ZAITEN2022年1月号
西武建設の売却まで視野に
西武HD「後藤王国」資産切り売りで崩壊一路
カテゴリ:企業・経済
資産売却、側近追放で王国維持(後藤高志社長)(写真は公式サイトより)
新型コロナウイルス禍に苦しむ私鉄大手の中で、業績回復の道程が最も険しいと言われる西武ホールディングス(HD)。沿線不人気が祟って鉄道の利用客は低迷が続く上、ホテル・レジャー事業はその鉄道事業をさらに上回る赤字を垂れ流す。在任15年で「ワンマン王国」を築き上げた社長の後藤高志(72)は資産切り売りでコロナ収束後の需要回復を待つ構えだが、後継確実とされた腹心の部下を21年春に更迭するなど、「自らの地位保全に汲々」(グループ関係者)とする有り様だ。
無策を糊塗する「資産売却」
《西武HD、建設子会社売却 財務悪化で事業再編》。10月9日、日経が1面で報じた記事にゼネコン業界がどよめいた。売りに出されるのは「西武建設」。年間売上高686億円の中堅ゼネコンだ。「大した技術力があるわけではないが、プリンス系ホテルやビル、レジャー施設の施工案件があると親会社から必ずといっていいほどJVに加えるよう指示がくる」と大手ゼネコン幹部は苦笑する。
会社設立は1941年に遡る。創業時の社名は「東京耐火建材」で建設関連資材を扱う会社だった。戦後、建設業に進出し、祖業の建材事業は「西武建材」として分離。現社名の「西武建設」になったのは61年である。創業2代目の堤義明(87)が西武建設、西武建材両社の会長を長く兼務するなど、グループ内では重きを置かれた会社だった。堤は04年の総会屋事件とインサイダー取引事件で失脚。05年にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)から後藤が再建役として送り込まれてからも、工事の発注先であるゼネコンにJVパートナーとして西武建設を押し付ける、キックバックのような"利益循環商法"は続いた。
しかし、昨年来のコロナ禍で西武HDは鉄道の乗客、ホテル・レジャー施設の利用客がともに激減。21年3月期連結決算は売上高が前期比39%減の3370億円、最終損益が723億円の赤字に転落(前期は46億円の黒字)。資金繰り対策で期中に1600億円を新たに借り入れたほか、西武鉄道とプリンスホテルの両子会社が合計800億円の優先株を発行して糊口を凌いだ。
そこで浮上したのが、銀行屋の後藤が得意とする資産売却。前例はある。
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