2021年06月号
住宅街の真下に〝巨大トンネル〟掘削被害の恐怖
NEXCO東日本「住民分断」の陥没事故対応
カテゴリ:企業・経済
昨年10月18日の午後。東京都調布市東つつじヶ丘2丁目の生活道路で轟音とともに陥没事故が発生した。民家の車庫前に幅5㍍、長さ3㍍、深さ6㍍の穴が現れ、近隣住民は一時的に避難を余儀なくされた。
調布市の地下40㍍以深では、高速道路「東京外かく環状道路」(外環)の建設のため、直径16㍍の日本最大のシールドマシンがトンネルの掘削をしていた。
陥没現場から徒歩1分に住む菊地春代さんは、市民団体「野川べりの会」の一員として14年から「住宅街の真下の巨大トンネル建設は、振動や騒音、地盤沈下や陥没を招く」と外環計画を警告していたが、最悪の事態となった。
市民団体「外環被害住民連絡会・調布」(連絡会)の事故前後に起きた被害状況のアンケート調査によると、構造物被害は58軒。内ドアや床の傾きが19件、コンクリートのひび割れが17件などなど。体感的被害は102軒。内容は振動95件、騒音72件、低周波音51件に及ぶ。
事故と同時に、建設主体である3事業者(NEXCO東日本、NEXCO中日本、国土交通省)は工事を中断した。この時、住民は「工事を再開するのか。また陥没しないのか。地区の不動産価値が下落するが、補償されるのか」との不安を抱いていたが、3事業者、特に、陥没現場を管轄していたNEXCO東日本が住民に寄り添うことはなかった。
事故翌日の10月19日、NEXCO東日本と3事業者が事故原因究明のために設置した「有識者委員会」(小泉淳委員長)は記者会見を開催。筆者は住民の不安について尋ねた。
―工事再開を恐れる住民は多い。工事再開には住民合意を得るのか?
「住民説明会は開催します」
―住民合意は?
「丁寧に説明します」
―住民合意を得るのかと尋ねている。
「丁寧に説明します」
―今回の事故で地元の不動産価値は下落する。下落分を補償するか?
「仮定の質問には答えません」
この不毛なやりとりはネットにも配信されている。
陥没事故の不誠実対応
NEXCO東日本は11月6日に住民説明会を開催したが、ここでも住民に寄り添うどころか、住民を仕切った。参加できるのは、通し番号の入った案内状を事前配布された陥没現場周辺の住民のみだったのだ。
隣接地区の住民が「説明を受けたい」と説明会場の入口で要望しても、NEXCO東日本は空き椅子があっても入室を拒んだ。
......続きは「ZAITEN2021年6月号」で。