2021年07月号
76歳の“辛口老批評家”を訴えた“雑学クイズ王”
《言論特集》佐藤優vs.佐高信「名誉棄損法廷バトル」【6/15無料公開】
カテゴリ:事件・社会
〝76歳辛口評論家〟を訴えた〝雑学クイズ王〟名誉棄損で「慰謝料1000万円払え!」を考察する
元外務省主任分析官のベストセラー作家、佐藤優氏(61)が、本誌でもお馴染みの毒舌評論家、佐高信氏(76)を提訴した。佐高氏の著書で名誉を棄損されたことがその訴因だというが、「過激にして愛嬌あり」を標榜し、表現の自由を曲がりなりにも体現する本誌としては聞き捨てならない事件である。そこで急遽、佐藤、佐高両氏の心の内、および有識者に意見を求めた――。
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【私はこう考える「佐藤優 vs. 佐高信」言論の自由と名誉毀損訴訟】
◆ 平野貞夫(元参院議員) 「『言論統制』の時代を危惧する」
◆ 鎌田 慧 (ジャーナリスト)「国家権力に『泣きを入れた』佐藤優」
◆ 森 達也 (映画監督)「今からでも『論戦』しましょうよ」
◆ 落合恵子(作家) 「活字での〝取っ組み合い〟を読みたい」
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評論家の佐高信氏が3月10日に旬報社から出版した著書に関し、名誉毀損等の内容が含まれるとして、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が4月、佐高氏と旬報社の木内洋育代表取締役を相手取り、1064万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
問題視された『佐藤優というタブー』(以下、同書)は、佐高氏が月刊誌や自身のメールマガジンで発表した評論やエッセイに、書き下ろしの原稿を加えて再構成した書籍。佐藤氏の言論活動等を批判的視点から論じているのは、全205頁の約4分の1にあたる50頁ほどである。
訴状によると、佐藤氏は同書の9カ所の記述内容が民法上の不法行為にあたると主張している。
その大半は同書の「まえがき」部分にある。佐高氏は、とある〈佐藤批判〉の原稿を〈例年出す時評集に収録しようとしたら、佐藤の本を出すつもりがあるので、はずしてほしいと言われた〉として、〈タブーに挑戦すべき出版界がタブーをつくってはならない〉などと論じている。訴状では問題視する記述のうち、少なくとも7つは「人格の否定」ないし「侮辱」であると主張されている。
たとえば、佐藤氏が『AERA』(朝日新聞出版)で連載した「池田大作研究」第37回の内容についての〈卑劣な学会擁護〉(同書)や、〈竹中(平蔵)サンも尊敬するけど、マルクス経済学者の鎌倉孝夫さんも尊敬すると言って恥じないところに私はあなたの打算を感じますし、敵にも味方にも武器を売る武器商人的狡猾さを知覚するのです〉(同書)などである。
一方、次の2つについては、訴状は「事実の摘示による名誉毀損」を主張しているものと見られる。
佐藤氏が出演した『東奥日報』16年3月2日付の電気事業連合会による全面広告をめぐり、〈おそらく最低でも一〇〇〇万円はもらっているだろうが、その金額を明らかにしてから「内調から藤原(弘達)に金銭の流れもあった」とか言え〉(同書)との記述がある。
訴状では、「最低でも1000万円はもらっている」は事実ではないとして、〈原告が、たかが地方紙に出るくらいで1000万円以上の金銭を得ているような不当な利益をむさぼっている人間なのだという評価を受けることになり、このように受け止められること自体原告の名誉・信用を甚だしく傷つける〉〈同広告の仕事によって電気事業連合会から幾らもらっているのかを明らかにする筋合いはなく、(中略)原告の名誉を傷つけた被告がその根拠を明らかにするべき事柄である〉などと述べられている。
また、同書では佐藤氏と鈴木宗男氏の関係について、〈汚職疑惑で共に捕まったが故に、互いに裏切らない、あるいは裏切れない関係にあり、手錠でつながれた逃亡犯のように、右に行くにも左に行くのも一緒に動かなければならない〉と記されている。
これについて訴状は、「手錠でつながれた逃亡犯」は〈読者をして原告のありもしない姿を想像させる〉として〈名誉毀損も甚だしい〉などと主張している。
佐藤氏は、佐高氏にこれらを書かれたことによって〈作家・言論人としての信用・社会的評価は失墜〉などとし、その損害額として、弁護士費用と合わせて1064万円を請求している。
以上が本件の訴訟概要である。数々のベストセラーを連発し、一部では〝知の巨人〟とも評される佐藤氏が過去に共著も上梓した間柄でもあり、〝毒舌〟評論を持ち味とする佐高氏を提訴した本件は、言論界にどのような影響を与えるのか――。
次頁より当事者の見解、有識者の考えを掲載する。
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【私はこう考える「佐藤優 vs. 佐高信」言論の自由と名誉毀損訴訟】
◆ 平野貞夫(元参院議員) 「『言論統制』の時代を危惧する」
◆ 鎌田 慧 (ジャーナリスト)「国家権力に『泣きを入れた』佐藤優」