ZAITEN2022年07月号
元朝日新聞政治部スター記者「木村元社長、対談しましょう!」
元エース記者が告発本『朝日新聞政治部』で木村元社長に宣戦布告!
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ジャーナリスト・「SAMEJIMA TIMES」主宰
鮫島 浩
さめじま・ひろし―1994年、朝日新聞社入社。在職中は主に政治記者として活躍。2010年に政治部デスク、12年に特別報道部デスク。「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞するも、14年に福島原発事故を巡る「吉田調書」報道で解任される。昨年5月末に退社。現在はオリジナルメディア「SAMEJIMA TIMES」を中心に旺盛に情報を発信している。
―『朝日新聞政治部』は、入社からの出世街道、「吉田調書報道」での転落、上司や幹部の「裏切り」を生々しく描いたノンフィクションです。「元朝日記者による暴露本」との評については?
暴露しているのは事実ですから、全く嫌じゃないですよ。政府や企業の内部告発をもとに報道するのは新聞記者の重要な役割です。新聞社の歪んだ部分を自ら告発して健全なジャーナリズムを取り戻すのも新聞記者の当然の責務でしょう。ダメなんですか?
―意外です。てっきり「暴露目的ではなく社会正義として......」みたいな話をされるかと。
ジャーナリストの仕事は人気取りではないから、自分の好感度を上げたいなんて思いません。ただし、「朝日への仕返し」とか「個人的な怨念」というのは違います。自分の実体験を包み隠さずにさらけ出し、なぜ新聞は凋落したのかを総括してジャーナリストとして前へ進むためにこの本を書きました。特に「吉田調書報道取り消し事件」には会社が公表していない話がある。書けるのは、当時の担当デスクだった私ぐらいしかいない。義務感もありましたが、正直、そこを書くのはしんどかったです。
―経営陣、局長、部長が実名で登場。現役社員から「オレたちだって頑張っている」といった反感も予想されます。
多くの新聞記者が国家の不正を暴くことや世の中の理不尽をただすことよりも、自分自身の会社内における出世や保身という、実にせせこましい目的にために昼夜問わず働いている実態を具体的なエピソードを通じて読者のみなさまにお伝えしたいと思いました。私の肌感覚では信頼に足る記者は全体の2割程度です。
―吉田調書報道については朝日上層部の危機対応の失敗、とりわけ当時の木村伊量社長体制の問題を追及しています。2014年9月11日、木村会見の日に「朝日新聞は死んだ」と。
木村さんは高校の先輩で、会社ではお世話になったし、本当に魅力的な人です。木村さんをはじめ朝日新聞には能力の高い人が多いと思います。しかし、その能力を社内権力闘争に費やしているんですよ。ジャーナリズムに全力を注いだら社会はもっと良くなるのに。新聞記者の多くは内向きで狭い世界に生きています。ジャーナリズムをおろそかにした結果、どんどん新聞離れが進んで、経営も傾いていった。その行き着いた先が吉田調書の事件だった。私はそういう認識です。
......続きはZAITEN7月号で。