ZAITEN2021年09月号
車谷暢昭とともに散った「中外製薬」中興の祖
中外製薬・永山治「東芝をクビ」で汚した晩節
カテゴリ:企業・経済
中外製薬 永山治名誉会長(写真は公式サイトから)
"堕ちた名門"東芝の経営混乱が深まるばかりだ。6月25日に開いた株主総会で、取締役会議長を務めていた中外製薬名誉会長の永山治(74)の取締役再任案が否決され、「経営立て直しの最後の砦」(経済産業省幹部)まで失ったからだ。
スイスの製薬大手ロシュとの資本提携を成功させ「中外の中興の祖」とされる永山。経産省と結託し「モノ言う株主」の外資系ファンドに圧力をかけた東芝前社長の車谷暢昭をひとり"悪者"に仕立てて追い出し、自らは「ガバナンス(企業統治)改革のヒーロー」を演じるシナリオを描き、株主の信任を取り付けようとしたが、その魂胆を見透かされ、国内の機関投資家や個人株主からも多くの反対票を浴びて惨敗を喫した。
永山は総会後、自分とは対照的に約77%の株主の賛成を得て再任された社長の綱川智ら生え抜き幹部に「後は新しいみなさんで」との捨て台詞を残したというが、残された東芝は今後、ファンドからの役員派遣や配当目当ての事業売却要求にさらされ、一層オモチャにされるのは必至の情勢だ。
「もう終わった話」--―。永山自身は恬淡とした様子という。だが、永山が敬愛し、戦後の占領期にGHQ(連合国軍総司令部)と国益をかけて渡り合った白洲次郎ならこんな無様な負け方は決してしなかっただろう。
CVC提案を一顧だにせず外資系株主の恨みで自滅
「車谷氏の存在が(不正の)ひとつの要因だったことは否めない。株主の信頼を損なった責任は決して無視できない。(改めて監査委員会で調査し)中身が分かれば、どういう対応が必要かを検討する」
永山は東芝の株主総会まで10日余りと迫った6月14日に開いたオンライン記者会見でこうまくし立て、車谷に対して民事訴訟を提起する可能性まで示唆し、取締役会議長を務める自らの正当性をアピールしようと躍起だった。普段は紳士然と振舞う永山をこれほど焦らせたのは、東芝株約10%を握る筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが選んだ3人の弁護士が数日前に公表した昨年の株主総会を巡る不正調査に関する報告書が「核弾頭級の衝撃的な内容」(東芝幹部)だったからだ。
......続きは「ZAITEN」9月号で。