ZAITEN2022年2月
なぜ、遊園地のトラブルは止まらないのか?
富士急ハイランド「事故多発」に堀内家支配
カテゴリ:企業・経済
富士急行が運営する「富士急ハイランド」が異常事態である。
2021年8月17日。ジェットコースター「ド・ドドンパ」で4名の骨折事故が判明した。20年12月に女性が怪我を負ったのを皮切りに、5月に2人目の男性、7月に3人目の女性、8月に4人目の男性と事故は続いた。富士急の公式ホームページによれば、ド・ドドンパは〈発射1・56秒で時速180km!天井知らずのスピードキング〉と紹介されている絶叫マシンである。
事故はこれだけにとどまらない。21年8月31日、ド・ドドンパで新たに2人の重傷事故が公表されると、富士急ハイランドは会見を開き、岩田大昌社長が「多大なる迷惑、心配をお掛けした。心よりおわび申し上げる」と謝罪。9月3日には慶応大学教授の上山信一氏を委員長とする第三者委員会の立ち上げが発表された。 11月4日、第三者委は「利用客への注意喚起の方法に改善の余地がある」などとする中間報告を公表したが、そのわずか2週間後の11月18日、今度は別のジェットコースター「FUJIYAMA」で骨折した女性が、同月21日には複数のアトラクションを利用して圧迫骨折した女性が被害を申し出た(発表は22日)。
トラブルはさらに続く。11月24日、高さ50㍍の大観覧車で係員がドアを閉め忘れ、利用客2人の乗ったゴンドラがそのまま1周するという事故が発生。〈お客様にお怪我はありませんでした〉と能天気にリリースしたが、命に関わる重大インシデントである。
再三にわたる要請の不毛
富士急で頻発するトラブルを行政はどう捉えているのか。国土交通省・住宅局建築物防災対策室の担当者が説明する。 「ド・ドドンパの事案については、山梨県を通じて報告を受け、調査部会において、現地調査の実施などで事故原因の究明を進めており、原因究明までの運行停止など事故調査への協力を求めています。併せて、報告が遅れた経緯等を聴取するとともに、利用客向けの問合せ窓口の設置と丁寧な対応を要請しています」
しかし、国交省の役割はあくまで原因究明に絞られ、直接要請を出す権限はない。そこで、監督する立場にある山梨県の建築住宅課担当者に話を聞いた。 「最新の対応としては、11月24日の大観覧車の扉開けっ放しトラブルがあったその日に、再発防止策の提出と運行停止を文書で要請しました。同月26日には、22日の女性骨折の件についての情報を詳しく聞くため来庁を促しましたが、富士急の担当者は来ませんでした。そこで29日に要請文書を出しました。負傷を負わせた疑いのある遊戯施設に関しては徹底調査を行い、安全が担保されるまでは運行を中止する文書を出しました」
県の来庁要請に従わなかった件に関しては、12月1日付の産経新聞記事で「すでに(メールで)説明しており、来庁して説明する必要はない」と富士急ハイランドの担当者が答えている。監督する県を舐め切った対応と言える。 「要請は命令ではありません。建築基準法に違反するものでなければ、我々としてもそこまで踏み込むことはできない。しかし、県としては非常に重く捉えています。最初から我々の要請に従ってきちんと改善していれば、その後の事故も防げただろうと」(同)
指摘されるガバナンス不全
再三にわたる行政の要請に従わず、重大インシデントを繰り返す富士急だが、そんな企業体質はどこに起因するのだろうか。山梨政界の関係者は、富士急の堀内光一郎社長(61)を頂点とする同族支配のガバナンス不全を指摘する。
......続きはZAITEN2022年2月号で。