剛、その人である。
件のダブル不倫は、大石が社長を務めていた静岡放送(SBS、TBS系列)の局アナが相手だったが、本人は最後まで「不倫はない」と否定。よって、ここでは深掘りしないが、大石は珍奇なメディア経営者として、静岡および新聞業界内で知られる存在だった。
「マスコミをやめる」広告
1969年生まれの大石は静岡新聞社創業者、大石光之助の孫で同社の4代目社長。成蹊大学でゴルフに勤しみ、広告代理店の電通勤務を経て98年に家業の静岡新聞に入社した。12年から社長を務めてきたが、昨年12月1日の創立記念日に「(経営状況は)創業以来の最大の危機。この危機を乗り越えられない社員は泥船に乗ってもらう」などと全社員に向かって気勢を上げた。
確かに、静岡新聞社の現状は厳しい。大石の父で会長だった松井純が19年9月に亡くなると、業績は一気に悪化。17年3月期には約247億円あった当座資金は、20年3月期には約185億円にまで減少した。さらに新型コロナウイルス禍を受けて売上高は落ち込み、21年3月期の赤字は20億円以上に膨らむと予想している(昨年12月1日現在)。
もちろん、理由のひとつは新聞離れだ。18年12月に部数62・4万部を公称、全国一の地方紙を誇っていた。しかし、昨年に大石本人をインタビューした『サンデー毎日』(9月20日号)は〈静岡新聞の最新の紙の部数は51万部まで落ち込んでいる。特にこの2年半は、10万部以上の部数を失った〉と報じている。そして今回の不祥事。50万部を割り込んでいるのは確実と見られる。
......続きは「ZAITEN」2021年6月号で。