ZAITEN2022年05月号
LINEと統合も〝成長軌道〟を描けない
【ヤフー特集】ZHD川辺社長の「いまだ孫正義頼み」
カテゴリ:企業・経済
川辺健太郎と出沢剛の共同CEO
「2018年に提供が始まったPayPayに依存し過ぎていて、消費者に幅広く支持されるサービスが出てこない」「大企業病が深刻で、会社に勢いがなくなった」 今年2月、Zホールディングス(HD)幹部の間でこんな自社分析のメールが飛び交った。「現状を冷静に見つめるほど、厳しい言葉ばかり浮かんでくる」と嘆く声もあった。
分からなくもない。「2020年代前半に、EC(インターネット商取引)の物販取扱高で国内首位に立つ」―。これはヤフーやZOZOの親会社であるZHDが、LINEとの経営統合をぶち上げた際に示した目標だった。
そして21年3月に統合が完了してから、もう1年が経った。21年分のEC取扱高は楽天グループが5兆118億円と初めて5兆円を超えたのに対し、ZHDは3兆4551億円止まり。新型コロナウイルス禍で巣ごもり需要が増えたため、ECの利用実績は急速に伸びたものの、依然としてライバルには遠く及ばないままだ。
統合効果は「半分程度」
それでもトップは至って楽観視している。ZHDとヤフーの社長を兼務してきた川辺健太郎は、3月に入ると、周囲に「21年後半以降は楽天やアマゾンよりECの伸び率が上回っており、目標の達成が視野に入ってきた」と語る姿が目立ってきた。川辺のヤフー社長退任に伴い、4月に後任に就くCOO(最高執行責任者)の小沢隆生にとって、川辺の言葉は「無責任で能天気な檄」(ヤフー役員)に映っているかもしれない。
LINEとの統合を機に、ZHDは新しいECを模索してきた。特にユーザーの人間関係に注目した「ソーシャルコマース」は、川辺の言葉を借りれば「ZHDの総力を結集した」プロジェクトになった。中核になったのは、ヤフーやZOZOで展開する商品からプレゼントを選び、LINEでギフト券などを贈り合う「LINEギフト」だ。
さらに「クイックコマース」では、弁当や生鮮食品、日用品を注文から30分以内に届ける仕組みをつくった。サービスの運営はヤフー、仕入れはアスクル、注文アプリと配達はLINE傘下の出前館がそれぞれ担当しており、こちらも「オールZHD」の強みを生かした格好だ。
......続きはZAITEN5月号で。