2022年06月号
黒田〝死に体〟の中で新旧副総裁が後継レース
死に体「黒田日銀」に襲い掛かる〝日本売り〟の大波
カテゴリ:企業・経済
黒田東彦・日銀総裁
「悪い円安と言えるのではないか」―。円相場が2002年5月以来、約20年ぶりの円安水準となる1㌦=126円台まで下落した4月15日の閣議後の記者会見。財務相の鈴木俊一はこう明言した。財務相が為替水準の良し悪しに言及するのは極めて異例だ。しかも、放言癖で知られる前任の麻生太郎とは違い、鈴木は本来「慎重居士」で知られる政治家。それだけに、世界的なインフレ圧力の波が日本にも押し寄せる中、原材料高騰など「悪い物価上昇」を助長する円安進行への政府の危機感の強さが窺われた。
鈴木発言に最も衝撃を受けたのは日銀だろう。総裁の黒田東彦(77歳、1967年旧大蔵省、元財務官)の任期が残り1年を切る中、9年以上も続けた異次元緩和策の成果が一向に上がらないばかりか、「悪い円安」と「悪い物価上昇」の連鎖に対応できない無能ぶりを曝け出しているからだ。それでも「霞が関有数の秀才」を自認してきた黒田は「自らの異次元緩和策の失敗を認められないでいる」(財務省筋)。3月以降に円相場が急落した局面でも「円安は日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」と言い張ってきた。
「ピーターパンは飛べるかどうか疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」などと宣うほど異次元緩和の妄想にのめり込んだ黒田。そんな総裁を戴く日銀が緩和継続にこだわればこだわるほど、円安が助長され、日本経済は景気悪化と物価高に挟み撃ちされる「スタグフレーション」に追い込まれるリスクが高まる構図だ。
いや、災厄はそんな程度では済まない。「頑迷固陋な総裁が交代する来春まで金融政策を修正できない」と日銀のレームダック化を見透かした国際投機筋は円の先物売りポジションを膨らませ、いずれは国債市場にその手を広げて、「大規模な日本売りを仕掛けようと虎視眈々と狙っている」(米投資会社)。昨秋には「法王」と呼ばれた第18代総裁の一万田尚登(46~54年在任)を抜き、歴代最長総裁となった黒田だが、元首相の安倍晋三やリフレ派学者に乗せられて金融政策をオモチャにし、「通貨の番人」の責任を放棄した罪はかくも重い。
......続きはZAITEN6月号で。