ZAITEN2022年04月号
そもそも経営トップの責任逃れではないか
【特集】巧妙化する「新型リストラ」の手口
カテゴリ:企業・経済
新型コロナウイルスの流行から2年。いまだ出口が見えない中、従業員の早期・希望退職を募る上場企業が相次いでいる。ところが、経営悪化によって断腸の思いで人件費を削ったのかと思いきや、実は、よく見ると半数近くが黒字。果ては増益、配当金や役員報酬を引き上げた企業まで......。希望退職にかこつけて社員を追い出す経営姿勢の是非を問う。
増える〝黒字リストラ〟
東京商工リサーチ(TSR)が1月20日に公表した調査結果によると、2021年に早期・希望退職を募集した上場企業は開示されただけでも84社に上る。前年(93社)からはやや減少を見せたものの、コロナ前の19年(35社)と比較すると2・4倍。2年連続で80社を超えるのは11年ぶりで、リーマンショック後の09年(191社)に次ぐ水準となった。募集人数は公表した69社の合計で1万5892人。2年連続1・5万人超は実に18年ぶりだという。
実施企業の業種別トップ5を見ると、アパレル・繊維製品が11社で最多。電気機器が10社で続き、サービスが7社(うち4社が観光)、運送が6社、食料品製造が6社となっている。このほか、外食(4社)など、依然としてコロナ禍の影響が色濃く出ていると言えるだろう。 だが、注目すべきは〝黒字リストラ〟の多さだ。募集をかけた全84社のうち37社(44%)は直近決算において黒字なのである。また、1000人超の大規模実施をした5社を見ると、観光のKNT‐CTホールディングス(HD)を除く、日本たばこ産業(JT)、本田技研工業(ホンダ)、LIXIL、パナソニックの4社は最終損益で黒字を計上。JT、パナソニック、ホンダ、LIXILは前期比増益なのである。
TSRは〈「赤字企業による小・中規模募集」と「黒字企業による大型・先行型の募集」の二極化がコロナ禍で加速した格好〉と分析しているが、まさにその通りだろう。TSRの調査と日本経済新聞の分析によると、コロナ前の19年に早期・希望退職を募集した上場企業35社のうち、直近の通期最終損益が黒字だったのは20社。コロナの感染拡大の只中にあって〝黒字リストラ〟の絶対数は2倍弱に膨れあがったのである。
総務省の労働力調査によると、21年平均の完全失業率は前年から横ばいの2・8%で、完全失業者数は193万人で前年から2万人増加。年平均の有効求人倍率は1・13倍で、前年から0・05ポイント低下している。長年尽くした企業を離れて新天地を目指すには、とても視界良好な労働環境にあるとは言い難い。
そもそも、労働者にとって希望・早期退職はどのようなメリットがあるのか。共通するのは、定年退職や自主都合退職にはない何らかの優遇措置を条件に退社できるという流れだ。具体的には退職金の割増ということになる。さらに転職活動のサポートを組み込んだ制度も多い。また、稀に再雇用やグループ会社への転籍を斡旋するケースもある。
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