2021年08月号
出世を確約されて“パワハラ・セクハラ”やりたい放題の特権
三菱UFJ「最凶人事部」の陰惨支配
カテゴリ:企業・経済
「UFJ銀行」――。
三菱UFJ銀行行員の間では、今もこんな"通名"が罷り通っているという。しかし、何も旧UFJ銀行の中核、旧三和銀行出身者が旧行を回顧して呼び習わしているわけではない。むしろ、入行したての若手行員たちが何の衒いもなく、こぞって自らの銀行を「UFJ銀行」と呼んでいるというのである。「MUFG銀行」ならまだしも、「UFJ銀行」とは、どういうことなのか。旧三菱銀行出身の中堅幹部が解説する。
「人事部が就職活動や新人研修の場で、就活生や若手行員に対して自行のことを『UFJ銀行』と連呼して、吹き込んでいるというのです。それで若手にも『UFJ銀行』という呼び名が刷り込まれてしまった。旧三菱銀出身の自分としては仰天しましたが、経営層はもちろん、多くの幹部たちもこんな事態になっていることは知らないでしょう」
2018年4月、行名を「三菱東京UFJ」から「三菱UFJ」に変更する際、当時、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)社長で銀行会長だった平野信行(1974年旧三菱銀、京大卒。現MUFG取締役)は、「MUFG銀行」への改称を主張したものの、歴代頭取はじめ、旧三菱銀勢から猛烈な反発を受け、初志を貫徹できなかったとされる。
平野が旧行の障壁を取り払うという"行内融和"を掲げつつも、自分を冷遇してきた出身の旧三菱銀に対する当てつけとも囁かれたが、「三菱」はおろか「M」の字まで削り取るとは尋常ではない。「UFJ銀行」なる呼称を若手が平然と使っているなど、いくら平野でも許容できないはずだ。 この理由については後述するとして、逆に言えば、人事部の行員への"影響力"は事程左様に深甚なものであると言える。事実、他の業種は元より、メガバンクの中でも三菱UFJ銀の人事部は「最強にして最凶」(有力OB)というのだ。本稿ではその権能と組織構造を詳らかにしたい。
人事出身の「三毛チルドレン」
本誌前号でも既報の通り、現在の三菱UFJ銀のパワーラインは現頭取の半沢淳一(88年旧三菱銀、東大卒)ではなく、平野の後を襲ってMUFG会長に収まった前頭取、三毛兼承(79年同、慶大卒)麾下の慶応大閥「三毛チルドレン」たちが掌中にしている。
その若頭的な存在が、半沢の1期先輩で頭取職を争った専務執行役員の林尚見(87年同)。林以外の最高幹部は副頭取執行役員の谷口宗哉(85年同)、CIO(最高情報責任者)を務める常務執行役員の亀田浩樹(88年同)。〝曲者〟で通る3人で、いずれも銀行の代表取締役の地位にある。
この三人衆に加え、東日本拠点統括と法人・リテール部門副部門長を兼務する常務執行役員の関浩之(90年同)、執行役員で営業第四本部金融法人部長の南里彩子(92年同)などが三毛チルドレンの枢軸を成している。
これら三毛の舎弟たちに共通するのは慶応大出身であることはもちろん、いずれもが人事部出身者であるということだ。
......続きは「ZAITEN」2021年8月号で。