ZAITEN2022年3月号
東急 車内でバンジージャンプの映像を流すのはやめて!
カテゴリ:クレーム・広報
〈中央林間から渋谷まで東急田園都市線に乗りました。この路線の車両には、複数のディスプレイが設置されており、ずっと同じ映像がループで流され続けていますが、東急は乗客の気持ちを考えて映像を選んでいるとは思えません。
私が乗車した日は、「新成人が吊り橋でバンジージャンプ 恐怖に打ち勝ち大人への決意新たに。」という文字とともに、怖いもの知らずの若者たちが橋の上から飛び降りるニュース映像がずっと流され続けていました。成人式関連のニュースを流すのは構いません。しかし、バラエティでもない一般人のバンジージャンプの映像を電車の中という閉鎖空間で数分毎に繰り返し見せられる身にもなってほしいです。
何度も何度も同じ映像が流されていたので、さすがに若者たちもたまりかね、「楽しい成人式を迎える人ばかりではないし、このニュースを見て、恐怖に打ち勝ち高いところから飛び降りちゃったり、電車に飛び込んだりしちゃったら、どうするんだよ」と車内で話し始めました。
すると、その会話をそばで聞いていた親子連れも、その映像が流れるたびに騒ぎ始めました。
「ねぇ、お母さんバンジージャンプって何? またバンジージャンプが出た!」と子ども。それに対して、「足の紐がもし取れたら、死んじゃうんだからね。あなたたちは絶対にマネしてはいけないよ。本当に危ないんだからね!」と母親が子どもたちに繰り返して言い聞かせていました。
私は高所恐怖症なので、バンジージャンプの映像が流れるたびに「いいかげんにしろ!」と言いたかったです。車内を不穏にする映像は流してほしくありません〉(読者のメールより)
同じ映像ばかり流すのはアリ?
東急田園都市線で流されていたバンジージャンプの映像について調べたところ、茨城県の常陸太田市にある竜神大吊橋というバンジージャンプの聖地で行われた、新成人の男子9名のためのレアなイベントのニュース映像だった。どうやら、NHKのニュースをそのまま流していたようだ。しかし、新成人の映像を流すにしても、もう少し万人ウケする映像を流せばいいのに......。
首都圏の鉄道では、電車内にディスプレイが設置された車両が増えている。満員電車の中では、その映像を見て暇つぶしやストレス軽減になることも多いが、電車には老若男女、さまざまな状況、さまざまな思いの人たちが乗っている。同じ映像を繰り返し見せられることでストレスを感じたり、不安や不快に思う人も一定数存在するということを東急は何と考えているのか。実は編集部には以前にも、東急東横線車内で流されていた〝とあるCM〟が性的妄想をさせるので、痴漢を刺激したら大変だからやめさせた方がいいのではという情報提供があった。東急電鉄の車内では、映像関連で乗客の不興を買う問題が定期的に起こっている印象すら抱いてしまう。
東急社長室広報グループの奥野氏に聞いたところ、テレビの設置は乗客の利便性向上が狙いで、ニュースや天気予報のほか、広告放映を実施しているとのこと。読者の話では数分に1回、同じニュース映像が流れていたというが、そんなことがあるのか。
「確認したところ、このニュースは約10秒のもので、5分間隔で放映されていました」(奥野氏)
奥野氏によると、読者が乗車した時には、ニュース1分、広告3分30秒、天気予報30秒をロール(繰り返し)放映していたという。放映時間の長さは、広告枠の申し込み状況により変動しているとのことだった。
コロナ禍で広告の出稿量が減少し、流す映像が他にないにしても、同じ映像を5分周期で見せられたら、乗客がウンザリするのは当然だ。流す映像がないのなら、静止画像や東急グループの広告でも流した方がまだマシではないか。
NHK任せでいいのか?
「東急の電車内テレビの放送は、関東地区の鉄道事業者11社局とそのハウスエージェンシーで構成する関東交通広告協議会が定めた審査基準に従い、不適切な内容を掲出することがないよう努めています」と奥野氏。
また、放送される映像については、「メディア・広告は東急エージェンシーで選定をしていますが、ニュースは当社がNHKと契約し、データを提供していただいています。事前に当社の掲出規則を共有し、規則に則った放映を依頼する一方、放映内容はNHKの判断で、報道の自由の観点から当社では操作していません」という。つまり、ニュースは完全にNHKに〝マル投げ〟なのである。
「このたびはお客様に不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。ご指摘をいただきましたご意見につきましては、ニュース放映元のNHKに申し伝えるとともに、当社の今後の掲出内容の判断基準の参考とさせていただきます」と奥野氏は詫びたが、これはNHKの問題ではない。
車内ディスプレイの映像は、乗客が選ぶことも消すこともできない。東急電鉄は、広告主ばかり大切にして、見る側=乗客に対する配慮が欠けているのではないか。
......続きはZAITEN2022年3月号で。