ZAITEN2022年3月号
若者ウケを狙ったひろゆきと山田純学長
「ひろゆき」を広告に起用した学長の品格
カテゴリ:クレーム・広報
山田純学長(写真は公式HP)
〈先日、芝浦工業大学(芝工大)の広告を日経新聞で見た者です。この広告に出ているひろゆき(西村博之)氏は、国内の損害賠償裁判の出廷を拒否し、その賠償金は30億円にも上ると公言しています。そのような人物が大学の広告塔になるのは問題だと考えます〉(読者のメールより)
この広告は、日経新聞の昨年12月8日朝刊に掲載されていていた。芝工大は、文部科学省のスーパーグローバル大学にも採択されている私立工業大学で、実学教育を重んじ、産学共同研究も盛んだ。その学長を務める山田純氏とひろゆきとの対談動画の「宣伝広告」だった。
動画を視聴したところ、対談はエンジニアを目指す若者のキャリアプランに関するひろゆきのアドバイスがメイン。また、「工学系女子はモテる」など、軽い話題も盛り込まれており、人気ユーチューバーにあやかり若者ウケを狙った内容だ。しかし、いくらひろゆきが若者に人気だといっても、海外在住をいいことに訴訟にも応じず、確信犯的に30億円もの損害賠償金を踏み倒した人物が、大学の広告に適任とは思えない。
そこで編集部では、ひろゆきを起用した理由について、山田純学長に取材を申し込んだ。
ところが、「学長のコメントは控えさせていただきます」と、連絡をよこしたのは、経営企画部長で監査室長の猪田氏だった。学び舎の長が自ら出演した対談について一言も語ることができないとは信じられない。動画で山田学長は楽しそうにひろゆきと対談していたではないか。
「今回のひろゆき氏との対談をはじめ、学長対談シリーズ『SIT DIALOGUE』は、経営企画部が企画立案し、実施しています」と猪田氏は説明。
また、ひろゆき起用の理由については、「ひろゆき氏は、民放キー局でのコメンテーターとしての出演や著作などを通じて広く知られています。加えて、昨年10月の『デジタルの日』制定において、デジタルを活用した発信に知見があるとして、政府が西村氏に助言を求めています。こうした状況を踏まえ、『理系学生が持つべきグローバル視点とデジタルスキル』がテーマの今回の対談に出演していただくことには、一定の理解を得られるものと総合的に判断しました」と、流行りに乗って起用したことを明かしたが、反対意見はなかったのか。
「各種ご意見があることは承知しています。その上でひろゆき氏の知見に耳を傾けることは、弊学が目指す『多様性の推進』の一助になると考えています」(猪田氏)
多様性といっても、法の目をかいくぐり巨額の賠償金を踏み倒すような人物を大学が学生の範としていいのか。この動画を見て大学に集まってくる学生のレベルも心配だ。
1人でも多くの学生に来てもらい、少子化時代を乗り越えたいというのが芝工大のホンネだろうが、こんなことをしていては大学の品格を保つことはできない。
......続きはZAITEN2022年03月号で。