2022年2月号
月刊ゴルフ場批評52
「大阪ゴルフクラブ」批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
新年が明けても、まだまだ予断を許さないコロナ禍だが、2022年こそ明るい年になって欲しい。その希望を込めて、新年1発目は「西の川奈」と名高い、関西随一のシーサイドコース「大阪ゴルフクラブ」だ。
ラウンド当日朝、東京から出発。久しぶりの飛行機で、空港での手続きに不安もあったが、平日朝の機内はガラガラだった。
関西国際空港から南海空港線や特急サザンに揺られ、30分ほどで最寄り駅に到着。場所はほぼ和歌山県との県境で、大阪湾の南、紀淡海峡の入口に面し、古くから「淡輪(たんのわ)」の名称で親しまれてきた景勝地だ。
クラブハウスを一歩出ると、木々の向こうには鮮やかなフェアウエー、グリーン、奥には真っ青な大海原が拡がり、「西の川奈」の雰囲気満載といったところ。
少し歴史を紐解くと、戦前の昭和12年に関西ゴルフ界の重鎮が発起人となってクラブが設立され、名匠・上田治氏の設計による関西初のシーサイドコースとして鳴り物入りでオープン。
しかし、コースの一部が戦時中に軍に接収され農地となり、戦後の再開には苦労を重ねたという。元の4ホールを公園施設として提供することで自治体と合意し、新たに3ホールを造成して何とか再開に漕ぎ着けた。
シーサイドコースといっても、実際に海岸線に接しているのは約半分のホール。しかし、海の見えないホールを終えると、突如として紺碧の大海原が現れる。ダイナミックに展開するコースと、見え隠れする海岸線。連続する緑と青のコントラストには、魂を揺さぶられる心地よさがある。
例えば名物7番。ティーイングエリアからは小さなマウンドにしか見えないフェアウエーに向かって激しく打ち上げていくが、登り終えた途端、グリーン奥の地平線と奥の水平線が重なるように大パノラマが広がる。
一方、ハウス正面から海に向かってストレートに打ち下ろす3番は、渓谷のようにフェアウエーがグリーンまで続き、その奥に海がほんの少し姿を覗かせている。その青色がわずかしか見えないから存在感は抜群だ。
計算され尽くしたレイアウトは、戦前に造られたものとは思えない。完全に脱帽だ。
さらに、名物の浜風がプレーヤーを悩ませ、加えて高麗グリーンながら素晴らしいメンテナンスのために、下りの順目は手に負えない。これぞ一流であり名門コースと言われる所以だろう。
とはいえ、なぜか従業員の対応や雰囲気はフレンドリーで名門らしさは感じられない。また、アクセス難が関西ゴルファーに敬遠されているようで、集客にはかなり苦労しているという。隣ホールに打ち込んでも挨拶もしないセルフプレーの組も多く見受けられた。
以前から経営難が続き、南海電鉄が母体となってからはネット予約を可能にし、ビジターも幅広く受け入れているようで、ある意味致し方ない。しかし、日本でも数少ない本格的シーサイドコースだけに、先達の残した財産をしっかり守っていってほしい。
●所在地 大阪府泉南郡岬町深日31 ●TEL. 072-492-2011 ●開場 1938(昭和13)年7月25日 ●設計者 上田治、松山桂司 ●ヤーデージ 18ホール、6402ヤード、パー72