ZAITEN2022年03月号
ソニー、ニトリ、信越化学、富士通、JR東海、コーセー……
【投資単位特集】「最低投資額高額企業」アンケート調査
カテゴリ:企業・経済
東京証券取引所は「有価証券上場規程」で投資単位(単元株式100株購入の際の最低投資金額)を〈5万円以上50万円未満となるよう、当該水準への移行及びその維持に努めるものとする〉(445条)と定めている。これはあくまでも"努力目標"であるが、投資単位が50万円以上の場合、上場企業は〈事業年度経過後3か月以内に、第445条に規定する水準へ移行するための当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示しなければならない〉(同409条)。
このため、投資単位が50万円を上回る各社は「考え方・方針」を開示している。例えば、最低投資金額が750万円超(今年1月7日終値ベース、以下同)と上場企業中トップの空圧制御機器メーカー、SMCは株式の流動性は確保されているとした上で、投資単位の引下げについては〈費用対効果も勘案して、今後とも慎重に検討〉するとリリースしている。一方、〈現時点での投資単位は適正〉であり、〈従って、現時点での投資単位の引き下げは検討しておりません〉と断言する4位のファーストリテイリングには、東証が強いる努力目標など、歯牙にもかけない強固な意志すら感じる。
もっとも現行制度では、企業は仮に投資単位が50万円以上を上回ったとしても、通り一遍のリリースを出しておけば事足りる。しかし、努力目標だからと言って放置するような姿勢は、新たに株主になろうとする個人投資家の存在を顧みていないと同時に、コンプライアンス意識の欠如を公に晒していると言わざるを得ない。
そこで本誌特集班では、最低投資金額が高額である主な企業にアンケート調査を実施した。開示内容を踏まえた上で、①リリースが投資単位を50万円以下に移行するための考え方・方針を示していないのではないか、②東証の上場規程を満たしていないのはコンプラ意識の欠如ではないか、③投資単位が50万円を大幅に上回っているのは「個人投資家を排除する」との考えか、④「投資から貯蓄へ」という国の方針に逆行しないのか―といった項目を質した。
同じ文言を繰り返す任天堂
最も多かったのが「開示通り」という回答。1位のSMC、6位のテクノクオーツ(半導体製造装置用部品製造)、7位のエスケー化研(建築塗料等製造)、9位のディスコ(精密加工装置製造)、12位のダイキン工業、11位のシマノや13位のファナックも同様ながら、法令は遵守しているとした。
8位のベイカレント・コンサルティングも基本的に開示通りだったが、〈株式分割が必要と判断した際には、速やかに開示する〉と回答、それは当然の義務である。
そして17位の富士通は〈投資単位の引き下げは不要〉という開示をコピペしただけ。東証のシステムベンダーが、その基準に従わないのはどういう了見なのか。
上場3475社の93・1%(昨年9月末時点)が東証の基準を満たす状況にあって、開示内容程度では、投資単位の引き下げを行わない理由を説明し尽くしたとは言えない。そのためか、「現状でも個人投資家と十分に向き合っている」と答える企業もあった。
......続きはZAITEN3月号で。