ZAITEN2022年1月号
職場ウォッチ
キーエンス「就業中は私語禁止」モチベは高年収のみ
カテゴリ:企業・経済
中田 有社長(写真は公式サイトから)
キーエンスは、センサ、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用解析機器、ビジネス情報機器などの開発、製造販売を手掛けるファクトリー・オートメーション(FA)の総合メーカー。1974年に「リード電機」として設立され、86年に〝Key of Science〟に由来するキーエンス(KEYENCE)に社名変更された。同社製品は自動車・半導体・電子・電気機器・通信・機械・化学・薬品・食品など幅広い業界で採用され、世界46カ国230拠点から30万社にも上る取引先に供給。海外売上比率は50%を超える。
一般知名度は低いが、投資家や就活生の間では高名。2021年6月には国内企業の時価総額ランキングでソフトバンクグループ(SBG)を一時上回り、トヨタ自動車に次ぐ国内第2位に躍り出た。21年11月中旬時点ではソニーグループに次ぐ第3位となっているが、ソニーグループの17兆9385億円に対し、キーエンスは17兆7006億円(いずれも21年11月17日現在)と僅差であり、時価総額ランキング2位争いの常連である。
21年3月期の連結売上高は5381億円と、5兆6281億円のSBGには遠く及ばないが、50%超の営業利益率を誇り、株価も7万円台と上場来高値水準。直近期業績も上期こそコロナ禍で減益となったが、下期は回復基調で、第4四半期は過去最高益である。
好業績と高収益を支えるのは、「最強集団」と言われる営業担当者たち。キーエンスでは製品を詳しく知る自社の営業担当者が顧客に直接販売する手法を採る。営業手法は徹底的にマニュアル化され、営業担当者の行動は徹底的に数値化される。過去の行動実績は全てデータベース化されているので、売れない人に何が足りないのかは数値で分かる。足りないことを実行すれば、かなりの確率で成果が現れる、というわけだ。
顧客の課題解決ニーズを直接把握して開発した製品を揃え、同種製品でも他社より高付加価値を認められやすい。また、代理店を通さない直販のため、中間マージンもかからない。
20年の平均年収は1751万円(平均年齢35・8歳)だが、極端に高い社員が平均を引き上げているのではなく、ほとんどの社員の年収が2000万円前後に集中しているという。「最少の資本と人で最大の経済効果を上げる」「全ての判断は市場原理・経済原則に基づいて行う」という考え方が浸透しているという職場とはどのようなものか。
......続きはZAITEN1月号で。
◆プロフィール◆
新田龍の働き方改革総合研究所
にった・りょう―ブラック企業問題の専門家。大学卒業後、複数の企業で事業企画、営業管理職、人事採用担当を歴任。仕事柄、数多くの企業と関わりを持つなかで事業運営手法にまつわる知見を深める。