ZAITEN2022年1月号
27年開通は「絶望的」でも発表なし
JR東海「リニア新幹線」進むも地獄・退くも地獄
カテゴリ:企業・経済
引くに引けないリニア事業
さる10月27日――。JR東海が東京(品川)-名古屋間の2027年開通を目指すリニア中央新幹線の工事でついに死亡事故が発生した。事故現場は工区のひとつ、岐阜県中津川市の瀬戸非常口(斜坑)が発破作業後に崩落し、作業員Aさん(44歳)が死亡、Bさん(52歳)が左脚を折る重傷を負った。発破の8分後に残薬有無の確認のために切羽(掘削の最前面)にAさんが近づくと、トンネル上部から岩石が落下し足を埋め、Bさんが救出に向かうとさらに大きな岩塊が落下するという大惨事だった。 さらに11月8日にも、長野県豊丘村の「伊那山地トンネル坂島工区」の坂島非常口(斜坑)で崩落事故が発生。発破の準備作業中にトンネル上部から土砂が崩れ、1人が軽傷を負った。
リニア関連工事の事故はこれが初めてではない。立て続けに発生した今回を含め、4度目となる。
1度目は17年12月15日。長野県大鹿村と松川町とを結ぶ狭隘な県道の拡幅工事の一環として行った自動車用トンネル工事で、出口付近の法面が県道側に崩落。復旧までの1カ月間、大鹿村へのガソリン供給は途絶、住民生活と観光業に深刻な影響を及ぼした。
2度目は19年4月8日。今回の瀬戸非常口から3・5㌔離れた中津川市の山口非常口(斜坑)の地上部で直径8㍍、深さ5㍍の陥没が発生。掘り始めたらとても柔らかい地盤だと分かったのに、補助工法は「不要」と判断して掘り進めた結果だった。
そして今回の2度の事故。原因は調査中だが、JR東海が公表した過去の資料から筆者は以下の事実を掴んだ。
JR東海が14年8月に公開した「環境影響評価書」によれば、瀬戸非常口も坂島非常口も地質調査は文献調査だけ。つまり、実地調査はしていないのである。 また18年12月に工事計画を示した「中央新幹線瀬戸トンネル新設工事における環境保全について」では、瀬戸非常口の掘削開始は20年3月頃の予定だったが、整備ヤードでの巨岩の出現で作業が難航し、実際には21年6月と、1年3カ月も遅れた。さらに坂島非常口に至っては、予定よりも実に4年近くも遅れての掘削開始になっているのだ。
......続きはZAITEN1月号で。