ZAITEN2021年06月号

NHKの現状に我慢も限界「いい加減にしろ!」 参議院議員 音喜多 駿

【NHK特集:全文公開】NHK 高コスト経営の抜本改革は"部分民営化"にあり

カテゴリ:インタビュー

参議院議員 音喜多 駿

 2021年度のNHK予算が賛成多数により国会で承認されましたが、日本維新の会は昨年に引き続き、反対いたしました。その理由は大きく3つあります。
 1つ目は、「放送と通信の融合」時代に、NHKが一貫して改革に消極的であるということです。同時配信や見逃し配信など、インターネットとテレビの垣根を越えた取り組みが世界的に進む中、日本は諸外国と比べ、はるかに遅れています。
 昨年から「NHKプラス」(総合テレビやEテレの番組を放送と同時に、また、放送後の番組を7日間視聴できる)が始まりましたが、NHKはネット関連事業を受信料収入の2・5%以内に収める上限をかけてきました。今年は3%程度に若干上がるようですが、例えば、ドイツ公共放送のARDは、全体予算の12・2%にあたる1071億円(17年)をインターネット関連放送に費やしており、雲泥の差です。日本の放送業界は「民業圧迫」などと言い訳を重ねていますが、そこは受信料で成り立っているNHKが率先してネット利用者の利便性向上に努めるべきでしょう。にもかかわらず、極めて後ろ向きなのが問題です。
 2つ目の反対理由は、総務省の接待問題を巡り、NHKが〝ゼロ回答〟を続けていることです。東北新社に端を発し、フジテレビの外資規制違反も大きな話題になっている中、全国民が「総務省と放送業界はズブズブではないか」という疑念を抱いています。特にNHKは公共放送を名乗り、受信料で運営しているのですから、積極的に調査に協力すべきです。
 ところが、我々が国会で調査の全面協力を求めても、前田晃伸会長は「事業活動に支障を及ぼす恐れがある」などと、一貫して消極的姿勢を変えようとしません。
 NHKによる総務省関係者への接待が皆無ということは、恐らくないのでしょうが、やましいところがないのならば、自ら詳らかにすればいい。ことの問題は会食の内容であり、「行政が歪められたか否か」。こんな状態で予算案に賛同するわけにはいきません。
 3つ目が、非常に高コストで漫然とした経営体質という最大の問題です。数字で見ると、19年度末の資産合計は1兆2168億円、純資産だけで7890億円あり、毎年1000億円以上を繰り越しています。さらに、有価証券を3353億円も持っており、資産全体の3割程度を占めている。つまり、予算を投資に使って債券を積み上げつつ、私たちの受信料は値下げしていないのです。
 また、19年度の番組制作費は約3600億円。民放のTBSは994億円ですから、まさしくケタ違いです。職員の給与も単純計算すれば平均年1000万円を超えます。さらにNHKは「随意契約」で様々な子会社にお金を流している。こんな高コスト体質を維持できるのなら、もっと国民に還元するべきでしょう。

NHKの官僚体質

 今年になって受信料を1割値下げするとの話も出てきていますが、もっと経営をスリム化できるはずです。
 世間には「政治家とNHKの国会攻防が八百長めいている」という指摘もあります。確かに、NHKと政治の癒着構造はあると私も思います。政治側は、口では「NHKはけしからん。改革するぞ!」と言いながらも、実際には手心を加えることで、自分たちに忖度した放送を期待しています。
また、踏み込み過ぎると民放や新聞社からの反発も呼び起こしますから、結局、マスコミに嫌われたくないが故に、政治主導のNHK改革は「抜かずの宝刀」になっていく。加えれば、政と官から相当数の子弟がNHKに入社しているという事実もあります。政治家とNHKがウィンウィンとなって、国民が損をする構造は極めて問題です。
 だからこそ提言したいのは〝部分民営化〟です。災害情報など不可欠な放送を「公共NHK」が担い、最小限の受信料で成り立たせる。そうすると、受信料は3分の1程度になるでしょう。そして、事業の8割程度は「民営NHK」として切り分け、民間と競争してもらう。これが部分民営化の大まかなプランです。
 NHK内に蔓延る官僚的体質の改善も期待できます。官僚的体質とは、「予算はあるだけ使い切る」ということ。民間では事業を成功させた者が評価されますが、官僚の世界では予算を拡大した者が出世します。NHKで言えば、予算は受信料です。つまり、徴収した受信料を使い切ることがミッションなのです。そうすることで人員も増えて、権限も広がり、影響力も高まる。「卵が先か鶏が先か」の話ですが、少なくともNHKの官僚的体質が政治との距離の近さとワンセットであることは間違いありません。
 こうした根本問題を解決するためにも、NHKの部分民営化を真剣に考えることが、一番ストレートな方法だと思います。日本が誇るテレビ産業の技術力、コンテンツ力を高めていくためにも、門戸を開いて、民間と一緒に競争すべきというのが私の意見です。

おときた・しゅん―1983年生まれ。13年6月、東京都議会議員選挙に初当選し、2期務める。19年7月、日本維新の会より参議院議員選挙東京都選挙区に出馬し、参議院議員に。日本維新の会国会議員団政務調査会長代行、学生局長。

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