ZAITEN2021年10月号
中間配当復活も“株価”の上値は重い
日本製鉄「史上最高益」の線香花火
カテゴリ:企業・経済
日本製鉄 橋本英二社長(写真は公式サイトより)
豈図らんや、日本製鉄の業績が急回復している。022年3月期(通期)の連結最終利益予想が3700億円と新日本製鉄時代を含め「史上最高益」になると発表。世界的な鉄鋼需要回復と国内高炉削減による固定費引き下げが奏功する形だ。ただ、期初から1300億円もの大幅な上方修正にもかかわらず、株価の動きは鈍く上値は重い。中国はじめ海外メーカーとの競争は依然厳しく、脱炭素化など先行きは難題山積。「消えゆく直前の線香花火のようなもの」(大手証券アナリスト)と、周辺の見方は冷ややかなのだ。
中国製鋼板の追い上げ
通期業績の上方修正は8月3日午後3時からの第1四半期(4〜6月期)決算発表時に行われた。株式取引終了後の同日の日鉄株終値は1974円。影響が及んだのは翌4日からで始値から2000円台に乗せ、一時前日比10%高の2176・5円まで買い進まれたが、その後は俄かに失速。年初来高値は5月11日の2354・5円だったが、8月23日現在1909円にとどまっている。
同社は20年3月期に構造改革に伴う巨額減損計上などで過去最悪、4315億円の最終赤字に転落し、21年3月期も生産設備休止の前倒しなどで最終損益は324億円の赤字だった。今期の黒字転換は織り込み済みだったとはいえ、わずか3カ月前の期初予想(2400億円の黒字)を5割以上も上回る。サプライズ効果は十分で、おまけに前期はゼロだった中間配当を55円にすることを併せて公表。「株価が急伸する条件は揃っていた」(前出アナリスト)。
だが、投資家の意識は目先の業績回復ではなく、同社をはじめ国内高炉メーカーに吹きつける様々な"逆風"の方へ引き寄せられたままだった。
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