ZAITEN2022年3月号
建築の専門家が指摘する不動産各社の問題ホームページ
新築マンション業界の実態
カテゴリ:クレーム・広報
私は東京23区と神奈川県川崎市で販売されている新築マンションの建設現場をすべて調査して、エリア別の資産価値レポートというものを有料でダウンロード販売している。レポートの内容については、定期的に各物件のオフィシャルページ(OP)をチェックして最新情報に更新する。そのため、販売中の物件ページはほぼ3カ月に一度の割合で見て回っている。
OPでチェックするのは主に「物件概要」である。宅地建物取引業法や不動産の公正競争規約に基づき、必ず一般消費者に知らせなければいけない項目をまとめて表示するのが物件概要である。
例えば、販売価格は売り出し中の住戸の最低と最高を表示する。住戸面積やバルコニー面積、建物の完成予定や引渡時期も明記する必要がある。所在地の住所はもちろん、どの駅から徒歩何分なのかも表示するように定められている。新築マンションのOPというものは、売主側がアピールしたいことがビジュアルや動画になってトップに上がるが、往々にしてそこに重要な情報は含まれない。むしろ、マンションの真の姿を誤解してしまうようなイリュージョンに満ちていると考えた方がいい。
新築マンションを選ぶ際に最も重要な情報とは、立地とスペックである。立地はほとんどの場合、「現地案内図」と表示されているボタンをクリックすると見ることができる。そして物件概要は、OPのどこかに小さく「物件概要」と表示された箇所があるはずだ。
私がレポートに掲載している物件の情報を更新する際には、真っ先にこの物件概要をチェックする。内容を更新するだけなら、物件概要以外はほとんど見ない。見る必要がないのだ。しかし、この物件概要は売主側があまり伝えたくない情報を表示しなければならないケースが多い。そのせいか、大抵が分かり難いところに隠すように配置されている。
例えば、普通のノートパソコンの画面だと表示しきれない端っこだったりする。スクロールしても表示できず、画面を75%に縮小したらやっと出てきた、ということもあった。また、トップページには表示せず、込み入った場所にボタンを置いているケースもある。何とも不親切なことである。
こういうことは中小のみならず大手でも散見される。昨年末、某東証2部上場企業の物件のOPを覗くと、物件概要そのものが表示されていなかった。概要のボタンを押しても別のところが表示された。今年に入って改善されたようだが、これは宅地建物取引業法で定められた売主や不動産仲介業者を対象とする物件情報の表示規約に違反している。
わざとではないにしろ、大きなミスである。小さな不動産会社などではありがちなことだが、上場企業がこれでは笑えない。この企業は、売れていないマンションを「完売」と表示した後、何カ月も経って建物が出来てから再度売り出すなど不誠実なことも多いので、どうにも弁護のしようがない。
長年新築マンション業界と関わっているが、彼らは総じて不都合な情報はなるべく隠そうとし、消費者の苦情には不誠実な対応をとる傾向がある。立地が極端に悪い物件などは、現地がどこか分からないようにしているあからさまなOPもあった。
一般消費者向けに最も高価な商品を販売しているにもかかわらず、消費者軽視が甚だしいのがマンション業界の実態である。