2021年08月号

公職選挙法違反、傷害事件、公約詐欺まで―

全国の「あきれた田舎首長たち」

カテゴリ:政治・国際

  河井克行元法相と案里夫妻による、2019年7月の参院選広島選挙区を舞台にした大規模買収事件は、地元政界も巻き込んだ。公職選挙法違反の罪に問われた河合元法相は、地方議員ら100人に総額2871万円を渡して買収したとして、今年6月、懲役3年の実刑判決を言い渡された。100人の中には首長も複数おり、それぞれ辞職に追い込まれている。

 そのうち、特に往生際が悪かったのが広島県安芸高田市の児玉浩前市長だ。昨年4月に初当選した児玉前市長は、県議時代に河井克行被告から2回にわたり現金60万円を受け取っていた。同年6月24日に現金授受を認めると、その2日後には頭を丸刈り。記者会見で発した言葉は「まずは反省を示さないと行けないのでヘアスタイルを変えました」だった。しかも、一応は陳謝したものの、続投の意思を表明して市民を驚かせた。  

 丸刈りで反省の意を示せば、許してもらえると思ったのかもしれないが、当然ながら抗議と苦情が殺到し、数日後に辞職に追い込まれた。犯罪行為を丸刈りで逃げ切ろうとした市長は、おそらく全国でも初めてであろう。 在職わずか25日で辞職  奇妙な事件が起きたのは、昨年12月16日朝6時50分のことだった。島根県雲南市の原仁史市長(当時)が、入院先の出雲市の病院で、看護師の女性につかみかかるなどの暴行を加え怪我をさせたとして、傷害の疑いで逮捕された。

 入院治療の継続を理由に翌日釈放されたが、逮捕から5日後には辞職願を提出。前月28日に市長に就任したばかりで、在任期間はわずか25日だった。  原前市長は元島根県職員。公益財団法人副理事長を経て、同年11月告示の市長選挙に新人で出馬し、無投票当選した。ところが、12月9日に議会で所信表明演説をした後、眩暈や吐き気を訴えて高血圧緊急症で入院。その病院で犯行に及んだ。原前市長は今年4月8日付で書類送検されたが、動機などは報道でも明らかにされていない。その真相は「今だに謎」(地元関係者)だという。

 大分県佐伯市の田中利明市長は、2期目を目指した今年4月の市長選挙で再選を果たした。ところがその直後、副市長2人が市の幹部職員に田中市長への集票を依頼したとして、公職選挙法違反の疑いで逮捕。2人はすぐに辞職し、6月4日に簡易裁判所から罰金の略式命令を受けた。田中市長からの指示は否定し、事件は終結に向かった。今回の選挙では、市職員の労働組合が対立候補を擁立していた。ただでさえできていた市長と職員の間の溝が、事件でさらに深まった。

 さらに、捜査が進んでいた最中の4月下旬に、田中市長が高齢者よりも先に新型コロナウイルスワクチンを先行接種していたことがのちに報道で明らかになった。医療従事者に優先的に届けられたワクチンの余りだったという。選挙違反事件と合わせて市民からの不信を買ったのは言うまでもない。

......続きはZAITEN8月号で。

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