ZAITEN2022年07月号
〝姉弟バトル〟第2ラウンドでは収まらない
はるやま「総会」に中国銀とAOKIの影
カテゴリ:企業・経済
紳士服大手のはるやまホールディングス(HD)に対し、現経営陣の退陣を求めた株主提案が出されたことが本誌の取材で分かった。創業家出身のトップに退場宣告したのは大株主でもある実姉で、深刻な業績低迷や企業統治の欠如を批判している。一見、創業家の「お家騒動」の構図にも映るが、事はそう単純ではない。経営の屋台骨がぐらつく中、金融機関などの思惑も渦巻いている。
「継続企業の前提」に疑義
〈現在創業以来、最大の危機です。治山正史氏に経営させていては立ち直れません〉―。本誌が入手した株主提案通知書で、創業家出身ではるやま会長の治山正史は名指しでそう批判されている。
株主提案を出したのは、治山の実姉だ。姉は、治山らを取締役候補とする会社側の選任案に真っ向から反対し、はるやま商事(現はるやまHD)元専務の野村耕市や元執行役員の村角彰則ら4人を取締役に、元常勤監査役の村上繁雄を監査役に選任するよう求めている。6月下旬の株主総会に向け委任状争奪戦が繰り広げられる。
本誌2021年7月号で報じたように、姉が弟、治山の取締役退任を求めるのは昨年に続いて2度目となる。前回、実姉が立ち上がるきっかけとなったのは、治山が重用した義理の弟を巡る不正疑惑だ。治山は妻の弟の山本剛士を執行役員に引き上げ、グループの実質的なナンバー2の地位を与えた。治山は山本に全面的な信頼を寄せる一方、創業者である父、正次ら親族や古参幹部の意見に耳を貸さなくなり、「パワハラ紛いの言動も目立ってきた」(はるやま関係者)とされる。
その山本を巡って19年に深刻な事態が噴出した。特定の取引先業者と山本の〝癒着〟を訴える匿名の告発状が会社に届いたのだ。だが、こ
の疑惑に対して治山の動きは鈍く、会社を挙げた正式な調査や処分は見送られた。結局、山本が自主退職し、ひっそりと幕引きが図られた。治山に調査を強く進言した幹部は左遷の憂き目に遭ったという。
義弟を庇うような治山の姿勢に社内では不満も燻った。さらに、退職した山本が代表を務めるコンサルティング会社にはるやまが1500万円の報酬を支払っていた事実も、のちに判明した。姉が創業家を代表して事態の収拾に乗り出さざるを得なかったのは、企業統治の欠如があまりにも目に余ったためだ。
姉の退陣要求に対し、当時社長だった治山は昨年6月の株主総会の直前に、会長に退き代表権のない取締役に降格する人事案を公表した。姉の提案に歩み寄ったようにも見えるが、「取締役に残って実権を握り続けるという魂胆」(同関係者)だった。総会で、治山は58%の賛成票を獲得し、取締役に辛うじて選任された―。
......続きはZAITEN7月号で。