2021年07月号
6月の定時株主総会も“大荒れ”必至……
【株主総会特集】"番犬"も逃げた「東芝」臨時総会"敗戦"の内幕
カテゴリ:企業・経済
大山鳴動して"車谷"一匹――。物言う株主との死闘を演じた没落の名門企業、東芝。迷走の全責任は前社長、車谷暢昭に帰されるが、その陰で"番犬"たちも早々に逃げ出していた。株主対策を巡る東芝の益なき苦闘、その舞台裏とは......。
東芝を追われた車谷暢昭氏(写真は会社サイトより)
車谷暢昭の事実上の社長解任であっけない幕切れとなった外資ファンドによる東芝買収劇――。
だが、6月に予定されている定時株主総会が「シャンシャン」で終わる保証はまったくない。それどころか、さらなる茨の道が待ち受けているは必定だ。理由のひとつは、東芝の"番犬"を務めていた企業が相次いで撤退し、いまや「我関せず」の頬被りを決め込んでいるからに他ならない。顧客の窮地を横目に番犬が敵前逃亡した様は、さながら沈没間近の巨船から逃げ出すネズミの如し......。
逃げ出したIRジャパン
新年度に入るや否や勃発した外資ファンドによる東芝買収劇は、政府や経済界、金融市場を巻き込み大山鳴動したものの、自己顕示欲と自己保身に凝り固まった車谷という経営者の"地金"を炙り出すだけの結末に終わった。
英国拠点の買収ファンド、CVCキャピタル・パートナーズによる買収提案が明らかになったのは4月7日。日本経済新聞が朝刊でスクープを報じた後、メディア各社の朝駆け取材に車谷が東京・青山の自宅前で満面の笑みを浮かべて、「買収提案は事実」と認めたのが発端だ。東芝の社内外で信任を失った車谷が、社長ポストに居座るために画策したのが、三井住友銀行副頭取ポストを退任した後に身を寄せたCVCによる買収・非上場化策だった。
昨年7月の定時株主総会で、車谷の取締役専任議案に対する賛成率はわずか58%。当時からさらに株主の評価は厳しさを増し、12人の取締役のうち10人を社外が占める東芝取締役会は、今年6月に予定されている定時総会で、車谷続投の信任を得るのはもはや不可能だと判断した。取締役会議長の永山治(中外製薬名誉会長)が中心になって、車谷解任に向けた動きを始めたのが3月下旬。その直後に、CVCから買収提案が持ち込まれた。
「非上場化すれば、自分のクビはつながると考えた車谷が弄した〝保身策〟であるのは素人でも分かる」と東芝幹部は吐き捨てた。三井住友銀在籍時代から「自らの出世のための小細工だけは得意」(同銀役員)と評されただけのことはある奇策だった。もちろん、「車谷解任」は自業自得でしかないのだが、アクティビスト(物言う株主)に追い込まれた東芝そのものを見放していった出入り業者も見過ごしにはできない。
その筆頭に上るのは、上場企業各社からアクティビスト防衛アドバイザーとして引っ張りだこのアイ・アール(IR)ジャパンホールディングスである。
契機となったのは前述の昨年7月の定時株主総会。アクティビストによってクビを取られそうだった車谷と、浪人で燻っていた車谷を東芝に押し込んでその守護神を気取る経済産業省は、二人三脚でアクティビストの議決権行使封じに動く。加えて、東芝の株主名簿管理人を務める三井住友信託銀行が議決権数の1・3%分をカウントしない「集計ミス」を犯した。
......続きは「ZAITEN」2021年7月号で。