ZAITEN2021年10月号
明確な放送法違反も「反省なし」厚顔無恥の経営委員会
NHK「経営委員会議事録を隠蔽」森下委員長"解任"の所業
カテゴリ:事件・社会
森下俊三 NHK経営委員長(写真は公式ページより)
NHK経営委員会による前代未聞の抵抗を経て、7月にようやく開示された議事録からは、放送法で禁じられている「番組介入」の実態が明らかになった。
本誌取材班は複数の関係者に取材を重ね、番組介入とその証拠となる議事録隠蔽の内幕に迫った。見えてきたのは、NHKを支配したい政権、資質と職責の自覚に欠ける経営委員会の無能ぶりである。NHK内部からは「このままではNHKは報道機関としての独立性を失い、現場の萎縮とモチベーション低下に歯止めがかからない」と危惧する声が上がっている。
「NHK経営委議事録隠蔽」事件の発端は、2018年4月に放送された「クローズアップ現代+(プラス)」の《郵便局が保険を"押し売り"⁉~郵便局員たちの告白~》。同番組では、日本郵政グループのかんぽ生命の不正販売を報じた。8月の続編の制作・放送に向けて、情報提供を求める動画をSNSに投稿し、これに日本郵政側が反応した。動いたのは、総務省で事務次官にまで上り詰め、日本郵政上級副社長(当時)に天下っていた鈴木康雄である。鈴木は、旧郵政官僚時代に放送政策課長も務めている。日本郵政側はNHK会長の上田良一(当時、元三菱商事副社長)に削除を求める抗議文を送る。動画は削除され、予定されていたクロ現の続編も放送延期となった。
明確な放送法違反
NHK経営委側には、鈴木と旧知の経営委員長代行(当時現委員長)の森下俊三(元NTT西日本社長)がいた。日本郵政側は、今度は会長ではなく経営委に対して書状を送る。内容は「ガバナンスの検証」を求めるもの。実は、番組チーフ・プロデューサーが日本郵政に説明に出向いた際、「番組制作に会長は関与しない」と発言したことをとらえ、日本郵政側は「NHKのガバナンス問題」にすり替えて抗議を続ける手に出る。経営委もそれに乗り、あくまで"ガバナンス強化"の名目で会長の上田を「厳重注意」した。極めて異例の事態だった。これらは視聴者が知る術のない非公開・水面下で行われたが、毎日新聞がスクープする形で明るみに出た。
かくして議事録の全面開示を求める視聴者に対し、頑なに拒み続けるNHK経営委の異様な対応が始まる。この「厳重注意」は、上田が再任されず、1期3年で会長を退任することにつながっていく。後任会長には、みずほ銀行出身の前田晃伸が就いた。経営委員長代行だった森下は、石原進(元JR九州会長)に代わって委員長に就任し、議事録隠蔽を主導していく。
......続きは「ZAITEN」2021年10月号で。