2022年5月号
月刊ゴルフ場批評55
加茂ゴルフ倶楽部(千葉県) 批評
カテゴリ:月刊ゴルフ場批評
以前から気になっていたコースがある。千葉県市原市といっても、養老渓谷に近い山間部に広がる「加茂ゴルフ倶楽部」だ。
レビューの評価は高く、メンバーの満足度も上々とのこと。しかしまぁ、周辺に民家はほとんどなく、廃校になった小学校の校舎が目を引く寂しい場所だな。県道からコースまでは車両がすれ違うのがやっとという、狭いトンネルを3つも抜けなければいけない。とてもゴルフ場へのアクセスに適しているとは思えない急峻な地形だ。
それでも設計は、国内100コース以上を手掛けたという井上誠一の愛弟子の1人、富澤誠造。クラブハウスを設計した杉坂智男も、大洗GCやザ・ノースCCといった名コースのハウスを手掛けている。期待に胸を弾ませて、大きくうねるような山道を進む。
到着―。ハウスは木造平屋建てで、大きな丸太を縦横に張り巡らせた天井が、否が応でも目に飛び込んでくる。意図的に天井を低く見せているようだが、かえって落ち着きを感じさせる。一見地味な印象だが、木のぬくもりに覆われている和テイストのハウスは、何とも安らぐ空間だ。
ハウス周りも手入れが行き届き、松の低木や石灯籠が配置された日本庭園風。レストランの窓は、庭園を存分に楽しめるよう三方に向かって開かれている。
この日はインスタート。予想に反してフラットな上、フェアウエーはゆったりとしてノンプレッシャーだ。ところが......。 組し易しと思ったのもつかの間、何と強烈な3段グリーン! ここまでの純和風テイストが完全に覆されるアメリカンなワングリーンだ。1988年に米国人のシェイパーを招聘し、ワングリーン改造に着手した。
続く11番は600㍎近くあり、13番は池に囲まれたアイランドグリーンなど、なかなかシビアなレイアウトが続く。全ホール2段グリーンといってもいいほど、傾斜がきつく、神経を使う上、フェアウエーの両サイドは崖や密集した林だから、曲げたら即アウトというホールが多い。ちょっとギャップがあり過ぎないか?
アウトに入ると趣はガラリ。ややアップダウンが目立つがサイドが法面で、ボールを曲げても傾斜で戻ってくるホールが多く、ティショットは気楽に打てる。グリーンの傾斜はこちらもキツイが、日本庭園風の穏やかなレイアウトが続く「癒やし系」だ。
フェアウエー等のコンディションは良好で、ディボットも少なく、セルフメインのコースとしては上々。レストランもメニューが豊富で、味もちゃんとしている。
〝隠れ家的名コース〟と言えそうなのだが、乗用カートが並ぶマスター室前が窮屈。狭いスペースでカートが行き来するから、人身事故が起こりかねない。
乗用車が行き来する進入路も、ハウスと練習グリーンの間を横切る場所があって、ここもかなり危ない。ゴルフ場への行き帰りで神経を使うから、プレーだけは大らかに楽しみたい。 この辺をもう少し考えてもらえると、もっと人気が出るんだけどなぁ。
●所在地 千葉県市原市月出81 ●TEL. 0436-96-1111 ●開場 1978(昭和53)年9月3日 ●設計者 富澤誠造 ●ヤーデージ 18ホール、6749ヤード(ブラックティ使用時)、パー72