2021年10月号

月刊ゴルフ場批評48

「つくばねカントリークラブ」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

つくばねカントリー①.jpgこの号が出る頃はパラリンピック終了間近。賛否両論のオリパラだったが、日本の「おもてなし」を今できる範囲で頑張ったんじゃないかな。そこで今回は、近場で日本的な雰囲気を感じられるコースを取り上げることにした。
 茨城県で唯一の独立峰といえる筑波山。昨年、何十年ぶりに山頂まで登ったが、標高877㍍で、日本百名山の中で最も低い山と油断していたら、急斜面や切り立った岩場も多く筋肉痛になった。

 その際、麓に見えていたのが、「つくばねカントリークラブ」だ。コースの広がる南斜面は標高150~250㍍。筑波山は真っ平な関東平野の北端にあり、田園地帯から唐突に山地が始まる特異な地形だが、コースへの進入路もいきなり急峻な峠道が現れ、みるみる標高が上がっていく。
 カーブの連続に嫌気が差したころ、突如、平屋のクラブハウスが現れた。建物はくたびれているが、なんとなく上品さが感じられる。
 ハウス内の壁を見上げると、筑波山をバックに老農夫が描かれた木版画。コースの現社長の父で、農水相まで務めた地元の名士・赤城宗徳氏が愛した地元出身(厳密には筑西市)版画家である飯野農夫也氏の作品だそうだ。ハウス周辺にも飯野氏の歌碑や、奇岩の多い筑波山らしく油売りの口上に登場するガマの石像がさりげなく置いてある。

「つくばね」は「筑波嶺」と書き、筑波山の雅称。万葉集にも詠まれた古びた名を付けたあたり、名門として名高い旧制水戸高等学校(現・茨城大学)出身者を中心に造られたコースたる所以かもしれない。
 気品を感じられるのは悪くないが、山麓に建てられただけあってハウス周りはかなり手狭。マスター室前の練習グリーンを挟んだ通路には乗用カートが並べられているが、アウト、イン共用で5台ほどしか停められない。
 リモコンだから良いものの、スタートホールまでのカート道もギリギリ幅。通路脇には「見晴らしライン」と書かれた看板があり、見上げた空には筑波山の男体、女体の双峰が眼前に迫ってきた! その絶景にここは許すとするか。
 1番ホールは筑波山の頂を右に見ながら打ち下ろしていく爽快なミドルホール。フェアウエーもまあまあ広いぞ。その後のホールも激しい傾斜はインターバルで吸収していく巧みなレイアウトで、穏やかなホールが続く。

 インに入ると狭いホールも何カ所かあったが、筑波山の中腹でプレーしていると思えばそれほど窮屈には感じない。
 残念だったのはグリーンだ。2ベントといいながら、サブグリーンは荒れ果てて修復不可能。メイングリーンもほぼ半分のホールで土が剥き出しで壊滅的。8月の酷暑にやられてしまったそうだが、これではグリーンと呼べない。
 フェアウエーのメンテナンスはまずまずだし、茶店も立派な瓦葺で、池には鯉まで泳いでいる。資金がなさそうには見えないから、真剣にグリーンのメンテナンスを考えたほうがいい。何とか秋の紅葉シーズンまでには、まともなグリーンに修復してほしいものだ。

●所在地 茨城県つくば市神郡2726 ●TEL 029-866-0224 ●開場 1974(昭和49)年2月11日 ●設計者 福井八十八、森次郎 ●ヤーデージ 18ホール、6302ヤード、パー72

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