ZAITEN2022年03月号
産業集積地「名古屋」を捨てる所業
三菱UFJ「中京銀行」の次は「旧東海銀行斬り」
カテゴリ:企業・経済
三菱UFJ銀行半沢淳一頭取(写真は公式HPより)
昨年末に発表された愛知銀行と中京銀行の経営統合計画。「愛知県内で融資シェアトップとなる攻め統合だ」(愛知銀行頭取の伊藤行記)という当事者のアピールとは裏腹に、再編劇の実態は、中京銀の筆頭株主である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)による「系列地銀斬り」(業界筋)であることは明白だ。
旧東海銀行と旧三和銀行が合併した旧UFJ銀行は2002年に中京銀が経営危機に陥った際、資本支援を実施。その見返りに引き受けた中京銀株式(約39%)はMUFG発足後も残った。地銀株の保有が国際的な自己資本比率規制に対応する上で"足枷"となる中、MUFGは15年ごろから中京銀斬りに向けて嫁ぎ先を必死に探してきた。
今回の愛知銀との統合は「7年越しの悲願達成」(担当幹部)というわけだが、13年に平野信行(1974年旧三菱銀行)が社長に就いて以降続く傘下の三菱UFJ銀行(MUBK)の国内業務縮小路線には、より大きな"続編"がありそうな雲行きだ。旧三菱銀出身の元役員によると、「名古屋金利」と呼ばれる苛烈な低金利競争で採算が悪いMUBKの旧東海銀行部門を本体から分社した上で、「他社に丸ごと売り払ったり、名古屋系の大企業との合弁地銀に衣替えしたりする案」が構想されているという。
平野が相次ぐ東南アジアの現地銀行買収で膨らませた海外銀行ビジネスの維持や、行内で「ITオタク」と揶揄されるFG社長の亀沢宏規(86年同)が熱を上げるフィンテック事業の推進に向けた資本余力を確保するには、この「旧東海銀斬り」プランの実現が不可避とされる。旧UFJ銀誕生で東海銀が消滅して今年で20年。旧東海銀出身者はすでにMUFGやMUBKの主要ポストから排除されたが、旧三菱銀エリートの冷徹な資本の論理はそれだけでは満足せず、名古屋の名門都銀を名実ともに消し去ろうと企んでいる。
「名古屋離れ」の第1弾
「中部地区は我々にとってマザーマーケット。この地域の発展に貢献したい」―--。昨年11月下旬、名古屋最大の繁華街である中区錦3丁目(錦三)にある旧東海銀本店跡地に三菱UFJ銀名古屋ビルが竣工した。開業式典で頭取の半沢淳一(88年同)はこう愛嬌を振りまき、詰めかけた取引先関係者や、愛知県知事の大村秀章ら来賓からは拍手が沸き起こった。
ところが、そんな舌の根も乾かない12月上旬に発表されたのが、MUBKの「名古屋離れ」第1弾とも言える中京銀と愛知銀の統合劇だった。半沢や亀沢周辺の幹部は「従来からグループで国内地銀を経営するつもりは全くないと公言してきた」と嘯くが、名古屋に拠点を置くMUBK取引先企業はざわついている。
......続きはZAITEN2022年03月号で。