ZAITEN2021年11月号
ネトウヨが熱狂する女政治家の正体
【自民党新総裁特集】古谷経衡「高市早苗に熱狂するのは『ネトウヨだけ』」
カテゴリ:政治・国際
高市早苗 前総務大臣(写真は公式サイトより)
本稿が読者の手に渡っているときは、すでに自民総裁選の雌雄は決している。それにしても、総裁選の台風の目になったのは高市早苗であったことは間違いないであろう。
菅義偉前総裁が不出馬を表明した9月3日「以前」の段階で菅と単騎決戦を辞さない構えで早々に手をあげたのが高市であった。総裁選全期間を通じて、強固な保守界隈とそこに追従するネット右翼界隈(以下、保守界隈)は、驚くほど全面的に高市支持一色になった。このように保守界隈が、特定の候補への支持一色になったのは2012年総裁選での安倍晋三以来、実に9年ぶりである。
自民党の党員・党友でないにも拘らず、SNSには「#高市早苗を総理大臣に」のタグが乱舞した。なぜここまで保守界隈が高市一色になったか。原因は稲田朋美の「転向」にある。
第2次安倍政権下で安倍チルドレンの前衛として一挙に次期総理候補の期待を集めた稲田は、クールジャパン担当大臣を皮切りに防衛大臣も務めた。
当時稲田は「保守のジャンヌダルク」と呼ばれるほどの人気を誇り、愛称は「ともちん」。元々は歴史修正主義的な「日本軍百人切り訴訟」で無理筋な日本軍将校の名誉回復運動を行ったこと(原告団長。敗訴)が、安倍の目に留まった形である(福井1区)。よって保守界隈は翼賛的に稲田を支持した。しかし、稲田は防衛大臣として「品位に欠ける」とされた服装でバッシングを受け、保守界隈からも批判が噴出した。
防衛大臣としての素行は保守界隈が「真の保守か否か」を図るリトマス試験紙のひとつである。それまで強烈な保守界隈からの支持を受けて有頂天になっていた稲田は身内から冷や水を浴びせられ、徐々に保守界隈から距離を置くようになった。昨年、稲田は「選択的夫婦別姓」を容認する方針に「転向」し、LGBTにも理解を示す立場になり「稲田はパヨク」と界隈から見放された。
珍妙な「サナエノミクス」
稲田の「転向」で席を埋めたのが高市だ。高市は強烈無比の右傾世界観を開陳し、中・韓への敵愾心、靖国公式参拝、生活保護不正受給追及、自虐史観の是正、夫婦別姓反対など、如何にも保守界隈が好みそうなジャーゴンで埋め尽くされている。保守界隈が、高市を代入したのは必然であった。
......続きは「ZAITEN」2021年11月号で。