2021年07月号
不自然なほどに早い政府の“解禁対応”
【株主総会特集】「バーチャル総会」は経営陣の隠れ蓑
カテゴリ:企業・経済
新型コロナウイルス禍を受けて急増する我が国上場企業のオンライン型株主総会。しかしバーチャルとなることで、これまで以上に一般株主は経営陣を糾弾できなくなる可能性も高い――。
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今年も3月期決算企業の株主総会シーズンがやって来た。日本企業のコーポレート・ガバナンスが機能しない要因として「総会の形骸化」が指摘されて久しい。投資家や「物言う株主」の出席を抑制する日程の集中は解消されつつあるが、無能なトップが蔓延る株式持ち合いや経営の私物化は未だ横行する。新型コロナウイルス感染拡大に伴うオンライン総会の解禁や続出する巨額赤字企業など株主の関心事項は従来以上に山積。「会社は誰のものか」を改めて認識させる株主総会の重要性は従来以上に増している。
「バーチャル総会」が急増
東京証券取引所が4月5~23日に実施した調査によると、今年最大の株主総会集中日は6月29日。回答のあった3月期決算の上場企業1680社のうち、452社が定時総会開催を予定しており、集中率は26・9%と1983年の調査開始以来「最低」となった。バブル崩壊後、外資系機関投資家などから「株主軽視」との批判を受けたこともあり、総会日程の集中率はピークだった95年の96・2%から徐々に低下。この数年は30%前後で推移していたが、今年は一段と分散が進む結果となった。
ただ、これは大手メディアが報じているような「株主との対話を充実させるため開催日の集中緩和を図る動き」(4月26日付「日経電子版」)では決してない。6月29日の開催企業452社に次いで、同25日に総会を予定する企業も430社(全体の25・6%)あり、合わせれば集中率は52・5%。この両日だけで852社が株主総会を開くのである。「株主との対話の充実」が聞いて呆れる。
株主総会開催を巡る東証の調査ではインターネット対応についても聞いている。招集通知のウェブ開示を総会開催日の3週間以上前に実施する企業は74・1%と前年調査時に比べ8・5ポイント上昇し、過去最高水準を記録。
さらにオンラインで参加可能な「バーチャル総会」を開催予定の企業は232社、率にして14・0%に達し、前年調査の5・2%から8・8ポイントの大幅上昇となった。
この「バーチャル総会」開催急増の背景には、言うまでもなくコロナ禍がある。感染防止の観点からは従来通り会場に株主を集める「リアル総会」はリスクを排除できず、オンライン参加の総会が歓迎される。ただ、これまでの会社法では実際の会場を設けること、即ちリアル総会の開催が義務付けられてきた。
欧米ではすでに昨年から、バーチャル総会がリアル総会の代替となることを認める動きが広がっていた。
......続きは「ZAITEN」2021年7月号で。