ZAITEN2021年11月号
本誌発売前に謎の“お詫び”記事掲載
記者情報漏洩を詫びた「読売新聞」の読者不在
カテゴリ:事件・社会
【2021年10月1日編集部注】
またしても、本誌発売日直前の動きだった――。
9月30日、読売新聞東京本社は、取材情報を漏洩した元社会部記者の懲戒解雇を決定。実名を記載してまで公表した上で、本誌11月号発売当日の本日10月1日の朝刊でも《本紙記者 取材情報漏えい 懲戒解雇――週刊誌記者ら3人に11回》と題した記事を掲載した。
同記事でも元記者の実名を記載し、情報漏洩の詳細、そして、女性記者に「不適切な関係」を迫ったこと、果ては飲食費(約3万4000円)やタクシー代(約8万4000円)を不正に会社に申請・使用していたことまでを詳らかにしている。そして、編集局総務を譴責、前社会部長を出勤停止10日間の懲戒処分にするとしている。
本誌が前号10月号の内容および、8月に読売新聞が発表した調査結果などを検証した記事を掲載する11月号の発売と奇しくも同じタイミングでの発表。読売の対応には、記者たちに対する綱紀粛正はさることながら、情報統制とでも言うべき情報管理の徹底ぶりを内外に示す真意を感じる。
そこで、本誌前号10月号の記事を公表したい(下記をクリックしてください)。
読売新聞グループ本社・山口寿一社長
8月27日、読売新聞朝刊の社会面に《本紙記者が情報漏えい 週刊誌女性記者らに》と題された〝お詫び〟が掲載された。
〈読売新聞東京本社社会部の男性記者(32)が、検事総長秘書官によるセクハラ疑惑などの取材で得た情報を週刊誌の女性記者らに漏えいしていたことが分かった。今後、調査を続け、全容を解明したうえで厳正に処分する〉
要約すると、司法記者クラブ所属の記者Xが、自身や同僚が取材で得た検察情報を週刊誌の女性記者Aと、テレビ局の女性記者Bに漏洩。またXはAに対して不適切な関係を迫っていた。Xは漏洩の理由について「女性記者によく思われたかった」と話しているという。これらの事実は社内調査によって判明したとしている。 一見、社内不祥事を公表しているようだが、実はこの〝お詫び〟が出た理由は、本誌が読売に取材をかけたからに他ならない。
本誌10月号(9月1日発売)掲載の《W不倫「読売新聞」検察記者"乱行"の末にメモ漏洩》において、読売記者Xがフジテレビの女性記者Bとダブル不倫を繰り広げ、取材情報を漏洩し、複数の週刊誌の女性記者に対してもネタの提供をエサにセクハラを働いていたと報じた。Xの情報漏洩が読売社会部上層部の知るところとなり、花形の検察担当から『読売中高生新聞』へ部署異動になっていたことも伝えた。
本誌編集部が8月中旬、読売側に事実確認を申し入れたところ、読売新聞グループ本社広報部は「8月20日現在、調査中」とした上で、Xの所属の事実だけを認め、他の質問には回答しなかった。
そうした中、読売新聞が本誌発売前に"お詫び"を掲載したというのが、事の経緯である。
読売としては先んじて火消しに走ったつもりだろうが、「記事の意味が分からない」という声が上がり、メディア関係者らの間でも波紋を呼んだ。結果、複数の媒体が同件を取り上げ、話を広げることになったのだから皮肉である。
一体何を詫びているのか
9月2日発売の『週刊文春』(9月9日号)は、《フジ 新潮 女性記者に迫った読売エリートの卑劣すぎる手口》と題して報道。読売グループ本社広報は文春に対して「『ZAITEN』から取材を受け、初めて会社として知ることとなり、情報漏えいの一部が事実と判明した」と答えている。
また文春によると、Xのセクハラの被害者のひとりは『週刊新潮』の女性記者であり、漏洩した情報は昨年9月24日号に《「検事総長」就任祝宴で「セクハラ事件」》との題で掲載された。昨年7月、林眞琴検事総長の就任を祝う宴席にて、側近の秘書官がセクハラを働き、内々で異動にしたものの、検察庁はその事実を世間や大臣に隠蔽していたとする内容だ。
ところが、読売新聞はこの検察スキャンダルを紙面で一文字も報じなかった。件の"お詫び"においても〈本紙は記事を掲載しなかったが、週刊誌には同月中旬、不祥事を伝える記事が掲載された〉と触れるのみで、そのこと自体を謝罪する言葉は見当たらない。
......続きは「ZAITEN」2021年11月号で。