ZAITEN2021年10月号

“業界唯一の負け組”業績悪化、不祥事続出の戦犯

明治HDを切り刻む「川村"かばん持ち"社長」の独裁

カテゴリ:企業・経済

2110_明治HD_CEO_川村和夫_サイトから.jpg 明治ホールディングス 川村和夫社長

 明治グループが隠しようもない不振に陥っている。  グループを統括する明治ホールディングス(HD)が今年5月18日に発表した2021年3月期の連結決算は、売上高が前期比4・9%減の1兆1917億円、最終利益が同2・5%の減となる656億円で減収減益となった。さらに8月12日に発表した今年4月からの四半期連結決算でも、売上高は前期比16%減の2359億円、営業利益は同20%減の186億円、最終利益で6・6%減の124億円となり、またも減収減益だった。

 だが、他の食品会社が明治同様に不振かといえば、そんなことはまったくない。

 乳製品市場での競合相手である雪印メグミルクの昨年度の決算は増収増益。森永乳業やカルビーも減収増益か増収増益にはなっている。食品業界全体で見れば、キリン、アサヒなどはいずれも増収増益だ。つまり明治は、コロナ禍の巣ごもり需要で総じて好業績を挙げている食品業界にあって「ひとり負け」に近い状態なのである。  明治HDは10年9月に長期経営指針「明治グループ2020ビジョン」を発表し、今年3月期までに売上高1兆5000億円、営業利益率5%以上を目指すというプランを掲げていた。だが、この壮大な目標も、結局は「絵に描いた餅」のまま終わったことになる。同社の予測によれば、22年3月期の売上高はさらに下がり14・1%減の1兆240億円、経常利益は同1・1%減の1090億円となる見通しだという。

「ヨーグルト神話」の終焉

 この不振の原因を、明治HDは医薬品部門において医療機関受診患者数が新型コロナの影響、薬価改定の影響により大幅に減少したこと、食品部門では前期後半にヨーグルト需要の「反動」があったことだと説明している。  確かに新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年の前半は、「インフルエンザ予防効果がある」と謳われる最大の看板商品「R‐1」を筆頭に、同社の機能性ヨーグルトの売り上げは急激に伸びた。だが、コロナとの闘いが始まって1年半が経ち、デルタ株など変異株の脅威が明らかになっている現在、「ヨーグルトを食べればコロナにかからない」などと考えている消費者はもはやいない。  そもそも、明治がことさらに強調するヨーグルトの健康増進効果にしても、ここ数年「過大評価」と指摘されることが増えている。

 NHKは健康番組「ためしてガッテン」19年11月20日の放送回で、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が人間の腸に住み着く「常在菌」と異なり、食べるのをやめると腸内から排出されてしまう「通過菌」であるがゆえに、継続的に食べ続けなければ効果がないという近年定説となっている説を紹介した。  また、東京大学医学部附属病院地域医療連携部助教・循環器内科を経て、現在は東京都内でクリニックを開業している総合内科専門医の稲島司氏も、18年3月刊行の著書『世界の研究者が警鐘を鳴らす「健康に良い」はウソだらけ』(新星出版社)においてヨーグルトの効果を過剰に評価しすぎることに警鐘を鳴らしている。

 同書が紹介する、米科学誌「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」掲載の論文によれば、ヨーグルトを「食べない」人と「ひと月~6週間に1~3回」食べる人、「1日に1回以上」食べる人では、身体的健康度スコアと精神的健康度スコアのどちらに関しても有意な差が見られなかった。また、ヨーグルトがアレルギー反応を抑制するという説についても、稲島医師はアレルギーの治療が「過剰な免疫を抑える」ものであることから、「ヨーグルトで免疫力を上げるという説と矛盾してしまいますね」と指摘し、その科学的根拠を否定している。

 もともとR-1は消費者庁からトクホ(特定健康補助食品)や機能性表示食品の認定を受けているわけではなく、それゆえにその科学的根拠の薄さを補うようにステルスマーケティング的な手法がたびたび駆使されてきたのは本誌が過去に何度か報じた通りだ。だがここにきて、R-1に限らずヨーグルトという食品そのものの健康効果についても疑問が持たれるようになっているのである。 就任4年で株価40%ダウン  明治グループ低迷の原因は、18年6月から明治HDの代表取締役社長の座にある川村和夫がグループの食品会社「明治」の社長に就任した12年以降に標榜してきた「選択と集中」路線にある。

 川村体制下の明治はかつて年間400種ほど出していた菓子類の新商品を約半分まで絞り込み、17年8月には50年以上のロングセラーにして最大の看板商品のひとつであったスナック菓子「カール」の東日本での販売も停止した。

 この時、川村はカールがカルビーのポテトチップスにシェアを奪われ続けていることを根拠に「ガラクタにしがみつくな」と吐き捨てたと言われるが、これを旧明治乳業出身の川村による、旧明治製菓の看板商品に対する〝遺恨〟と感じ取った社員も少なからずいたという。その一方で川村は、乳業系のヒット商品であるR-1には過剰に依存してきた。

] だが肝心のR-1のメッキが剥がれつつある今も、これに代わる商品を打ち出せずにいる川村体制に対して、市場は冷ややかな目を向けている。川村がHD社長に就任する前の17年には1万1000円に迫っていた同社株価は、今年8月20日現在では6810円。わずか4年で、実に40%近くも下がってしまったのだ。

......続きは「ZAITEN」10月号で。

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