ZAITEN2021年10月号
安倍晋三を「永久追放」せよ
【特集】上西充子インタビュー「ご飯論法」を駆使する安倍晋三の "詭弁"を伝えないメディアの罪
カテゴリ:政治・国際
上西充子 法政大学教授
安倍晋三政権の構造的問題は、菅義偉政権に継承される形で連続しています。しかし、安倍氏が総理を辞任して、表から消えたことで、「桜を見る会」などの個別の問題点は有権者から見えづらくなりました。それには、メディア側の責任も大いにあると思います。
新聞・テレビの政治報道は、首相をはじめとする有力政治家たちの答弁や会合など、「何を語ったか」と「何が行われたか」をメインに報じます。ところが、「何について語らなかったか」とか「何をしなかったか」は積極的に取り上げようとしません。実は、そうした言及されない部分にこそニュースバリューがあるということを、私は『政治と報道』(扶桑社新書)という本の中で書きました。
昨年12月、安倍氏は「桜を見る会」に関するそれまでの答弁について、「事実と異なる部分があることが判明いたしましたので、答弁を訂正する発言を行わせて頂きたい」と求め、国会に立ちました。しかし、肝心の発言は、どの部分が「事実と異なる」のかを具体的に説明する内容には全くなっていませんでした。唯一、すでに検察の捜査で明らかになっていた前夜祭の費用補填の事実を認めただけです。これでは到底「答弁を訂正する」とは言えません。
にもかかわらず、新聞の第一報は、「安倍氏は過去の国会答弁に『事実に反するものがあった』と認め、謝罪した」といった言い方で伝えました。そこだけを読むと、安倍氏がやっと自らの非を認めたかに思えますよね。これでは、実際にはなんら具体的に訂正していないのに、しれっと「説明責任を果たすことができた」と述べた安倍氏の思惑に乗ってしまいます。
安倍は攻撃的な饒舌家
つまり、「何を語ったか」を伝えるメディアのフィルターを通すことで、大事な情報が私たちに届かないことがあるのです。「朝ごはんは食べましたか?」と聞かれ、「ご飯(白米)は食べておりません」と言ってパンを食べてきたことを隠す「ご飯論法」に対し、報道側が政権の不都合な「パン」の方に光を当てることは、やり方次第で可能なはず。「言及していないから報じる材料がない」と報道側が考えてしまうと、政治権力の思う壺なのです。
◆プロフィール◆
うえにし・みつこ―--法政大学教授。「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行う。著書に『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)など。
......続きは、「ZAITEN」2021年10月号で。