ZAITEN2022年03月
洋上風力発電の“価格破壊”で暗雲――
エネオス「杉森会長独裁」に迫る巨額減損
カテゴリ:企業・経済
杉森務会長(写真は公式サイトより)
「クリスマスイブの惨劇」――。
昨年12月24日に公表された再生可能エネルギー海域利用法に基づく秋田県や千葉県沖の3海域での洋上風力発電プロジェクトの事業者選定結果は、こんなおぞましい呼び名がつくほどエネルギー業界を震撼させた。経済産業省と国土交通省が実施したこの第1回洋上風力の入札では、いずれも三菱商事主導のコンソーシアム(企業連合)が落札したが、驚くべきは売電価格の安さだった。
入札の上限は1㌔㍗時当たり29円に設定されたが、三菱商事系コンソーシアムは11・99~16・49円と、上限の半値からそれ以下で競り落とした。今後10カ所以上の海域指定が予定されており、「今回敗れた企業連合にもリベンジのチャンスはある」(経産省幹部)とは言うものの、千葉県沖の入札で敗れた東京電力ホールディングス(HD)幹部は「参入計画そのものを抜本的にリセットしなければならない」と呻く。
会長杉森の一声で資産査定なしにJRE買収
とりわけ、洋上風力ブームに煽られて、米証券会社ゴールドマン・サックス(GS)の言いなりに昨秋、再生エネベンチャー企業を「高値掴み」した石油元売り最大手のENEOS(エネオス)HDには痛恨の極みだろう。 独裁者として君臨する会長、杉森務(1979年旧日本石油)の「再エネ事業をテコ入れせよ」という鶴の一声で、純資産400億円弱の再エネベンチャー、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)を2000億円も投じてGSから買収したからだ。のれん代が1600億円に上る中、洋上風力を「資金回収の切り札」と期待。だが、今回の三菱商事による"価格破壊"でそんな皮算用は通用しなくなり、今後は巨額減損処理まっしぐらの状況にある。
......続きはZAITEN3月号で。