2021年08月号
月刊ゴルフ場批評46
「長南カントリークラブ」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
個人的な話題で恐縮だが、土曜日の早朝、毎週聴いているラジオ番組がある。本誌でもおなじみのプロゴルファー・タケ小山氏がパーソナリティを務めるインターFM897の長寿番組『Green Jacket』だ。
ゴルフ場に向かうゴルファーをメインに5時から4時間ぶっ通しでゴルフやスポーツ、政治にも鋭く切り込んでいく人気番組(注・宣伝ではありません)。ある日、タケ氏の軽妙なトークに耳を傾けていたら、突然「長南カントリークラブ・長南パブリックコース Presents タケ小山のPlay Smart!」なる新コーナーが始まった。
小湊鉄道運営のクラシックコースが、ラジオ番組のスポンサーに名乗りを上げるとは。タケ氏が長南CCの魅力を伝えつつ、ゴルフの楽しみ方やうんちくを披露。確か1回目はスタッフのインタビューだったな。
所在地の長生郡長南町は千葉県のほぼど真ん中。番組でも紹介されていた都内からの直行バスを利用して長南CCを訪れた。さすが小湊鉄道、ラグジュアリーなリムジンバスは快適だったな。
クラブハウスは平屋の造りで一見地味だが、レストランの開口部の採り方が秀逸。大きな窓は高さを抑えたことで、外に広がる新緑の樹々が水彩画のようで目に染みる。〝ピクチャーウインドウ〟ってヤツだな。
コースは元の地形を生かした林間丘陵。ハウスに展示されているジオラマを見ても、田畑の合間を縫うように進んでいく「里山コース」だ。
アウト1番は打ち上げていくやや左ドッグレッグのパー4。フェアウエーはたっぷり広く、朝から気持ちよくドライバーを振っていける。2、3番も特徴があるし、プレールートも飛距離や力量に合わせてチョイス可能。設計者・安田幸吉の「初級者にやさしく、上級者には難しい」というコンセプトは確かなようだ。
4番のティに上がって思わず足が止まった。左右から覆いかぶさるように続く樹々が回廊のようで、その樹々にセパレートされたフェアウエーがグリーンまで一直線に続いている。房総地区にこんな趣のあるコースがあったとは。ここでも安田の「30年間、草木を大切に育てれば最高のコースになる」との言葉が染みてくる。
その後もドッグレッグあり、谷越えありと変化に富んだレイアウト。各ホールのティーイングエリア脇は、ゴルフにまつわる金言をひとつずつ読ませるようになっており、白洲次郎や川崎肇といった日本のゴルフ黎明期を支えた面々まで登場。並々ならぬゴルフ愛と教養が感じられる。
ただし! クラシカルなコースだけあってグリーンはコンパクトだが、どうも設計当時より小さくなっているようなのだ。その証拠に、ガードバンカーがどれもグリーンから少し離れている。グリーン面が周囲の芝に浸食されてしまった結果に他ならない。
これからはラジオ番組の効果で目の肥えたゴルファーも増えるだろう。この辺のメンテナンスこそ、しっかりやってもらいたい。
●TEL. 0475-46-2311 ●開場 1978(昭和53)年10月10日 ●設計者 安田幸吉 ●ヤーデージ 18ホール、6806ヤード(ベントグリーン使用時、バックティ)パー72